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※うんうんかどうかは知らない ※4301(or4302)の修正版 ここは加工所の一角。愛玩用のゆっくりを飼育するための施設。 そこには八畳一間の部屋がいくつも並んでおり、各部屋では数匹のゆっくりが生活を営んでいた。 もっとも、ココでの生活は部屋の中で完結しており、無機質な床と壁と天井と、半ば無理矢理作らされた子どもと、 見回りの職員と、彼が持ってくる美味しくない餌と、定められた幾つかの規則が世界の全てだった。 無数にある部屋のある一室でそのゆっくりれいむは5匹の赤れいむと一緒につらい日々を過ごしている。 彼女はこのような施設では極めて珍しい元飼いゆっくりで、いたずらが過ぎたために飼い主にココに預けられたのだ。 だから広い世界の楽しさを、美味しいお菓子の甘さを、暖かいお布団の気持ちよさを知っているのだ。 しかし、彼女の今の暮らしを「つらい」と形容したのにはもっと別の理由があった。 理由というのがこの一角全体に定められた規則であり、その問題の規則というのは以下の6つ。 この区画ではうんうん禁止 この規則を破ったものは即座に殺処分 疑わしきも職員の独断で殺処分 違反者が不明の場合全員殺処分 うんうんの証拠がなかった場合は不問とすることもある 餌を次の見回りまでに食べきらないと適当に1匹を殺処分 彼女はこれによって既に2匹の子どもを奪われている。 ココには監視カメラもなく、殺処分された理由は床に黒いものが落ちていたから。 れいむは「あかちゃんがあんこをはいちゃったんだよ!」と主張したらしいが、人間に餡子とうんうんの区別がつかない以上何の意味もない。 必死に抗議するも、結局全員が殺されることを恐れてか1匹の赤れいむがうんうんをしたと認めたらしい。 僕がれいむ一家に餌を持って行ったとき、幸いにも床は全く汚れていなかった。 どうやらうんうんはしていない。それだけ確認すると加工所特製のぱさぱさしていて美味しくないが栄養価は高い餌を大量にばら撒く。 成体1匹と子ども5匹の適量のゆうに2倍を超える餌が無機質で冷たい床に落ち、砕ける。 それを見たれいむ達はせっかくの餌を目の前にしていながら浮かない顔をしていた。 「ゆえーん!れーみゅ、おいちいごはんがたべちゃいよー!」 「ゆっぐ・・・ゆえぇ・・・ぱしゃぱしゃは、もう・・・いやだよぉ・・・」 「ゆぅ・・・ぱしゃぱしゃじゃゆっくちできにゃいよ・・・!」 「ゆゆっ!あかちゃんたち、ゆっくりがまんしてね!」 毎日毎日、自身の体積以上の量の摂取を強要されている赤れいむ達は口々に不満をこぼし、母れいむは彼女達に自制を促す。 もっとも彼女がそんなことをしなくても子ども達はちゃんと餌を食べるし、人間に歯向かうような真似をすることもありえない。 ただ生まれて初めて食べた母れいむの頭の蔦よりもずっと無味乾燥な味の、酷く喉を渇かせるその餌に文句を言いたいだけなのだ。 一度、食べ切れなかったせいで家族を殺されているので抵抗することも出来ず、愚痴の一つもこぼさないとやってられない心境なのだろう。 しばらく様子を観察していると愚痴を止めてしぶしぶと言った様子で餌を食べ始める。 「・・・次の見回りまでに食べろよ」 「むーしゃむーしゃ・・・」 「むーちゃむーちゃ・・・ちあわちぇ~、ちたいよぉ・・・」 「ゆっぐ・・・む゛ーぢゃむーぢゃ・・・おいぢぐにゃいよぉ・・・」 床に散らばったものを口内に放り込む作業を繰り返すれいむとその子ども達に背を向けて、部屋を後にした。 2時間が経過し、次の見回りのになるとすぐにれいむ一家の元へと赴いた。 さっきの餌と同じだけの量の餌をバケツの中に入れたことを確認し、部屋の中に入っていく。 ドアを開けた僕の視界に飛び込んできたのは泣きながら床を丹念に舐めているれいむの姿だった。 「ぺ~ろぺ~ろ・・・」 「おきゃーしゃん・・・きちゃにゃいよぉ・・・」 「やめちぇね!しょんにゃおかーしゃんとはゆっくちできないよ!?」 「ゆえーん・・・おきゃーしゃんゆっくちちてよー」 その傍らには泣きじゃくる5匹の子ども達。 汚い、ゆっくりできない・・・この2つの言葉から推察するとうんうんをしたのかもしれない。 ここは規則に則って殺処分にしても良いのだが、僕はこの施設の中では甘いほうである。 だから、彼女に声をかけてみることにした。 「やあ、れいむ。ゆっくりしていってね!」 「ゆゆっ!?おにーさん、ゆっくりしていってね!」 「「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」」 適当に挨拶を済ませると、色々話しかけてくるれいむ達を無視して床をじっくり観察する。 食べ残しも排泄物も見当たらない。勿論、れいむ達を移動させて確認してみたが、やっぱり見当たらない。 どうやら今回も無事に食べ切ることが出来、うんうんをすることもなかったらしい。 「ちゃんと食べきったんだね、おめでとう!」 「ゆっくりがんばったんだよ、ゆっへん!」 「「「「「ゆっちぇん!」」」」」 のん気なもので、散々酷い目に遭わせている僕に向かって笑みを浮かべて誇らしげに胸を張っている。 そんな微笑ましい光景を安らかな気持ちで見守りながら、僕は真面目に業務をこなした。 「そんな君たちにご褒美だ。はい、餌」 「ゆうううううううううううううううう!!?」 「「「「「ゆぴぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」」」」」 再びばら撒かれた餌を見て、思い思いの悲鳴を上げるれいむ一家に背を向ける。 「みょーおこっちゃよ!ぷきゅうううううう!」とか「ゆっくちしゃせてくれにゃいおにーしゃはきりゃいだよ!ぴゅんぴゅん!」などという声が聞こえてくる。 が、饅獣の与太話に構っていても時間の浪費にしかならないので、気に留めることなく部屋を後にした。 この部屋ではペットとして飼育しやすい個体を作り上げるための実験が日々行われている。 無味乾燥な、とても美味しいとはいえない餌を与えるのは“味にこだわりを持たない”ゆっくりを作るため。 ぱさぱさしていて水分が欲しくなる餌を与えつつ極力水分を与えないのは“水分摂取量の少ない”ゆっくりを作るため。 それと同時に“生存のためだけに全ての水分を消費し、しーしーをしない”ゆっくりを作る意図もあるそうだ。 そして、ココの肝となるのがあにゃるを退化させて“食事をうんうんとして排出しない”ゆっくりを作ること。 人間に懐かなくなるのではないかと言う疑問を持つかもしれないが、不思議なことに寧ろ逆である。 ココで人間の恐ろしさを植え付けられたゆっくりは人間に対して従順になり、飼い主の言うことをちゃんと聞くゆっくりが出来上がる。 勿論、散々酷い目に遭わされても人間に歯向かうものもいるがそういう奴は間引いてしまえばいいだけの話だ。 これらの要素全てを1匹の個体に付加させることで“下の世話が一切要らない上に食事も適当で良い”という理想的なペットが完成するらしい。 要不要だけで極めて短期間にラマルクの進化論的な変化を示すことに若干の恐怖を覚えるが、そこを今追及する必要は無い。 とにかく、この施設ではうんうんに対する恐怖感を植えつけることで「ゆっくりするためにうんうんを排除」させる試みがなされている。 ちなみに・・・食事の量に関しても「いっぱい食べるとゆっくり出来ない」という意識を植え付けているので徐々に小食な個体が生まれやすくなる。 更に、小食のおかげで小型化が進み、最近生まれた個体は成体でも体高15cm止まりだったりする。 大食になる方向に進化すればゆっくりできるようになるかもしれないのに、ゆっくり出来ないものを忌避する方向に進化するというのは実に馬鹿げた話ではある。 もっとも、食事の量は最初に餌をやったときの食べ残しや手元にある様々なデータから割り出しているので大食になろうが少食になろうとあまり意味は無いのだが。 それに大食に限らず、好ましくない進化・変化をした個体はこっちの都合で勝手に処分される。 その結果、この施設では“ゆっくりするためにゆっくり出来ないものから目を背ける”方向に進んだ個体だけが生き残る。 それゆえ大食以外にもうんうんや吐瀉物を美味しいと感じる個体なんかも処分の対象となるので、この施設には殆どいない。 人間の手が加えられているとは言え、何でこんな自滅街道まっしぐらな進化をするのかは大いなる疑問。 しかし、それで何か不利益をこうむるものでもないのでありがたく利用させてもらっている。 さっきの食事から2時間が経過し、再び食事の時間になったので再び餌を抱えて部屋に向かう。 すると、今度はれいむだけでなく子ども達まで一緒になって床を舐めている光景が目に飛び込んできた。 パッと見た感じでは・・・・・・残念ながら、僅かに餡子が落ちている。 「床に何かが落ちているね」 そう言いながら、傍にいた赤れいむが舐め取ろうとするのを制止すると、指でそれをつまんでれいむ一家全員に見えるように掲げてやった。 僕の仕草につられて彼女達は素直に餡子を凝視する。その表情には明らかに恐怖が滲んでいた。 やがて、恐怖に耐えかねた赤れいむ5匹が泣き始めてしまう。 「ゆぴぇええええええええん!」 「きょわいよおおおおおお!?」 「みょーやだ!おうちかえりゅ!」 「しょろ゛ーりしょろ゛ーり・・・」 「ゆっきゅちちたいよー!」 ある赤れいむはその場から一歩も動くことなく泣きじゃくって足元に水溜りを作っていた。 またある赤れいむはぼろぼろと涙を流しながら、餌でぶくっと膨れた体を引きずり、転がり、必死に跳ね回る。 またある赤れいむは一目散に部屋の出入り口の扉に向かっていき、壁に激突すると床に臥せった格好で泣きじゃくった。 またある赤れいむは何の意味があるのか知らないが、擬音を発しながら這いずって隠れる場所すらない部屋の中をさまよう。 またある赤れいむは我慢しきれなくなったのか無に等しいといっても過言ではないような儚い力で僕に攻撃を仕掛けていた。 「さあ、れいむ・・・これは何かな?」 「ぢがうよ゛!ぞれはう゛んう゛んぢゃないんだよ!?」 「ふーん・・・で?」 しかし、僕は赤れいむ達を相手にせず、餡子を掲げて親であるれいむに詰め寄る。 じっ~とれいむの目を見つめ、一歩ずつ距離を詰めていく。 れいむはその動作に怯えて少しずつ後退してゆくが、狭い部屋ではすぐに壁にぶつかってしまう。 壁にぶつかったところで方向転換し、また僕から必死に逃げる。 「や゛べでね!ごっぢこない゛でね!」 「ねえ、この餡子は何なのかなぁ?」 「ぢがうよ!ぞれはあがぢゃんがはいぢゃっだだげだよ!?」 「そうかそうか。でもどの赤ちゃんか分からないなぁ・・・誰のうんうんだろ?」 全くれいむの言い分を聞かない僕の追求と物理的な接近から必死になって逃げ回るれいむ。 その瞳は涙で潤み、零れる雫が足跡の代わりとなってこの部屋の無愛想な床をぬらす。 落ち着きを取り戻した子ども達はその光景を見ながら「やめちぇね!おかーしゃんをいぢめにゃいでね!」などと泣き叫ぶ。 が、応じるつもりは微塵もない。 「さぁて・・・誰のうんうんか言わないなら皆潰しちゃうしかないよねぇ?」 「ゆぅ・・・ゆひぃ・・・ゆはぁ・・・や、やべで・・・やべでね゛・・・!」 「何をやめるて欲しいんだい?」 「でい、ぶの・・・あがぢゃ、いぢべないでぇ・・・」 必死に逃げ回って、もはや疲労困憊のれいむはそんな有様になってもなお可愛い我が子を気遣っている。 そして、彼女の優しさを目の当たりにした子ども達もまた感極まって涙をこぼしていた。 口々に「おきゃーしゃーん!」と自分たちを守ってくれるものの名を呼び、彼女の傍へ行って頬ずりをする。 「ゆっぐ・・・しゅ~りしゅ~り・・・」 「きゃーしゃん、だいしゅきだよ・・・しゅ~りしゅ~り・・・」 「ゆ、ゆっきゅりちてね!・・・ゆっきゅりちてね!しゅ~りしゅ~り・・・」 「あ、あがぢゃんだち・・・み゛んな、ゆっぐぢぢでいっでね!」 「「「「「ゆっきゅりちていっちぇね!」」」」」 なんとも涙ぐましい光景だ。しかし、この程度で情にほだされていては加工所職員は務まらない。 れいむ達の目の前に餡子を放り投げて再びさっきの質問を繰り返す。 「誰のうんうんだい? 答えないと全員潰すよ?」 1分後。その部屋の床には大量のぱさぱさした餌と放射線状に飛び散った餡子と皮が散乱していた。 そして、1匹の成体れいむと4匹の赤れいむは2時間後の餌の時間までにそれを食べつくさなければならない。 それが終ってもまた2時間後には食事の時間。最初の食事が朝の8時で最後の食事が夜の8時。 うんうんをしてしまうと家族の負担が増大するし、殺された個体がいるときも負担は大きくなる。 いくら満腹でもうんうんはおろか嘔吐さえも許されず、日長一日体積以上の餌を摂取し続ける毎日。 「おきゃーしゃん・・・れーみゅゆっきゅちできにゃいよ・・・」 「ゆっくりがまんしてね!・・・むーしゃむーしゃ・・・」 「れーみゅゆっきゅちちたいよー・・・」 子ども達がいくらゆっくりしたいと懇願してもれいむにはどうすることも出来ない。 出来ることといったら少しでもたくさん食べてあげて、子ども達が出してしまったものを隠してあげることくらい。 そうして何とか生き延びさせてあげて、最後の食事を食べ終えた後の消灯後の真っ暗な部屋で涙にぬれた頬をすり合わせることくらい。 「おきゃーしゃん、れーみゅぽんぽんいちゃいよぉ・・・」 「ゆゆっ!ゆ、ゆっくりがまんしてね!」 「ゆえーん、やめちぇね!うんうんはやめちぇね!?」 「うんうんきょわいよー!やめちぇね、こっちこにゃいでね!?」 暗くてよく見えないものの、腹痛を訴える赤れいむは顔面蒼白で息も絶え絶え。 下手に我慢しようものなら命に関わるかもしれない・・・人間の目にはそう映るほどの酷い顔色だった。 しかし、真っ暗な部屋の中では誰もそのことに気づかず、皆必死になって「がまんしてね」と繰り返す。 その言葉をかけられた赤れいむは我慢せざる得ない状況に陥る。 「ゆ、ゆっぎゅり゛・・・が、がばん゛・・・ぢゅ、ぢゅ・・・」 が、やがて我慢できないところまで来てしまった赤れいむはぷるぷると痙攣し始める。 全身から脂汗が噴き出し、目は白目を向いていて、意識も混濁し、半ばあちらの世界に引きずり込まれている。 そんな状態になってなおも我慢し続けること数分後。 「も゛・・・も゛っぢょ・・・ったょ・・・」 蚊の鳴くような断末魔を発し、赤れいむは息絶えた。 ぼたぼたと何かが溢れ出して床に滴る音と甘いにおいと、家族の悲痛な叫びが室内に充満した。 「ぺ~ろぺ~ろ・・・」 「「「ぺ~りょぺ~りょ・・・」」」 やがて、嘆くことをやめたれいむ達は誰からともなく床に散乱した何かを舐め始めた。 それがうんうんなのか吐瀉物なのか、それとも破裂でもしたのか・・・それは誰にも分からない。 ただ、一つだけ確かなことは“これを片付け終えるまでれいむ達はゆっくりできない”ということである。 一寸先もろくに見えない闇の中、においと味覚だけを頼りにゆっくりのとっては広すぎる床を朝まで丹念に舐め続けた。 結局、その日の夜はゆっくりすることが出来なかった。 このSSに感想を付ける
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『単純群れ虐殺5』 21KB 虐待 虐殺 群れ 子ゆ 自然界 現代 anko4257の続きです 完結編 *「anko4257 単純群れ虐殺4」の続きです。 *長くなったものを分割したつくりです。1(anko4244)から続けて読んでいただけると幸いです。 ~前回のあらすじ~ お山の群れに虐待お兄さんがやってきて、群れの皆、ドスまりさまでもがボコボコに。 おちびちゃんたちも餌食になる中、お兄さんはぱちゅりーにゲームを持ちかける。 「ぱちゅりーがおたべなさいと中身をゲロる以外の方法で自分を殺せば、君たちの勝ち。 死なないまま3分経過したら僕の勝ち。そういうゲームだよ。はいスタートー」 「む、むっきゅうぅうう!!?」 無慈悲に宣言し、一応腕時計で時間を確認する。 ぱちゅりーは一気に冷静さを失い、ふさふさな紫の髪の毛を振り回して、あたふたとしている。 「ちなみにルール違反したら、即おちびちゃんたちを潰すからね」 「「「ゆ、ゆんやあああああ!!にゃんでええええ!!」」」 「落ち着いてね。ルール違反したら、だ。ぱちぇおばさんがちゃんと死んでくれたら、あまあまあげるよ」 「「「ゆわわーいっ!!あみゃあみゃー!!」」」 反射オンリーで構成されている救いようのない餡子脳を数匹、手のひらに載せる。 人間さんの手は体温を持たないゆっくりからすると温かく、ゆっくりできるらしい。 あまあまがもらえると信じきり、「あっちゃかいすべすべさん」の上でこーろこーろゆっくりし始めた。 ありすやれいむも含め、保育ゆんは餡の繋がってない他ゆんの子にも実に献身的に愛を注いだというのに、子ゆっくり側からは都合のいい奴隷ぐらいにしか捉えられていないのだろうか。 「ほら、時間がないよ。この枝……ああさっきの結界か。これを使って自分をぷーすぷーすしてねっ」 「む、むきゅぅうぅぅ……!!」 ”けっかい”として先ほど入り口にぽつんと転がされていた裸の枝を手渡す。 「はやきゅちんでねっ!!」と子ゆっくりに応援されて、目を瞑り、恐る恐る枝を自分の肌に近づける。 体の弱いぱちゅりー種といえども成ゆんで小さな枝の一つも持てないはずはない。 髪の毛や枝がぷるぷると震えているのは、恐怖のためだ。 「むきゅぅ……むきゅぅ……ゆぅぅううう!!できないっ!!できないわぁあっ!!!」 「「「ゆゆーっ!!なにやっちぇりゅんだぁぁぁああ!!さっさとぷーしゅぷーしゅしてちねえええ!!」」」 「こわいのよっ!!とっってもこわいのぉっ!!こんなのぜったいみゅりいぃいいい!!」 枝が髪の毛を離れてころんと転がる。 ぱちゅりーが呪い殺さんばかりに恨みがましい目で人間さんを見る。 早くも自分たちが騙された、あるいは遊ばれているだけと気付いたのだ。 「仕方ないなぁ。僕がこうして枝を持っててあげるからね。目を瞑って真っ直ぐ跳ねてくれば死ねるよ」 「むきゅうぅう……!むきゅううう、ゆえぇぇぇええ……!!」 気付いたところでもう遅い。 状況は今や、いやむしろ初めから、圧倒的強者たる人間さんが完全に支配している。 そもそもおたべなさいをする覚悟を決めた時点でさっさと死んでおくべきだったのだ。 目の前で自ら命を絶つことで虐待人間さんに一矢報いてやろう。 そんなことを考えてしまった自分をぱちゅりーは今更ながら悔いた。 「「「ちーねっ!ちーねっ!!さっさとちーねええ!!」」」 今のぱちゅりーに出来ることは、人間さんの決めたルールに従い、死ぬことだ。 悪魔のような人間さんが約束を守る保証はないが、少なくとも自分がゲームを放棄すれば、おちびちゃんたちも自分もありすたち同様に苛め殺されるだろう。 だがしかし。 頭では分かっていても、あんよが震えてまともに動かない。 生半可に頭が良く、行動の結果を想像できてしまうために、とても普段どおり勢いよく跳ねるなんて出来ないのだ。 「ずーりずーり……ゆぇぇ、ずーりずーりぃぃ……ゆっぴぃぃぃいいい!!!」 「「「ゆわあぁぁぁあ!!ぱちぇおばしゃん、ゆっくちちんだねっ!!あみゃあみゃー!!」」」 「むっぎゅううう!!!むりでずぅぅう!!にんげんざん、ゆるじでぐだざいぃいいいい!!!」 「いやいや何を言ってるんだい、ぱちゅりーもおちびちゃんたちも。 まだほっぺが少し抉れただけだ。残り時間は少ないよっ!ハリーハリーハリー!」 「ぼういいでずっ!!どうぜごろずんでしょ!!?ぱぢぇもおちびぢゃんだちも、ひとおもいにごろじでぇぇええ!!!」 「「「どぼじでぞんなごというにょぉぉおお!!ぱちぇおばしゃんだけ ちねばいいでしょぉおお!!」」」 「仕方ないなぁ。よしルールを緩和してあげよう。それゆけ、おちびちゃんたちっ!」 子ゆっくりたちを地面に下ろし、各々に爪楊枝を咥えさせる。 これから何が始まるか理解したぱちゅりーは、恐怖でしーしーと下痢うんうんを漏らし、ずりずり逃げようとしている。 天井知らずのストレスだろうに中身を吐かないのは、ルール違反だけは絶対に避けるという、歪に残った意地のせいか。 「ぷーすぷーすして、ぱちゅりーを永遠にゆっくりさせてね。そしたらおちびちゃんたちの勝ちでいいよっ」 「「「ゆゆーっ!!ゆっくちりきゃいしちゃよぉおお!!」」」 「ゆ゛っぴぃぃいいいい!!!!こないぢぇえええええれえれえれ!!」 「みょんのめにもとまらにゅ かりぇいなぷーしゅぷーしゅっ!!をくりゃええ!!」 「むっきゅぅぃぃいいい!!おぢびぢゃんだぢぃぃい!!やめぢゃああぁぁあぱちぇのしゅべてをみとおす、すいしょうみちゃいなおめめしゃんがあぁぁぁああ!!」 「ゆぶぶっ!まりちゃのかいっしんのいちげき!!にゃのじぇっ!いちゃいのじぇえ?」 「きゃわいいれいみゅにっ!!あみゃあみゃよこさにゃいからっ!!こうなりゅんぢゃよっ!!」 「ちぇんたちは えらばれたゆっくちにゃんだよーっ!!こんにゃところで ちねにゃいんだねぇ!わきゃれよーっ!!」 ほとんど動けないまま四方を囲まれて、子ゆっくりの容赦ないぷーすぷーす!に蹂躙されるぱちゅりー。 が、多少中身を流失しているものの、所詮は子ゆっくりに爪楊枝で突かれる程度。 痛みと絶望で大げさに絶叫はしていても、なかなか永遠にゆっくりする気配はない。 「さて、3分なんてとっくに過ぎてるけどね。はい、時間切れでーす!どーんっ」 「むきゅっ!!?む゛ぎゃぁ゛っ゛!!!」 「「「ゆゆーっ!ぱちぇおばしゃん、こんどこそゆっくち ちんだねっ!!」」」 ぱちゅりーは望みどおり一思いに踏み潰され、生クリームがびちゃびちゃと周囲に飛び散った。 子ゆっくりたちはお世話になった保育ゆんの死を全く悼むことなく、「ゆっゆっおー!」と元気に鬨の声を上げている。 いつの間にそんなに憎くなったのか、残骸にちーちーやうんうんをかけては喜んでいる始末だ。 「れいみゅたちのしょうりぢゃよっ!!」 「みょんっ!けんじゅちゅのたちゅゆんのみょんがいりぇば、とうっじぇんだみょん!!」 「おい!くしょにんげんっ!!しゃっしゃとまりちゃたちに あみゃあみゃよこすのじぇええ!!」 「何言ってるの。時間切れでゲームオーバー。君たちの負けだよ」 「ゆぁ~ん?ふじゃけちぇりゅのじぇぇえ?さいっきょうのまりしゃしゃまたちに、はむかうきなのじぇ?」 「あみゃあみゃよこちぇ、じじぃ!!にょろまは きりゃいだよぉおれいみゅ!とりしゃんになっちゃよっ!!」 「調子乗った君たちにはこれから相応の地獄を見てもらうけど……まずはこのうっざいわさ種からかなぁ」 「ゆぴぃぃい!!わしゃわしゃはなちぇえええ!!いちゃいぃぃいいいい!!」 「とりあえずぶちぃっ」 「ゆっびゃあああぁぁああ!!!」 奇形汁饅頭から耳かきの綿毛のような揉み上げを両方引き千切る。 本体から離れて尚わさわさとうざったらしく膨らんでいる様を見ると、気持ち悪いものを触っているように思えてならない。 ひとまずれいみゅの傍に捨てる。 「れいみゅのわしゃわしゃしゃんっ……どぼぢでぇ……もうわしゃわしゃできにゃいぃいぃ……」 「どうしようかな。うーん……そうだ、れいみゅも泣いてるし、お目目に返してあげようか」 「ゆぐっ!!ゆぼぼぼぉお!!!」 わさわさの根元を刺すようにして、両方の眼窩に無理やり押し込んでみた。 眼球は潰れてしまっただろうが、痛みのためか異物侵入のためか、止め処なく涙が溢れてくる。 暴れてわさわさが外れないようにしばらく押さえてみると、期待したとおり、わさわさが目に定着した。 砂糖水の涙が傷口を塞ぐ媒介になったのだろうが、全くもってふざけた生物だ。 「なんにゃにょぉぉお!!?なにもみえにゃいぃい!!わしゃわしゃしゅるぅぅううう!いっぢゃあああ!!」 「おお……何か突然変異でこんなハエいたなぁ。なんて気持ち悪いものを作ってしまったんだ」 両目から生やしたわさわさをうねうねと動かして、その度に痛がりながら在らぬ方向にずりずりと彷徨っていく。 いずれ生き残りのゆっくりにお化けとしてリンチされるか、エサが取れずに衰弱死するだろう。 「次はまりちゃかなー」 「ゆっひぃぃいい!!こっちくるにゃああぁああ!!しぇ、しぇいっしゃい!されちゃいのかじぇえぇえ!?」 「幾ゆん目かの最強のまりちゃ君、しーしー垂らしながらじゃ説得力ないよっ」 「ゆっ!しょうだじぇっ!まりちゃをいじめりゅと、どしゅとおとーしゃんが だまっちぇにゃっぢゅぅうううっ!!」 「おとーさんは知らないけど、ドスはもうダメだろうなぁ。 君はスタンダードに餓死していってね。蟻さんに食べられてもいいよっ!」 火力を弱めた改造チャッカマンであんよをこんがりと焼き、地面に放る。 ついでに「じだいのどずになりゅまりぢゃの かっごよずぎるぴかぴかくろぼうし」も外して目の前で灰にした。 これでまりちゃは迫害される定めにあるお飾りのないゆっくり。 他ゆんにエサを運んでもらうなどして万が一にも生き残る可能性すら潰えた。 お下げは残しておいてあげよう。いつまでも好きなだけ無意味に振り回してていいよ。 情け深くってごめんねっ 「そろーりそろーりぃぃ!ゆひぃぃぃ、ちぇんはゆっくちにげりゅんだねぇぇ!!」 「みょんっ!まっちぇよぉっ!ちぇんははやしゅぎりゅみょぉぉおん!!」 「やあ、おまたせ。次は君たちの番だよ」 「「ゆっぴぃぃぃいいいい!!!にゃんでにんげんしゃん、みょんたちに おいちゅけりゅにょぉぉお!!?」」 1mも離れていないところを這っていた子ちぇんと子みょんを捕まえる。 あんよに水平に爪楊枝を刺し込み、動きを封じて放置。 「ゆびぇぇええん!!ぼうゆるじでぇええええ!!たちゅけちぇくだしゃいみょぉぉおん!!!」 「わぎゃらだいよぉぉおおお!!?ゆっくちさしぇちぇよぉおおお!!ぢぇんたち、きゃわいいおちびぢゃんにゃんだよぉぉお!!?」 「はいはい、ちょっと待っててね」 まだうっすらとゆルサンの煙が残る”ほいくえん”の洞に、身を屈めて入り込む。 目当ては奥にある大きな鳥の巣ベッドだ。 ぽんぽんと叩くと、中から苦悶の表情で目玉を飛び出させ餡子を吐いて死んだ赤ゆっくりの残骸がぼろぼろと転げ落ちた。 子ちぇんと子みょんをそのベッドさんに寝かせる。 すると、お昼寝の時間でも思い出して安心したのだろうか。 「べっどしゃん、ふーかふーかゆっくちぃい!!」と、すぐにあんよの痛みも忘れてゆっくりし始めた。 「にゃん……にんげんさん、やっとわかっちぇくれたんぢゃにぇ?みんにゃでゆっくちしたほうがしあわしぇーにゃんだねー」 「でみょ、ちゃんとあやまっちぇほしいみょんっ!みょんたち、すっごくこわきゃったみょんっ!!」 「はいはいゆっくりゆっくり。今からベッドさんを燃やして君たちには焼きチョコになってもらうよっ」 「「どぼぢでぞうなりゅにょぉぉおおお!!!?」」 「ゆん国でもゆ獄でもいいけど、向こうではみんなやぱちゅりーと仲良くねっバイバイっ!」 「「ゆ゛ん゛や゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!あぢゅっ!!あぢゅいぃぃい!!ゆっきゅりにげ……どぼじであんよしゃん うごきゃにゃいにょおお!!」」 子ちぇんと子みょんがしっかり炎に巻かれて身をよじって苦しんでいるのを眺める。 とりあえず目の前のゆっくりはすべて処理した。 少し離れたところから、痛みとストレスの余り発狂してれいぱー化したらしい保育ゆんありすの嬌声や、相変わらず通常ゆっくりに苛められているらしいお帽子無しドスまりさの悲鳴が聞こえてくる。 うん、穏やかないい午後だ。 一息入れよう。 ペットボトルの水を飲んで戻ると、鳥の巣ベッドの火は消えており、皮や髪は焼け焦げているものの「おみじゅ……」などと喋る余裕すら残している黒焦げの白黒チョコ団子が二つあった。 このままでもすぐに息絶えるだろうが、せっかく頑張って死なずに耐えてくれたのだ。 全身の皮が溶けて中身が剥き出しになっているので、チューブのからしとわさびを埋めるようにたっぷりかけてあげた。 唯一動く目玉をぎょろぎょろさせ、枯れたはずの涙を流して喜んでいる。 「さて、”次”で最後かな」 「っ……!!」 誰もいないはずのまあ山奥と呼んでいいぐらいのところ。 草むらの中からわずかに例の特徴的な声が聞こえている。 そろそろ頃合だ。 先ほどから時折かさかさと揺れていた草むらに手を突っ込み、触れた柔らかいものを掴み上げてみる。 それは「おそらをとんでるみたい!」などとも叫ばず、ぷるぷると紫の髪を震わせていた。 「あの参謀ぱちゅりーはなかなかの策士だったわけだけど……残念だったねぇ」 「むきゅっ……」 野球ボールより少し大きいぐらいの子ぱちゅりー。 恐らく参謀ぱちゅりーの子どもであり、ゆルサンで死んだ赤ぱちゅりーの姉だろう。 参謀ぱちゅりーは自分とおちびちゃんをいわば囮と目くらましにして、この子だけでも逃がそうとしたのだ。 もしぱちゅりー種のおちびちゃんが何匹もいる中でやられていたら、気付かなかったかもしれない。 「君は多分次代を担う参謀ぱちゅりーになるはずだったんだね。優秀なの?3って分かる?」 「……にんげんしゃん。ゆっくちしないでぱちぇをころしなしゃいっ」 「ほう。何とまあ」 子ぱちゅりーの目は母親と同じく据わっている。 手のひらの上に乗せられ、指でむーにむーにと掴まれていながら大したものだ。 「もう嫌と言うほど見てたと思うけど、虐待されるのは痛いよ?ぱちゅりーはゆっくりしたくないの?」 「ゆっくちしたいといえば させてくれりゅのかしら?にんげんしゃん、じぶんがやってきたことをおぼえてないの?おばかしゃんなの?」 「拙いながら意趣返しとは高等な。ほらこんな風に痛いんだよ?ぺっちーんっ」 「むぎゅっ!!」 デコピンで強めにおでこを叩いてみる。 痛みに弱い子ゆっくりなら、これでも一発で悶絶し、トラウマになるほどのダメージとなる。 「むっきゅぅぅ……!いたいわっ……いたいけど、なんてことないわっ」 「頑張るね。じゃあ、こういうのはどうだろう。ぷーすぷーす」 「むっぎぃぃいぃいい!!!」 爪楊枝で浅く頬を刺してみる。ちーくちーくの方が正確だろう。 人間でもキリやアイスピックで皮膚を刺されれば堪らない。 ゆっくりにとってもデコピンとは比べ物にならない激痛だ。 子ぱちゅりーはそれでも必死に歯をかみ締め、涙の溢れる目を瞑って耐えている。 「みんなはもっといたくてくるちいことをされたわっ……!ぱちぇもないちゃうけど…… ぜったいに にんげんしゃんなんかにまけにゃいわっ!!」 「ふむ……」 潤んだ目をキリッとさせて、子ゆっくりらしからぬ気迫でそう言い放つぱちゅりー。 それを一旦地面に下ろす。 小さなぱちゅりーは人間さんの手から解放されても気を緩めず、変わらずこちらを睨み付けている。 「負けない」とはまりちゃたちの言うような、ゆっくりしてない人間にゆっくりが劣るわけがない、制裁して格の違いを思い知らせてやる、といった意味ではないだろう。 何もかもを相手の思い通りにはさせまい。 身体は蹂躙されようとも、餡子の中に宿る抽象的な何か、ゆっくりとしての尊厳だけは守り通してみせる。 参謀ぱちゅりーの中にもあった覚悟を、このほんの小さな子ゆっくりが獲得していた。 それも「おたべなさい」という逃げの形ではなく、痛みに耐え切るという攻めの姿勢で、だ。 「君みたいな子をね……」 「……?」 子ぱちゅりーの頬をつんつんと指で突きながら語りかける。 「絶対に死なさず徹底的に苛め抜いてね。生きたいだの死にたいだの叫び始めるのを見るのはとっても楽しいんだけど……」 「むきゅっ……っ!!」 「流石にそれだけのハードプレイが出来る準備はここにはないんだよ。オレンジジュース必須だし」 「むきゅぅ……」 「今ここで君を潰しても面白くなさそうだから、もう帰ろうかな。後味が微妙だと嫌だしね」 そういって後ずさり、子ぱちゅりーから少し離れる。 もう時間も時間だし、本当に帰らなくてはならない。 トレードマークの罪袋を外し、荷物の方に向かう。 流石に見逃されると聞いて、遠ざかっていく人間さんの背を見送る子ぱちゅりーの緊張が、僅かに緩んだ。 「まあ君みたいな小さなおちびちゃんなら、お持ち帰りすればいいだけなんだけど……?」 「っっっ……!!!」 くるりと振り向いた人間さんから放たれた一言に、不意を突かれて凍りつく。 素顔を晒してニヤリと笑った人間さんは、今のぱちゅりーから見ると下劣な悪魔そのものであり、生クリームの底から凍えるような冷たさを感じる。 それは人間さんの言っていること、つまり自分がお持ち帰りされて今の決意など跡形もなくなってしまうほど凄惨な虐待を受けることが真実であると確信させるのに十分なものであった。 どっすぅぅうんっ!! 瞬間、少し離れたところから何か巨大なものが落ちたような轟音が響く。 仕掛けが上手くいったようだ。 子ぱちゅりーの相手を一旦止めて、音のした方、ドスの帽子を捨てた方に向かう。 「ゆべぇぇぇぇええ……ゆぇぇええんん……!!まりぢゃのおぼうぢぃぃ、どぎょぉぉおお……!!?」 数十分前とは別ゆんに見えるほど疲労心労で痩せこけたドスまりさが、見事に潰れていた。 自分のお帽子を下敷きにし、落下の衝撃であんよが盛大に破れ、もりもりと餡子が漏れ出している。 全体的に崩れた山のように見えるそれは、威厳ある長の面影を一切残していない。 「おぼうぢぃぃい、がばいいばりぢゃのまっぐろなおぼうぢざんっ……ゆっぐぢでてきちぇにぇぇ……?」 お帽子のないヘンテコなドスとして延々通常ゆっくりに罵倒され、いじめられたためだろう。 哀れ、幼児退行を起こしている。 ドスまりさも可愛く小さな赤ゆっくりとして生まれたときは父まりさのお帽子に受け止めてもらったのだろうが、ゆん生最後の瞬間である今、奇しくもそれに似た状況を再現していた。 ドスを苛めていた通常ゆっくりは、恐らく多くがドスの進行に巻き込まれて潰れ、残ったものも大半が崖からの落下で死んだのだろう。 ドスの周りでわずかに「おしりがいちゃいぃぃいいい!!」と悶絶しているゆっくりは、先に落ちたドスをクッションにすることで生き延びたものか。 お帽子が最初に落とした場所から一切移動していないことから、善良優秀なゆっくりたちによるお帽子救出は失敗したのだと分かる。 ドスのあんよと餡子に埋もれてわずかに尻を振っているゆっくりたちを見るに、その顛末は予想したとおりのものだったのだろう。 数匹の成体ゆっくりが上手く協力すれば巨大なドスのお帽子でも引きずることなら出来る。 だが、各々がてんでバラバラの方向から引っ張ったために綱引きをしているだけの状態になり、しばらくして落下してきたドスに潰されたのだ。 「いいね。ドスもみんなも、よくもまあバカみたく予想通りにやってくれました。 ゆっくりできたよっ」 「ゆ゛っ……にんげんしゃん……」 声をかけると、宙をさ迷っていたドスの目が弱弱しくこちらに向けられる。 「にんげんしゃん……どぼぢでごんなごどずるの……?まりぢゃだぢ、なんにもわるいこちょちてにゃいのにぃ……」 「僕は絶滅主義者じゃない。だから、強いて言わずとも楽しむためだなぁ。 君たちが泣き喚いて無様に潰れていく姿を見ると、とってもゆっくりできるんだよ」 「ぞんなぁっ!!おがじいよぉおっ!!みんなでゆっぐぢじようよぉぉおお……!!ゆぇぇぇええ……!!」 「そうそう、そんな顔だよ。ありがとうねっ。 永遠にゆっくりするまでもう少しかかるだろうけど……長い間お疲れ様」 ドスまりさが最早一切動けず、致死量の餡子を流失し始めていることは確認できたので、その場を去る。 木の洞の前に戻ると、子ぱちゅりーが逃げずに待っていたばかりか、別の子まりちゃがやって来ていた。 ”ほいくえん”の子ゆっくりを見過ごしていたのではない。 ドス虐待を始めた辺りから草むらから飛び出してきて、父であるらしい英ゆんまりさが入れられた透明な箱に立ち向かい、必死にそれを助けようとしていた健気なまりちゃだ。 見逃してやっていたのだから、さっさと逃げればいいものを。 人間さんと戦うつもりだろうか。 「むきゅぅぅ!!いいから、まりちゃは にげなしゃいっ!もうすぐにんげんしゃんが もどっちぇくるわっ!」 「だまっちぇねっ!ぱちゅりーこそ、ゆっくちしないで まりちゃとおかざりをこうかんしちぇねっ!!そしたら にげちぇねっ!!」 「そんなことしたりゃ、まりちゃがにんげんしゃんに おもちっかえりっ!されちゃうでしょおぉお!!」 「いいんだよっ!!まりちゃが みがわりさんになるよっ!!にんげんさんに こりょされるよっ!!」 「どぼじでぞんなごというのぉぉおお!!?」 「いきてねっ、ぱちゅりー!!ぱちゅりーはゆっくちしたゆっくりだよっ!むれをよろしくにぇっ!!ゆんっ!」 「むきゅぅぅうるるるる!!」 強引にナイトキャップを奪われたぱちゅりーが、さらに体当たりを喰らって転がる。 すぐ傍に近づいてきた人間をやっと察知して、慌ててナイトキャップを被り、金髪のまりちゃが振り向いた。 「まりぢゃはばぢゅりーだよっ!!にんげんしゃん、ゆっぐちしていっぢぇねっ!!」 「やあ、まりちゃ君。英ゆんのおとーさんはもういいのかい?」 「ゆ゛ん゛っ、おどーざんは ぼうだめだっで いうがらぁ……ゆ゛!?ちがうよっ!!まりぢゃはまりぢゃじゃないよっ!!」 「賢者の子どもであるぱちゅりーだけでも助けようとした、ってところかな。偉いね、まりちゃ君」 「ゆっびゃあああ!!ちぎゃうぅぅうう!!まりぢゃはぱぢゅでぃぃだよぉおお!!むっぎゅりじでいっでえええ!!」 「むきゅうううう!!にんげんしゃん、ぱちぇはここよっ!!」 転げた先の草むらから子ぱちゅりーが飛び出してきた。 「どぼじで でてきちゃうにょぉおお!!」とお下げを振り回すまりちゃに近付き、目を細めてすーりすーりする。 姉が妹に対してするそれとも見えるが、あえて言うならば、もっと違った意味合いがあったのだろう。 まりちゃが落ち着くと、先ほどまでと同様のキッとした目で一度だけこちらを睨み、再びまりちゃに寄り添った。 「むきゅ……ありがとう、まりちゃ。もういいのよ……」 「ごべんねぇぇ……!にんげんしゃんにみやぶられちゃっちぇ、ぎょべんねぇええ……!!」 「しかたないわ。それよりまりちゃ、ぱちぇとずっといっしょにゆっくちしましょう」 「ゆぅぅぅう……!??ぱちゅりー、なにいっちぇ……」 小さなお下げで涙を必死に拭いながら、まりちゃが呟く。 「ずーっといっしょにゆっくちよ。にんげんしゃんに ぎゃくたいされちぇも、えいえんにゆっくちしちぇも、ぱちぇはずーっとまりちゃとゆっくちしゅるわっ」 「ゆ゛ゆ゛ぅ゛っ!ばりぢゃもずるよっ!!ぱぢゅでぃと、ずーっどずーっどゆっぐぢずるよぉぉおお!!」 ゆんゆん泣く子まりちゃと、それに優しく寄り添う子ぱちゅりー。 ずっと一緒にゆっくりするとは、婉曲的だがゆっくり独特の求婚の表現だ。 極限状態における吊り橋効果なのか普段からそうだったのか分からないが、このまりちゃとぱちゅりーは番になることを互いに宣言したのだ。 すぐに破壊できる脆いものとはいえ、最早目の前には二匹だけの世界が出来上がっていた。 虐待を楽しむ侵略者にとって相手にされず蚊帳の外というのはそれなりにダメージとなる。 ぱちゅりーの狙いはそういうところにもあるのだろう。 ここで「今からお前らの仮初の幸せを滅茶苦茶にしてやる。互いを憎むようになるまで虐待だあヒャア」と突っかかるのは、それはそれで楽しいが、まあ野暮と言うものだ。 少なくとも今この瞬間における人間さんの”負け”を意味するはずである。 身を屈めて近付き、「ゆぴぃっ!」と怖がるまりちゃを制して、お飾りを元通り被せてやる。 「怖がらなくていいよ、まりちゃ君。日が暮れ始める。さっきも言ったけど、僕はもう帰るよ」 「むきゅっ……」 「ぱちゅりーも身構えなくていい。お持ち帰りするのは、優秀な英ゆんのまりさだけだ」 「ゆぅぅぅ……おとーしゃんっ……!!」 「まあまあ、こればかりは僕の”狩り”だから諦めてねっ」 ぱちゅりーたちから離れ、後片付けを始める。 ゆっくりの残骸は雨が来ればすべて溶けるが、ゆルサンから爪楊枝まで虐殺に使った道具はちゃんと持って帰るのがマナーでありルールだ。 人里の畑を荒らした無垢な英ゆんの入った透明な箱に蓋をし、大きなカバンに何とか詰め込む。 今までのやり取りをちゃんと聞いていたらしい英ゆんまりさは「だして」だの「たすけて」だの喚かなかった。 しかし、わが子や故郷との別れ、そして自分に待っている運命を考えてか、涙だけは大量に流している。 下敷きになっている赤ゆっくりの残骸がこれを吸収し、まりさのあんよが溶けることはないだろう。 それにしても重い。 元々あれこれ道具を持ってきた上に、成ゆん1匹が追加されたら堪らない。 まあ帰るまでが虐待だ。 「それじゃあ、まりちゃ、ぱちゅりー。ゆっくりしていってね。 ”また来るよ”」 手に持ったお飾りの罪袋を振り、寄り添ったままの小さな二匹に別れを告げる。 麓の農村まで歩いて数時間。 現代社会から放置され、人も資本も踏み入らないこのような山でこそ、彼らのようなゆっくりが育つ。 次は何をしようか。 『単純群れ虐殺』 終わり ----------------------------------------- 読んでいただいてありがとうございました。 初投稿の習作ということで、多数の偉大な先達方からネタやセリフをお借りしています。 これからよろしくお願いします。
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※独自解釈全開です。 ※ぺにまむ表現があります。 ※虐待成分かなり薄目。 ※初ゆ虐です。お目汚し失礼。 おいおい、もう終わりか? あんよも焼いていないし、餡子だって漏れていないじゃないか。 むしろ、これからが本番だぞ? 人が丹精込めて育てた野菜を食い散らかして、この程度で済む訳無いだろうに。 ……なに? 『お野菜は勝手に生えてくるでしょう』? 馬鹿かお前? だったらどうして山や野原に生えないと思ってるんだ。 ……『人間さんがお野菜が勝手に生えるゆっくりプレイスを独り占めしてるから』? ……なあ、れいむ。 その大嘘、誰から聞いたんだ? ……『嘘じゃない、お母さんがそう言っていた』? ああ、解った。 お前のお母さんも騙されていたんだよ。 ……そうだな、ちょっとだけ教えてやろう。 『嘘つきゆっくり』 昔々、お前のお母さんのお母さんの、そのまたお母さんが生まれるよりもずっと前の事だ。 その頃はまだ人間とゆっくりは仲が良かったんだ。 ゆっくりは人間をゆっくりさせてあげる事でお野菜やあまあまを貰い、 人間はゆっくりに食べ物をあげる代わりにゆっくりさせて貰う。 そうやってお互い仲良くやっていたんだ。 だけどある時、一匹のゆっくりがこんなことを言い始めた。 『人間はお野菜やあまあまが勝手に生えるゆっくりプレイスを独り占めしている』 最初の内は誰も相手にしなかったよ。 みんな知っていたんだろうな。 お野菜は人間が育てている物で、人間がそれを材料にして作ったのがあまあまだって事をさ。 そしてそれが人間がゆっくりするために必要な物だって事もな。 ところがそのゆっくりは同じ事を毎日繰り返し主張した。 やがてそのゆっくりの言う事を信じるゆっくりも現れた。 そうしてゆっくり達は人間の畑を襲い出したんだ。 びっくりしたのは人間の方だ。 今まで友達だと思ってたゆっくりが、いきなり訳の解らない事言いながら畑に押し寄せてくるんだからな。 でもその時はまだ人間も許してくれたのさ。 軽いお仕置きが精々で、大体は叱って終わり。 それが悪かったんだろうな。 そこで潰しておけばその後の悲劇も防げただろうに。 お仕置きされたゆっくり達は群れに逃げ込むなりこう言い出したんだ。 『自分達が見つけたゆっくりプレイスを、人間に横取りされた』、 『自分たちは何もしていなかったのに、いきなり人間に虐められた』ってな。 何匹か死んでいたのも話に真実味を付けてしまったから、その話を信じたゆっくりは多かったらしい。 実際は叱られて悪事を自覚したゆっくりが謝ろうとした際に、『裏切り者は死ね!』って自分達で殺したようだがな。 その話を信じた群れのゆっくり達は激怒したのさ。 『ゆっくりできない人間を懲らしめる!』って周囲の群れを全部集めて、人間に復讐しようとしたんだ。 もちろんそんな大嘘に騙されなかった賢いゆっくりも居たよ。 でも、復讐に燃える群れを止められる程居た訳じゃ無かったし、 何より止めようとしたゆっくりは、軒並み人間のスパイだと断じられて処刑された。 結局賢いゆっくり達は群れを離れ、人間も立ち入らない山奥へ逃げていったそうだ。 そして残ったゆっくり達は一斉に人間を襲い始めたんだ。 今度は人間も黙ってられなかった。 畑荒らしどころか、人間も無差別に襲って来たんだからな。 ゆっくりの攻撃なんて人間にとって大した事じゃないが、行く先々で襲われたんじゃ仕事になりゃしない。 仕事ができなければ人間はお金が貰えない。 お金が無ければ人間はゆっくりできない。 仕方なく人間は襲ってくるゆっくり達を捕まえて事情を聞く事にした。 まだ仲直りできると思ってたんだろうな。 結論から言えば仲直りはできなかった。 むしろ悪化しちまった。 捕まえたゆっくりは同じ事を言い続けた。 「ゆっくりプレイスを独り占めする悪い人間さんは死ね!」ってな。 そりゃそうだ。 ゆっくりは人間がゆっくりプレイスを独り占めするためにゆっくりを殺した、と思い込んでいたんだから。 だが、それを聞いた人間は激怒した。 人間はゆっくりが畑荒らしを自己正当化するために嘘をついている、と思ってしまったんだ。 そうして人間は、自分勝手なゆっくりが大嫌いになって。 ゆっくりは人間をゆっくりさせなくなった。 もうお前にも解っただろう? 人間はゆっくりよりも強い。 だから人間に歯向かったゆっくりは大概死ぬ。 最初の内こそ「歯向かって来たゆっくりだけを殺す」って思っていた人間も、 余りにもゆっくりが悪さを繰り返すもんだから、片っ端から潰すようになった。 やがて人間の中からゆっくりを虐める事を楽しむ奴が現れた。 いわゆる虐待鬼意山、という奴だな。 ……俺は違うぞ? 俺はただ、悪いゆっくりが大嫌いなだけだ。 仲違いしてからもう何千、何万のゆっくりが死んだか知らないが、 たった一匹のゆっくりが吐いた大嘘が、今でも沢山のゆっくりを騙して、そして死なせている。 お前も、お前のお母さんも、そのゆっくりの被害者なんだよ。 そして多分、人間も、な。 ……どうした?なんで泣いている? ……『嘘つきゆっくりはゆっくり死ね』? まあそう言うな。 そのゆっくりはとっくに死んでるよ。 ……『どんなゆっくりだったの?』って言われてもな…… 解らないんだ。 れいむだったかも知れないし、まりさかも知れない。 もしかしたらありすかも知れないな。 人間を襲ったゆっくりの中に居る事は確かなんだが、どのゆっくりだったかは伝わっていない。 おそらく山に逃げた賢いゆっくり達は知ってるかもしれないが、 奴らは人間はおろかゆっくりの前にも姿を見せないからな。 おまけにこの事を覚えてる人間もいなくなってきたから、余計に解らなくなっちまった。 ……『どうして人間さんは覚えていないの?』だって? さっきも言ったが人間がゆっくりを大嫌いになったからさ。 嫌いな奴の事なんて覚えていたくないだろう?そう言う事だ。 オレンジジュースが効いて来たみたいだな、もう大丈夫だ。 ……ああ、ちょっとまて。 これ、お前が駄目にした野菜だ。 こうなったら人間にとって価値はないから、お前にやる。 ……大丈夫じゃねえよ。お陰で俺がゆっくりできなくなっちまった。また一から作り直しだ。 ……謝るなよ。 それよりさっきの話、ちゃんと群れのゆっくり達に教えてやれよ? 人間にもまだゆっくりと仲良くしたい奴が居るからな。 ひょっとしたら仲直りできるかもしれないぞ。 そのためにはさっきの大嘘に騙されたゆっくり達の目を覚ましてやらないと駄目だ。 ……ああ、頼むぞ。お兄さんとの約束だ。 だからその土下座を止めろ。っていうか頭だけでよくそんな器用な真似できるな…… ほら、もう行け。暗くなるとれみりゃが出るからな。 ……おう、『ゆっくりしていってね!』もう来るなよ! ……ふう。 口から出任せとはいえ、よくもあんな法螺話がスラスラ出て来たもんだ。 まあこれで奴らが畑に来なくなれば良し。 来るようならまた同じ話をしてやりゃ、いつかは来なくなるかもな。 畑の被害も胡瓜数本で済んだから殺す程じゃなかったし、 あいつ物わかり良さそうだったから、案外うまく行くかも知れん。 ……さて、まずは畑の周りにゆっくり避けの罠を置くか。 三軒隣の御仁井さんに頼むとして、予算は…… ゆっくりれいむは必死に森の中を跳ねていた。 口に銜えた胡瓜の束を落とさないように注意しながら、今の彼女が出せる最大限の速さで群れに急ぐ。 それ程に先刻の話は衝撃的過ぎた。 人間さんがゆっくりを虐める理由が、まさか昔のゆっくり一人の大嘘のせいだったとは! (はやくみんなにおしえてあげないと!みんなでゆっくりできるかもしれないよ!) あの人間さんは『人間にもゆっくりと仲良くしたい人がいる』と言っていた。 それに悪いゆっくりが大嫌い、と言っていたにも拘らず、畑を荒らしてゆっくりさせなかったれいむを許してくれた。 それもこんなお土産付きで! ならば、あのお話のように人間さんをゆっくりさせてあげれば、またお野菜が貰えるようになるだろう。 その為にも、一刻も早くこのお話を群れの皆に伝えねば! (まっててねみんな!ゆっくりしないですぐかえるよ!) 使命感に燃え、れいむは森を走破していった。 「むきゅ!れいむはそのにんげんさんにだまされたのよ!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおお!!!!!」 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘。 れいむが属する群れが注目する中、長であるぱちゅりーはれいむの話を聞くなり嘘と断定した。 「おにーさんがおしえてくれたんだよ!おやさいはかってにはえないんだよ! にんげんさんがゆっくりするためにおさやいがひつようなんだよ! にんげんさんがれいむたちをゆっくりさせてくれないのは、おおむかしのうそつきゆっくりのせいなんだよ! だからゆっくりはんせいしてもういちどにんげんさんをゆっくりさせてあげれば、おやさいもわけてもらえるんだよ!」 必死に訴えるれいむに冷ややかな一瞥をくれ、ぱちゅりーは言い聞かせるように語り始めた。 「むきゅ!そんなおはなし、ぱちぇはいちどもきいたことないわ。 ぱちぇはぱちぇのおかあさんのおかあさんのころからのことなら、なんでもしってるわ。 そのぱちぇがしらないのよ。 だからそのおはなしはまっかなうそなのよ!」 実際に嘘なのだが、その判断基準が自分の知識に無いから、という時点でこのぱちゅりーの程度が知れる。 元々ぱちゅりーの祖母がここに群れを構えた理由は、食料が豊富な場所だった為である。 だから今まで餌が尽きる事は無かった。ぱちゅりーの代になるまで、群れは平穏無事に過ごせていた。 それはぱちゅりーの祖母、先々代の長の非凡な才能の証だったのだが、それが災いした。 今代の長であるこのぱちゅりーは、ぱちゅりー種としては驚くほど無能だった。 先代の長の一粒種だった為、母と群れの皆からかなり甘やかして育てられた結果である。 思慮に欠け、肝心な知識も穴だらけで、唯一保身の為の悪知恵だけはよく回る。 正直長としては全く役立たずなのだが、偉大な先々代の直系という七光りが分不相応な地位を授けてしまった。 この群れは以前ほどのモラルを持たない。 先代まで守られていたすっきりー制限も忘れ去られ、群れのゆっくり口は増える一方。 れいむが人里で畑荒らしをするはめになったのも、群れが付近の草や虫を捕り尽くしたからだ。 本来捕り尽くす前に止めるべき所を放置した結果である。 「それはおさのおかあさんのおかあさんのおかあさんがうまれるより、もっとまえのことだからだよ! それにおにーさんはおやさいくれたよ!にんげんさんもれいむたちとなかよくしたいっていってたよ!」 「そんなむかしのおはなしをにんげんさんがしってるはずないわ。 だいたいどんなゆっくりがうそをついたかすらわからないようじゃ、しょうめいできないじゃない」 まさに暖簾に腕押し、糠に釘。 甘やかされて育ったぱちゅりーは、呆れるほどにプライドが高い。 自分が知らない事は無い、と全然根拠の無い自信に溢れるぱちゅりーにとって、 己の知識に存在しない話なぞ決して受け入れる筈がない。 自分の非を認めないれいむに、ぱちゅりーは次第に苛つきを募らせていった。 れいむにとって、自分をゆっくりできなくさせた悪いれいむを許してくれた人間さんが絶対である。 最初こそ酷く痛めつけられたものの、あのお話を聞いていかに自分がゆっくりできなかったかを知り、納得している と、言うよりあの程度で許してくれた時点で『とっても優しい人間さん』であると思っている。 なにより『悪いゆっくり』だったれいむに、自分のゆっくりを犠牲にしてまでお野菜を分けてくれた事が決定的だった。 そんな『おにーさん』を侮辱されて黙っていられる程、れいむは薄情ではない。 自分の話を聞き入れもせず否定するぱちゅりーの態度に、れいむの忍耐は徐々にすり切れていく。 そして、れいむは遂にその言葉を言ってしまった。 「どうしておにーさんのいうことしんじてくれないの!?」 「ほんとはものしりだなんて、うそなんでしょ!?」 「この、うそつき!」 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!い゛だい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!」 『おにーさん』の制裁はとても痛かった。 でも、今の痛みに比べればどれ程優しかったのか。 動けないようにあんよを食いちぎられ、自慢の素敵なおりぼんをビリビリに破かれ、群れの皆にボコボコにされ、お目目を片方潰されて。 全身を鋭い枝で切り裂かれ、にんっしんっ出来ないよう抉られたまむまむで群れの皆に代わる代わるすっきりー!させられる。 じくじく痛む体にのしかかり、盛んにすーり!すーり!してくるまりさと、 激痛しか伝えてこないまむまむにぺにぺにを突き立ててくるありす。 ふぁーすとちゅっちゅっすら未経験のれいむにとって、それは何よりもおぞましい行為だった。 だが幾ら泣き叫んでも、誰も止めようとはしない。 むしろ「んほおおおおおおお!つんでれなのねええええ!かわいいわあああああ!」だの 「ゆっへっへ!いやがっててもまりさのてくにめろめろなんだぜ!わかるんだぜ!」などと盛り上がる始末。 そして身動きの取れないれいむの目の前で、『おにーさん』から貰った胡瓜が全て食い散らかされていた。 「うそつきのれいむにはもったいないからたべてあげるね!」 「うめ!めっちゃうめこれ!」 「や゛べて゛え゛え゛え゛え゛え゛!ぞれ゛ばお゛に゛い゛ざ゛ん゛がでい゛ぶに゛ぐれ゛だの゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」 痛みからなのか、それとも『おにーさん』の信頼を裏切ってしまった事が悔しいのか。 潰された左目から餡子の涙を、霞む右目から滝のような涙を流すれいむを、尊大にふんぞり返ったぱちゅりーが睨みつける。 「むきゅ!ぱちぇにうそをついたげすはゆっくりしね!」 その台詞に周囲のゆっくり達が次々と追従する。 「げすのくせにおさをだまそうとするからこうなるんだぜ!」 「おやさいがにんげんさんのものだなんて、とんだうそつきのいなかものだわ!」 「ゆっくりできないれいむはくるしんでしぬといいんだねー!わかるよー!」 「ちーんぽ!」 「おきゃーしゃん、りぇいみゅおにぇーちゃんはどうしちぇいじみぇらりぇてりゅの?」 「あのれいむはうそつきだからだよ!おちびちゃんはあんなげすになっちゃだめだよ!」 「「「「「「ゆっきゅりわきゃったよ!!!」」」」」」 そんな群れの様子ををぼやけた視界で捉えながら、れいむは思う。 れいむを取り囲む群れの皆が、全然ゆっくりしていない。 人里へ向かうれいむを心配そうに見送ってくれた幼馴染みのまりさが、 色鮮やかなれいむのおりぼんを「とってもとかいはね!」と褒めてくれたありすが、 れいむに上手な狩りの方法を教えてくれた心優しいちぇんが、 かつて凶暴な蛇かられいむを助けてくれた勇敢なみょんが、 いつもれいむのお歌でゆっくりしてくれた赤ちゃん達とその親達が、 全てのゆっくりが醜く歪んだ表情を浮かべ、れいむが苦痛にのたうち回る様を嘲笑う。 その口から出てくるのは聞くに堪えない罵詈雑言。 群れの幸せを願ったれいむを完全否定する、ゆっくりできない仲間達。 もしかしたら、あのお話に出て来たゆっくり達もこんな感じだったのではないか? (おにーさんのいったとおりだったよ。あのうそにだまされたゆっくりはゆっくりできないんだね。 ……ごめんね、おにーさん。れいむ、やくそく、やぶっちゃったよ。) 間断なく責め立てているはずの痛みさえ、今やれいむには知覚出来ない。 薄れ行く脳裏に浮かぶのは、悲しそうにれいむを見つめる『おにーさん』の姿。 その涙はれいむの現状を哀れんだものか、それとも約束を守れなかったれいむを恨んでのものだろうか。 (………………ご……めん……………な……………さ………い………………………おに………………さ……………………ん……………) 押し寄せる絶望と無念の中で、れいむの短いゆん生は幕を閉じた。
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『ゆっくり公民 ~奴隷制~』 32KB いじめ 差別・格差 飾り 同族殺し 共食い 群れ ドスまりさ 自然界 人間なし 2作目 ゆっくり公民 ~奴隷制~ とある森の片隅、数匹のゆっくり達が忙しそうに動き回っている、ゆっくりに詳しくないものでもその様子を見れば彼らが狩り――食料の調達を行って居るのが分かるだろう。 しかしそんな彼らを見回すと一つの違和感を覚える、たとえば今必死に口の中へ茸を入れている金髪のゆっくり、ゆっくりまりさを見ればその正体に気が付く、元々ゆっくりまりさは大きな黒いトンガリ帽子を持ち、その帽子を用いて水の上を渡ったり狩りの成果を運ぶことが得意なゆっくりである、そんなまりさが狩りを行っているのはなんら不思議なことではない、しかし今ここで必死に狩りをするまりさの頭には、その帽子が乗っていなかった。 それだけではない今その一画で狩りを行うゆっくり達、れいむ・まりさ・ちぇん・ありす、彼らはみなその命より大切とされるお飾りを持っていなかったのだ。 「ゆ、ゆ、ゆぐぅ、ゆっぐりむれにもどるよ……」 先ほどのまりさは、口の中にしまった茸がいっぱいになったのか、体を引きずるようにして群れの方角へ戻ろうとしている。 その横では茸の判別が付かないのか、一匹のお飾りの無いれいむが茸の生えた木を前にしてきょろきょろとしている。 「ゆ、ゆぅ~、たしかまりさは、こっちだっていってたきがするよ……」 「こら!なにをちんたらやっているのぜ?さっさときのこさんをはこぶんだぜ!!!」 そんなれいむの背後から一匹のまりさが罵声を浴びせる、と、このまりさは先ほどのまりさやれいむ、その周りにいるちぇんやありすと異なり帽子を被っている、また良く見れば体も他のものより一回り大きく汚れや傷が目立たないことが分かる。 「ゆ!ゆっくりりかいしたよ!」 そのまりさの声ににれいむは一瞬体を強張らせると、目の前の茸を猛然と口に入れだした。 周りの飾りのないゆっくり達も、れいむに習うように茸を採るスピードを上げる。 しかしこの帽子を被ったまりさは自分はそれに加わろうとせず、他のゆっくりを背中を眺めて満足そうな顔をしている。 まりさ種の帽子があればその輸送能力は通常の倍にも届くにも関わらずである、これには理由があった。 その時、慌てたのかれいむが有毒な茸も口にしまってしまった、それを目に留めたまりさが叫ぶ。 「ゆぁ~!!!なにをしているのぜ、そのきいろいきのこさんはダメなのぜ!!!いったいどれいはなんどいったらおぼえるのかぜ!!?」 そう、帽子の無いゆっくり、彼らはこの群れの奴隷ゆっくり達だった。 1.奴隷制 ~Slavery~ 「ゆぅ、がう、うぅぅ……」 森の一角にある斜面では大量のゆっくりが穴を掘っている、みな一様に全身を土で汚れさせ、非力な歯で土を削っては口に含み外に運び出している。 彼らも種は多様だがお飾りがないゆっくり――奴隷ゆっくり達である。 「むきゅ、さいしょはおくにむかってあなをほるのよ」 後ろで指示を出すぱちゅりー、もちろん頭にはナイトキャップが乗っている。 そのときぱちゅりーの体に影が差す、背後に現れた巨大なゆっくり、ドスまりさである。 「ぱちゅりー、ご苦労さま、工事は進んでいる?」 「もちろんよドス、狩用の奴隷の半分をこちらにまわしたから……でもしばらくは狩りの人数が足らないわ」 「そうだね……新しい奴隷用の巣が完成するまでの辛抱だよ、多少は蓄えを使ってもいいよ」 「しばらくは、群れのゆっくりにも、狩りをお願いしましょう……」 そんな二匹を、土を置いて戻ってきた奴隷まりさが恨めしそうな目で見るが、ドスまりさがそちらに視線を向けると目をそらし再び穴の中に入って行った。 茸を採りに行かされたれいむは、アクシデントはあったものの、とりあえず口いっぱいに茸を含むことに成功し、群れへ這うようにして戻ってきた、れいむより前に戻ったゆっくりの後に続き、群れの食料庫の入り口に並ぶ。 食料庫の入り口では木の枝で武装したみょんが見張りを勤めており、中に入る奴隷ゆっくり達に威嚇するかの様な目を向けている。 食料庫の中では数匹のぱちゅリーが動き回っており、食料を持ってきたゆっくり達に指示を出している。 「きのこさんをとってきたゆっくりたちは、ここにだしてね!」 れいむの前の奴隷まりさがぱちゅりーの支持を受け茸を吐き出す、れいむもそれに習い茸を吐き出した。 口が楽になったれいむは、ゆっくりと食料庫の中を見回す。 この群れの食料庫はドスの巣の一部に造られており、ドスまりさも入れる空間には様々な食料が蓄えられていた。 奴隷れいむは口の中によだれを飲み込むのに苦労した、しかしここに集められた食料が奴隷ゆっくりたちの口に入ることは無い。 「ゆぅ、まりさもきのこさん、たべたいよ……」 一緒に居た奴隷まりさが呟いた、奴隷が何か言おうとする前にぱちゅりーが叫んだ。 「なにをいっているの!これは、むれのゆっくりのごはんよ!どれいがむーしゃむしゃできるわけないでしょ!!!」 奴隷ゆっくり達のごはん、それは本来お家の建材などに利用する草であり、けして味の良いものでは無い。 「むきゅ~、なにをしているの、さっさとつぎのきのこさんをもってきなさい!」 ぱちゅりーの声に追われるようにして奴隷れいむと奴隷まりさは再び狩場へ向かった。 夕方、赤い空の下疲れ切ったれいむは体を引きずり巣に戻ってくる、口に含むのは狩りの最後に集めた苦い草、本来は集めて乾かしお布団の材料などとする草だが、この群れの周りではいくらでも手に入るため奴隷ゆっくりのごはんになっている。 おうちの中に入るれいむ、そこには多くのゆっくりが疲れた体を横たわらせていた、れいむは一人暮らしでは無い、しかし番が居るわけでも、家族が居るわけでも、しんぐるまざーでもなかった、一緒に住んでいるゆっくり達はみなれいむと同じ奴隷ゆっくりだった。 「「「「「ゆっきゅり……ただいま……」」」」」 そこに子ゆっくりと赤ゆっくりが帰ってくる、暗い顔をした子達もおうちの中へ戻ると目を輝かせて親も元に戻っていく。 「おちびちゃん……おかえり……すーりすーり」 疲れ切った親ゆっくりも、このときは元気を取り戻してわが子にすーりすーりをしている。 そんな子供達も一様に頭にはお飾りが無い、彼らは奴隷ゆっくりの子供達だった、昼間、親達が働いている間は群れのがっこうに預けられているのである、これは親に対するゆん質の意味もあるが、子ゆっくりうちから奴隷としての立場を教え込む群れの政策である。 れいむも元々、そんな子ゆっくりの一匹だった、両親はれいむがまだ子ゆっくりの大きさ時に仕事を監督するゆっくりに逆らい、永遠にゆっくりさせられていた。 疲れ切ったれいむは巣の端によると目を閉じる、奴隷ゆっくりにとって唯一のゆっくり、すーやすーやをするために。 「むほぅ、すすす、すっきりー!!!」 誰かがすっきりーをしているようだ、のんきなものだと思う。 すっきりー制限を行っているこの群れで唯一の例外として、奴隷ゆっくりのすっきりーは自由である、しかしそうして生まれたおちびちゃんは、生まれると同時にお飾りを奪われ奴隷ゆっくりとなるのだ、普通のゆっくりであれば自分の経験から子供を同じ目には遭わせたくないとすっきりを拒む、しかしゲス傾向があるゆっくりや、労働のストレスに耐えきれずにすっきりしてしまうものは後を絶たない。 しかし、ここですっきりしている者は幸運な方に入るだろう、奴隷ゆっくりの中には群れのゆっくりの下に連れて行かれその性欲の捌け口――性奴ゆとして扱われているものも少なくない、そこからまた奴隷が増えることになるのだ。 れいむは生まれたときから奴隷ゆっくりとして生きていたゆっくりである、長い間まずい草のみで生活してきたれいむは、少なくとも美しいゆっくりとは言えず、それがれいむの身を守ることになっていたのである。 目の前が明るくなってくる……巣の入り口の結界の隙間から朝日が入り込んできたのだ、れいむはゆっくりと目を覚ますとその場で体を軽く左右に振る、周りのゆっくり達はまだ目を覚ましてはいないようだ、外に出ようかと思ったがれいむの位置からでは出口までの間に眠っているゆっくりが数匹居るためその場に留まるしかなかった。 すると、巣の入り口のほうからガンガンという音が聞こえる。 「おきなさい、どれいども!とかいはなあさよ、きょうのしごとにかかるわよ!」 途端に巣の中は喧騒に満ちる、モゾモゾと動き出すゆっくり、寝ぼけているのを隣のゆっくりに小突かれているゆっくり、あくびをするゆっくり、 「はやくしなさい!とかいはなありすをまたせるとこわいわよ!!!」 巣の結界が取り払われる、奴隷ゆっくり達は慌て外に出る、今日の監督ゆっくりはありすのようだ。 頭の上で輝く赤いカチューシャ、奴隷とは比べ物にならない綺麗な肌、しっかりとした栄養に裏打ちされれいむより一回り大きい体、何匹かの奴隷ありすが羨ましそうにそれを見ている。 「きょうはふゆごももりようのおうちのせいびをするわ、ありすについてきなさい!」 「おちびちゃんたちは、ここでまって、このあとくるれいむといっしょにがっこうにいきなさい!」 いつもならこれから朝食である、れいむの隣のちぇんがそれを指摘するが、 「うるさわね、とかいははちょうしょくはぬくものよ!」 ありすは取り合わない、れいむ達はしぶしぶと仕事場へ向かった。 今日のれいむ達の仕事は、ドスのおうちにもなっている大きな洞窟の整備だった。食料庫も併設されているこの洞窟は群れの中でも最大のおうちで、冬には全ての群れのゆっくりがここに集まり冬篭りをする予定になっている。 ゆっくりの中でも最大の大きさを誇るドスでも、二匹は通れるほど大きい洞窟の中はいくつかに分岐が存在し、様々なおへやに分かれている。 れいむ達はその一つ、冬に群れの一般ゆっくりが集まるおへやの掃除を任された、すきっ腹を抱えてお部屋の中から落ちているごみや硬い石などを拾っては口にしまい、洞窟の外に運んでいく。秋の始めのこの時期に普段使わないこの部屋の掃除を行い、枯れ草を大量に集めて敷くことになる。 れいむも去年の巣材の残りと思しき枯れ草を口に入れ洞窟の外へと向かった、途中で食料庫の横を通ると今日の狩りの担当なのか奴隷ちぇん達が口を膨らまして入っていった。 (ゆっくり、おなかがすいたよ……) その様子にれいむのお腹が再びぐずりだす、しかし今口の中にあるのは汚い枯れ草である。 がっくりとしながら洞窟を出て、群れのゆっくりが「ごみすてば」と呼ぶ穴へ向かう。 ドスが造ったこの穴には群れのゆっくり達のうんうんを捨てることになっているが、この場でうんうんやしーしーをするゆっくりも多い。穴の淵に来ると、れいむはやっと口の中の物を吐き出すことが出来た。 「ぺっ、ぺっ、やっとすっきりしたよ」 「ゆ、さっさとどくみょん」 すると後ろから、一匹のみょんがやってきてれいむを押しのけた。 「ゆ!」 れいむは固まってしまう、何故ならそのみょんはうんうんをしに来たわけでもしーしーをしにきたわけでも無かったからだ。みょんは後ろに大きなものを置いていた、ここまで引きずってきたと思われるそれは、どう見ても永遠にゆっくりしてしまったゆっくりだった。 「まったく、はんこうててきなどれいだったみょん!」 そのまりさの体には、各所に穴が開き餡子を垂れ流している。まりさ種の特徴でも有る黒いお帽子は無く、全体的に薄汚れた体と金髪がそのまりさが奴隷ゆっくりだったことを教えていた。 みょんはまりさを穴に放り投げるとれいむに顔を向けた、 「このまりさは、おろかにもどすのむれからにげようとしたみょん、おまえはそんなこと、かんがえてないみょん?」 いや、恐らくれいむだけでなく後ろから来た他の奴隷ゆっくり達にも向けて言ったのだろう。 ばがだな……とれいむは思う、奴隷ゆっくりがこの群れから逃げても行ける所は無い、お飾りの無いゆっくりは他の群れでも迫害されるそうだ、それにこの群れで生まれた奴隷は、外についてほとんど知らない、出て行っても行き倒れるだけだろう。 もしかしたら、先ほどのまりさは外から来たゆっくりだったのかもしれない、たまにこの群れにドスがいるという話を聞いて移住しようとやってくるゆっくりが居るのだ、もちろんこの群れで待っているのはお飾りの没収と奴隷への転落だが、そういうゆっくりには美形が多く、大半は群れのゆっくりの性奴ゆになるという。 「さぁ、さっさとしごとをつづけるみょん!」 固まってしまった奴隷ゆっくり達に痺れを切らしたのかみょんが叫ぶ、れいむ達は慌てて動き出すと洞窟へ戻った。 仕事場に戻ると監督ありすが奴隷ゆっくり達を集めた、その横にはごはんなのか少し茶色がかった草さんが積まれている。 「さぁ、とかいはなぶらんちさんよ、たべなさい!」 奴隷ゆっくり達は我先にとその山に集り苦い草を口に入れる、味のまずさも空腹がカバーしお腹に何かが入る満足感が訪れる。 「「「むーしゃ、むしゃ、しあわせ~」」」 思わず言ってしまったれいむ達を後ろからありすがさげすんだ目で見ていた。 草の山が無くなるとありすは全体を見回して宣言する、 「きょうは、ごごのしごとはなしよ!ぜんいんむれのひろばにあつまりなさい!」 その言葉に一瞬、奴隷ゆっくり達がが固まる、誰もが理解した。 そう今日は「あれ」の日なのだと…… 「さぁ、さわがずにいどうしなさい!」 ありすの言葉に押されるようにして部屋を出る、れいむは思わず洞窟の奥の方を見てしまった。 洞窟の奥、見張りの兵士みょんに守られれいむ達奴隷ゆっくりは入ることが出来ないドスまりさの部屋、その奥の倉庫に奴隷達のお飾りが仕舞われていると言う、忍び込もうとしたゆっくりは全て見張りかドスにせぃっさいされているだが、れいむはその奥にあるという自分のおりぼんに思いをはせた。 群れの中央、森の中の開けた場所に群れの広場がある、普段は群れの集会などで使われるその広場に群れのほとんどのゆっくりが集まっていた。中央を空けて円を書くようにして集まったゆっくり達には不思議な熱気が充満している。 しかしよく見るとその内訳は異なる、列の前のほうにいる群れの一般ゆっくり達の目は輝き、その後ろに並ばされた奴隷ゆっくり達の目には怯えが見て取れる。 ザワ、一瞬のどよめきと共に一方に視線が集中する。ドスまりさがやってきたのだ。 参謀ぱちゅりーを横に従えたドスまりさは、悠然と中央に進み出て宣言する。 「ゆぅ、みんなよく来てくれたね!これからみんなが楽しみにしていた闘ゆをおこなうよ!」 歓声が沸き起こる、ドスまりさはそれを見回すと落ち着いたタイミングを見計らい再び口を開いた。 「だけどその前にやらなくちゃいけない事があるよ!せいっさいだよ!」 「さぁ、つれてきてね!」 ドスの合図で木の棒で武装した兵士ゆっくりが数匹の奴隷ゆっくりを引きずってくる、彼らが広場の中央にたたき出されるとドスの横で黙っていたぱちゅリーが口を開いた。 「むきゅ、この奴隷達はおろかにもドスに対する反乱を企てたわ!その罪によりここで永遠にゆっくりの刑にするわ!」 ぱちゅりーの宣言に、うつむいていた奴隷達が騒ぎ出す。 「ごかいなんだぜぇ、まりさはドスにさからったりしていないんだぜぇ!」 「れいむはかわいいよ、しっかりしごともしてるよ、ゆるしてね!」 「わからないよー、ちぇんがなにをしたっていうんだよー!」 そこに処刑ゆっくりが木の枝を向ける、怯えて外に逃げ出そうとしたまりさも、ゆっくりの円の内側に居た群れのゆっくりに体当たりされ中央に戻されてしまう。 「やめてほしいんだぜぇ、ゆぎ、いちゃい、やめて、ゆびぃ、ゆ、ゆ、ゆ……」 三匹はあっという間に餡子とチョコの塊にされてしまう、お帽子が無いためこうなるともういったい何だったか判別不可能である。 興奮している群れの一般ゆっくりとは対象的に黙ってしまった奴隷ゆっくり、奴隷の子供達はおそろしーしーを漏らして固まっている。 餡子とチョコが兵士ゆっくりによって運び出されるとドスは、 「それでは改めて闘ゆを始めるよ!勝ったゆっくりにはあまあまがあるから頑張ってね!」 ドス言葉の後一匹のまりさが進み出る、その後ろには奴隷ゆっくりのまりさとみょん、彼らが生き残りをかけて争う闘奴ゆ達である。 この群れでは定期的に娯楽として奴隷ゆっくり同士の闘いを「闘ゆ」として催している。 基本的に判定勝ちや降伏などは認められず、どちらかが永遠にゆっくりするまで戦いを続ける闘ゆに参加する奴隷達の生存率はけして高くないが、勝った奴隷は特別にあまあまが配給されるほか、この闘ゆでたくさん(三回)勝利した奴隷ゆっくりは解放奴隷とされ、群れのゆっくりとして迎え入れられる事になっている。 これらのご褒美につられて、これだけ危険な闘ゆであるのに参加ゆが居なくなることは無い。 「ゆぅ、ゆっくりできないよ……」 輪の中心で、餡子を飛び散らせて戦うまりさとみょんを見たれいむは呟いた。 群れのゆっくりにとってはゆっくりできる娯楽だが、れいむにとってはいつか自分もああなるのではないかと感じさせる催しである。 しかしその反面、めったに居ないがこれに勝利して奴隷から解放されたゆっりの様に、自由を手にした自分を夢見てしまう気持ちもあるのだ。 ワァと歓声が上がる、どうやらみょんが勝利したようだ、右の頬の噛み付かれた傷からホワイトチョコを流したみょんは審判まりさから渡されたあまあまを早速口に入れしあわせ~と叫んでいる。 「れいむも……あまあまがほしいよ……」 次の試合が始まるのか、審判まりさは奴隷れいむとちぇんをつれてきた、れいむは思わず下を向いてしまった。 ドスまりさは闘ゆで盛り上がる群れを満足げに見つめていた、奴隷ゆっくり達の働きによって秋の初めから冬に向けて食料の備蓄は行われているし、冬篭りのためのおうちの整備も開始した。 群れのゆっくり達は豊富な食料でゆっくりしているし、性奴ゆが居るために群れのすっきり制限を破るゆっくりも居ない。 定期的に行う制裁と闘ゆの開催で群れの秩序も守られている。 ドスまりさは昔、まだ普通に群れを率いていたころ――まだ周りのゆっくりをゆっくりさせる事しか考えていなかったころの事を思い出しにんまりとする。 「ゆ~♪とってもゆっくりしているね♪」 このドスまりさも昔は、他の多くのドスと同じような群れを率いていた、自分を慕って集まってくるゆっくり達、そんな彼らをゆっくりさせるべく頑張っていた。 他のゆっくり達では届かない場所の果物や木の実を集め、ドススパークを使い大きなおうちを作り、群れの中で喧嘩が起きればゆっくりオーラで仲裁し、捕食種の襲撃があれば群れを守るために闘った。 そんなドスを群れの仲間達は賞賛したものだった。 しかし、群れが大きくなると、だんだんほころびが出てくる。ドスに頼り食料は自分の必要な分しか集めないゆっくり、群れの援助を期待しておちびちゃんを作るゆっくり、ドスの力を自分の力と誤解して行動するゆっくり。 ゆっくり達はドスが彼らに何かを与えれば「ドスはとってもゆっくりしているね!」と賞賛するが、ドスが群れのことを考え掟を作り何かを制限しようとすればそれに反発するのだ。 ゆっくりは、ゆっくりすることに重点を置くため、ゆっくりするためなら禁止された事などすっかりと忘れるか、覚えていても何かと理由を作って自分のやりたいようにやってしまう。 その結果は秋の終わりに現れた、ドスと数匹の優秀なゆっくりしか行わなかった食料の貯蔵、事実上の注意と化していたすっきり制限、排除されること無く増えていったゲスゆっくり。 「ねぇドス、さいきんごはんさんがとれないんだよ、おちびちゃんがおなかすかしているからあまあまちょうだいね!」 「「「「「ちょうらいね」」」」」」 「どすぅ、れいむのおちびちゃんかわいいでしょ、かわいいおちびちゃんをみたらごはんさんくれるよね?」 「「「「「「きゃわいくっちぇぎぇめんにぇ!」」」」」」 「むきゅ、けんじゃのぱちゅによれば、さいきんかりのせいかがへっているのは、ふゆさんがくるからよ!ドスはけんじゃのぱちぇにむれのたくわえをわたしなさい」 「へっへっへ、そのごはんさんは、ゆうっしゅうなまりささまがもらってやるのぜ!さぁはやくわたすのぜ!」 「ドス~!わからないよ~おとなりのまりさにきょうのごはんさんとられちゃったよ~!」 いかにドスといえど、秋の終わりから群れ一つ分の越冬用の食料を集めるなど出来るはずは無い。 元々群れのゆっくりは、それぞれ越冬用に備蓄していると思っていたドスは彼らの訴えを聞きそれぞれの備蓄を見て顔を青ざめさせた。 少しでもと思い、群れの全てのゆっくりを動員して狩を行うことを宣言したドスに対する群れのゆっくりの反応は、 「なにいってるの?ごはんさんならドスがくれればいいんだぜ、ばかなの?しぬの?」 「れいむはおかぁさんなんだよ!?おちびちゃんのいるれいむたちにごはんくれるのはあたりまえでしょ!」 「むれのみんなにごはんさんくれないなんて、どすはゆっくりしていないね!」 「むきゅ、ここはまずぜんぶのごはんさんをけんじゃのぱちぇにあずけなさい!ぱちぇがこうっへいにぶんぱいするわ!」 「ちぇんはさむいのはいやなんだよ!わかれよ~」 とほとんど現実を見ていないものだった。 そればかりではなくドスやちゃんと越冬用の食料を備蓄していたゆっくり達を、ごはんさんを独り占めしているなどと罵倒するゆっくりまで現れ始めた。 そして終わりの始まりは、ある日ドスのおうちに一匹のまりさが駆け込んで来たことから始まった。 その日一日中、必死に食料を集めていたドスはもう夕方には疲れきってしまい、そのひのごはんをかきこむとすぐに眠ろうとしていた。 「ドス!ドス!おきるのぜ!まりさはすごくゆっくりしたプレイスをみつけたのぜ」 寝入りばなを起こされて、不機嫌なドスに対してそのまりさが語ったのは次のような事だった。 このまりさは普段居る群れの辺りに食料が無いため、今日は普段行かないところへ遠出をした――実際は群れの近くでサボっているとドスに起こられるためにそれから逃げただけなのだが。 すると、群れから半日ほど進んだところにとてもゆっくりできる場所が有ったというのだ。 綺麗に並んだご馳走が食べきれないほどあり、奥にはドスでも入れそうな大きくてゆっくりしたお家が並んでいたという、そしてそこで食べたご馳走は、まりさのゆん生のなかで最もしあわせ~なごはんだったと。 「これがそのごちそうなのぜ、これだけしかもってこれなかったけど、とってもおいしいのぜ!」 自分のお帽子の中から白い物を取り出すまりさ、それを見たドスまりさは背中に雪さんを当てられた気分になった。 もはやドスの目は完全に覚めていた、まりさの持ってきたものを凝視する。 まりさは得意げに自分の手柄を語り、群れの全ゆで取りに行けばたくさん持ってこれるのぜ、などと訴えている。 しかし、もはやドスにそれを聞いている余裕は無かった。 (おやさいさんだ……) ドスの中に黒いものが広がる、ドスはまだ自分が普通のまりさだった時、目の前のまりさよりも小さな子ゆっくりだったときの事を思い出していた。 そのころ、子まりさの両親の暮らしている群れにもドスが居た、あれも寒くなってきた時期だったと思う、群れのゆっくがとても美味しい草さんを採ってきたのだ、群れはその話題で持ちきりになり、ドスの父親のまりさもそれを持っておうちに帰って来るようになった。それをしあわせ~して食べると母親のれいむはとても喜び「おやさいさんはゆっくりできるね♪」と言っていた。 そんな幸せは長くは続かなかった、ある日の夜群れにゆっくりの悲鳴が響き渡った、次々と潰され行く群れのゆっくり達、頼みのドスもあっさりとやられてしまった、誰もがおそろしーしーを垂れ流す中群れの中を動き回る大きな生き物、ドスのように大きいその生き物を両親は「にんげんさん」と言っていた。 一匹、また一匹と仲間が潰されて行く中、我に帰った父親に放り投げられ子まりさは危機を脱することになる。 その後他の群れに拾われることになるが、その時の事は大きなトラウマとなった、その後のゆん生でもにんげんさんに手を出したゆっくりがゆっくり出来なくされて行くのを見てしまったのだから。 (あのときと、おんなじだよ……) まだ何か言っているまりさにドスは慌てて言った、 「だめだよ、それはゆっくり出来ないものだよ、まりさもそんな所へは行っちゃだめだよ!」 「ゆ!ドスなにをいっているのぜ?こんなにおいしいのぜ!」 「ちがうよ!それはにんげんさんの物なんだよ、にんげんさんは怖いんだよ、ゆっくり出来なくされるよ!」 「ゆふふふ、ドスはなにをいっているのぜ、まりささまならだいじょうぶなのぜ!それにみんなでいけばいいのぜ、ドスもいけばれみりゃにだってまけないのぜ!」 「それに、あんなゆっくりプレイスをひとりじめなんてゆるせないのぜ!せいぜいせぃっさいしてやるのぜ!」 「だめだよ!そんな事だめだよ!その場所に行くのは禁止するからね!ぜったいだよ!」 まりさは不満げながらその時は「わかったのぜ……」と言って帰って行った。 しかし事件は次の日に起こった、次の日もドスが朝の狩りから戻り群れのゆっくりに一声かけていこうと他のゆっくりのおうちの方へ向かうと、ほとんどの成ゆっくりが居ない。 「ゆぅ、やっとみんな狩りをがんばるようになったんだね、よかったよ」 そこへ、ドスと仲の良いれいむがやってきた。 「ドス、ゆっくりしていってね!たいへんだよ!」 「ゆぅ、れいむ、ゆっくりしていってね!どうしたの?」 「むれのみんなが、おいしいものが、とかいってでていっちゃたんだよ、おちびちゃんたちまでつれていっちゃったよ!」 「ゆ、そ、そんな!」 慌ててドスが群れの中を見回ると、朝早くからしっかりと狩りに行ったゆっくりとその家族を以外がほとんど、本来はおうちに居るはずの番や子供たちまで含めて居なくなっているのだ。 「ゆゆゆ……そうだもしかして!?」 ドスは昨日のまりさから聞いたことを思い出す、もしかして…… 実はドスまりさは知らなかっただが、今日ドスや一部のゆっくりが狩りに出かけた後、昨日のまりさが扇動して群れのゆっくり達を連れて、ごちそうのあるゆっくりプレイスへ向かってしまったのだ。 ドスの大きな体を脂汗が覆う、ドスの中に小さいころの思い出が渦巻く。 「ゆぅ……みんなを集めてね、これから冬篭りをするよ!」 「「「「「「ゆ!?」」」」」」 ドスはすぐに群れに残っているゆっくを集めると、群れのそれぞれの家の備蓄を持ってこさせ、一番大きなドスのおうちで冬篭りに入ることを宣言した。 驚く群れのゆっくり達も、にんげんさんと言うとてもゆっくり出来ないものが来ると説得すると、しぶしぶとドスに従った。 ドスのお家に備蓄を集め、木の枝もかき集めてきてもらう、お布団は群れの近くの枯れ草をドスが口に入れて運んだ、大体が集まると群れのゆっくりを入れ、ドスは洞窟の前の木をドススパークで倒した、そして入り口にしっかりと結界を張る。 こうして冬篭りが始まった、群れのゆん口が大きく減ったためにドスの備蓄を切り崩すことで食料的にはとてもゆっくりとした越冬になった。 しかしドスは少しもゆっくり出来なかった、いつにんげんさんがやってくるのか、おうちの外から大きな音がするたびに、にんげんさんが結界をどかして入ってくるのではないか。 こうして越冬を成功させたドスと群れは次の春、食料集めが終わるとすっきりーもせずに移住を行うことになる。 あの時、ゆっくりプレイスに向かったゆっくり達は帰ってくることは無かった、群れのおうちはあの時、ドス達が冬篭りに入る前と同じ、結界すら施されることなく越冬を終えたゆっくりを迎えた。 ドスの群れは逃げ出した、まりさ達が向かった方向とは反対側へ、少しでもにんげんさんから離れるようにと。 ドスと少なくなった群れのゆっくりは新天地で新しい群れを作ることになる、ドスを慕って再び集まってきたゆっくり達、しかしドスは、同じ間違いをしないために新しい群れではきっちりとした掟を作ることになる。 一部のゆっくりが「ゆっくりできない」とこぼすほど掟を…… ドスの新しい群れには様々な掟があった、食料は子育てなどの例外を除いて、全てのゆっくりで集めてその成果に応じて分配を受け、残りは貯蔵する。すっきりーは春にしか許されずドスの許可も必要、ゆっくりできないゆっくりは群れのみんなの前で裁きせいっさいする。 これらの掟は群れの安定に貢献することになった、しかしその反面ゆっくり達には不満の多いものでもあった。 ゆっくりはゆっくりすることを至上とする生き物である、そこに自分達のゆっくりを阻害する掟がある、その効果については疑わなくても不満を溜め込むことになる。 定期的に不満を持つゆっくりによるはんっらんが起き、鎮圧はされるもののドスは対応を求められた。 大きな変化があったのある掟破りのゆっくりれいむが現れたときである、そのれいむは自分はかわいそうだと主張し、他のゆっくりのおうちのごはんを盗み食いした新入りであった。 群れのさいっばんでも自分は間違っていない、自分をゆっくりさせろと怒鳴り続けた。 ドスは困ってしまった、このころになると掟は多種多様になったが、その罪の重さによって罰が決まるようになっており、掟破りは即制裁と言うことではなくなっていた。 食料泥棒であれば、通常は強制労働――群れのおといれの掃除などが課せられる。 しかし、このれいむはその罰を素直に受けはしないだろう、本来この群れでは食料泥棒は子供がやることが多い犯罪で、多くの食料が欲しい場合、狩りを頑張るほうが効率が良い。 周りのゆっくり達も、反省することの無いれいむに怒りのボルテージを上げていく、ドスも心情としては追放か制裁したいのだが、食料泥棒に厳罰を課す前例は作りたくなかったのである。 その後、ドスの判断によりこのれいむは群れの「どれい」になるという罰を受けることになる、お飾りをドスが没収し群れの仕事を強制する、お飾りを預かっているためサボればお飾りを使って脅し、逃げることも出来ない。 ドスとしてはこの奴隷刑は強制労働の重いものとして考えたつもりだった。 しかし、この罰を受けたれいむは元々性格に問題があり、仕事も不真面目だったのだが何度かの反抗を潰されると従順な働きぶりを示すようになり、群れの備蓄に貢献することになる。 ドスはこの罰の有用性を理解した、追放や制裁では群れの問題を取り除けるが、群れにとってプラスは少ない。ところがこうして奴隷として働かせれば群れに何らかの形でプラスがあるのだ。 それまでは排除するしかなかった問題ゆっくり、それを群れの戦力に出来る、それだけでこの奴隷刑は意味のあるものだった。 以降群れでは、問題を起こしたゆっくりは群れの奴隷として、群れのために働かせるようになる。 しかし問題も起こった、奴隷に転落するのは何か罪を犯したゆっくりであり、そうしたゆっくりは周囲からもあまり好かれていない事が多かったため、奴隷ゆっくりを他のゆっくりが迫害する、そんな事件がちらほらと起こるようになった。 ドスまりさは悩んだ、罰を受けているとはいえ群れのゆっくりだ、同じ群れの仲間に対する暴力などは掟破りである…… しかし、群れにも思わぬ変化が現れた。それまでの群れでは、食料にもやや余裕があり、外敵からも保護されたとてもゆっくりとした群れのはずが、様々な掟があり自由が制限されていたため、全体にピリピリとしたゆっくり出来ない空気が流れていた。 しかし、群れに奴隷ゆっくりが生まれると、群れの一般ゆっくり達は不満を奴隷にぶつけることにより普段のストレスが解消され、とてもゆっくりするようになったのだ。 ドスは決断した、全てのゆっくりをゆっくりさせる、そう考えて必死に行動した最初の群れは結局崩壊してしまった。 ならば、一部を犠牲にしてでも群れをゆっくりさせる、そのためには何でもしようと。 そう、奴隷ゆっくりは群れのゆっくりではない……と。 こうなると群れにとって奴隷は必要不可欠なものとなった、それまでは群れで掟破りをしたゆっくりのみ奴隷となっていたが、こうなるととても足りない。 ドスはまず、奴隷に対するすっきりーを許可した、奴隷から生まれた子供はもちろん奴隷ゆっくりとなる。 これは、群れのゆっくりに達に熱狂を持って歓迎されることになった。それまで群れではすっきりーを制限しており、これに不満を持つ若いゆっくりはとても多かった。 ゆっくりがすっきりーをするのは、おちびちゃんはとてもゆっくり出来るという、子孫を残そうという本能によるものだけではなく、すっきりーによる快感でゆっくりするというのも大きかったのだ。 副次的な効果だが、これにより群れのありすがれいぱー化する事件が、ほぼ無くなると言う効果もあった。 子ゆっくりでは働き手にならないという理由から、この群れではゆ攫いすら始まった。 群れを訪れたゆっくりや、群れの近くを通りかかったゆっくりを捕らえ、お飾りを奪い奴隷化するのだ、こうしたゆっくりは成ゆのため即戦力として利用できた。 周囲の小さな群れを、ドスを含む群れの戦力で襲い、おちびちゃんを奪ってゆん質として奴隷化する。そんな暴挙も近くの小さな群れが無くなるまでは行われた、その後隣接するのがこの群れと同じ程度の規模の群れだけとなり、この方法は行われなくなる。 こうなると、群れは非常にゆっくり出来るようになった。奴隷に食料を集めさせれば狩りの手間は少なくなり。 性奴ゆとのすっきりーをすればおちびちゃんが増えすぎて困ることも無い、穴掘りや水運び木の枝集めなど汚く辛い仕事は奴隷にやらせ、群れのゆっくりはゆっくりしていられる。 もちろん、様々な問題も起こった。奴隷ゆっくりの数が増えると、群れのゆっくりに不満を持ち反乱が起きるようになった。その中でも最大の物では100を超える奴隷が反乱を起こし、最後にドススパークを用いて鎮圧するものの群れのゆっくりの被害も甚大なものとなった。 また、お飾りを見捨てて逃亡する奴隷ゆっくりも現れるようになり――もちろん、お飾りのないゆっくりが、外で生きてゆける訳はないのだが――群れの食料収集に影響が出ることも有った。 これらの問題を解決したのは、一匹のぱちゅリーだった。元々群れの近くにやってきて捕らえられ、奴隷にされるはずのゆっくりだったのだが、ぱちゅりー種のお飾りであるナイトキャップに通常付いている月の形のアクセサリーとは別に、銀色に輝くものが付いていたことと、本ゆんも非常に美形のゆっくりであったことから、ドスの元に連れて行かれることになる。 そして、ゆっくりらしからぬ知識を持ったぱちゅりーは、あっという間にドスの側近としての地位をつかんでしまった。 ぱちゅりーの献策は各所におよんだ。 奴隷ゆっくりはそれぞれにおうちを持たせるのではなく、大きなおうちをつくりまとめて管理する。 奴隷のおちびちゃんは、日中の仕事中は一箇所に集める、この時に奴隷として教育する。 仕事は奴隷のみで行わせるのではなく、群れのゆっくりから監督をつけ仕事振りを見張る。 反乱を企てた奴隷は、他の奴隷に見せるように制裁し、本ゆんだけでなく同じおうちの奴隷にも責任を負わせる。 優秀な奴隷は、群れのゆっくりにし、そのことを他の奴隷ゆっくり達に宣伝する。 そんなぱちゅりーの功績の最大のものが「闘ゆ」であった。 盛り上がりを見せる闘ゆ、現在はみょんと三匹のちぇんが戦っている。1対3の戦いである、不利な状況にも関わらず不適な表情を浮かべるみょんの体には何本もの切り傷が認められる。このみょんは、既に闘ゆに二度の勝利を収めた歴戦のゆっくりである、これに対しては三倍の戦力を持つちぇんも、うかつに飛び込むことが出来ないのか、膠着状態が続いていた。 ドスの元に、この前の試合で破れたれいむの死体を運ぶように、兵士ゆっくりに指示していた参謀ぱちゅりーが戻ってくる。 「ねぇぱちゅりー、あのみょんは勝てると思うかい?」 「むきゅきゅ、ドス、わかっているんでしょ、そうそう、れいむはちゃんとれいの場所に運ばせたわ」 「ありがとう、ぱちゅりー、そうだね今日の夜にでも加工しようか」 ドスまりさは、先ほどの試合で勝利を収め、賞品のあまあまをむさぼり喰らっている奴隷ちぇんを冷ややかな目で見つめると貯蔵庫の中身を思い出す。 「そういえば、商人のまりさが来るのは今日だったよね?あまあまが足りていたかなぁ?」 「大丈夫よドス、ちゃんと確認してあるわ、前回の二倍までなら問題ないわよ!」 商人のまりさとは、スィーを使いいくつかの群れを渡り歩いているまりさで、あまあまと引き換えに様々なものを仕入れてくれる。 この群れでは隣の群れから赤ゆっくりを購入していた、周囲のゆっくりを襲い奴隷にすることが出来なくなり群れの中で奴隷を増やすしか無いと思っていたところに、このまりさがやって来たのだ。 隣の群れでは赤れいむが余っているのかは分からないが、あまあまと引き換えに赤れいむを定期的に連れてきてくれている。 買い取られた赤れいむは、この群れでお飾りを奪われ、教育を受け苦い草を食べさせられても不満を言わず、群れのゆっくりの言葉に従う従順な奴隷ゆっくりにさせられる。 「もう秋さんだからね、冬篭りの準備のために、奴隷はいくらでも必要だよ、まりさに入荷をふやしてもらおうかな?」 歓声があがる、三匹のちぇんが仕掛けたようだ、二匹がみょんの左右に回り込み体当たりをかける。油断無く左右に目をっ配ってたみょんは、後ろに飛んでこれを回避する、二匹のちぇんがお見合いするように止まる、目の前で止まったちぇんに好機を見たのか二匹に向けて飛び掛るみょん。しかし、それが失敗だった、みょんの前に並んだ二匹の影に隠れていたもう一匹のちぇんが前のちぇんを踏み台にして飛んでいたのだ、二匹に体当たりをして止まってしまったみょんの上にちぇんがのしかかる。 「みょ、はなせみょん!」 「はなさないんだねー、わかれよー!」 そこに、みょんの体当たりから復帰した二匹のちぇんが現れ、無防備なみょんの足に噛付く。 「みょ、ゆ、ゆぎゃぁぁぁ!!!」 底部を傷つけられ、痛みに絶叫しながらも諦めないのか、のしかかるちぇんを振りほどこうと頭を振り回すみょんに、 「とどめなんだね~!」 飛び上がったちぇんが、みょんを踏み潰し止めを刺した。 群れのゆっくり達の歓声に、尻尾を振って答えるちぇん達、その背後でぱちゅりーの指示を受けたまりさがみょんの死体を運び出していた。 その様子を見ながら、ドスまりさはこれからの計画を考えていた。この先に待ち受ける冬篭りに向けて奴隷達を動員して食料を集めなければ、冬篭り用のおうちの整備もどんどん行わなければ、この調子なら来年の春には、群れのゆっくりのすっきり制限を緩め、群れのゆん口を増やしても良いかも知れない。奴隷も春になれば増えるし、商人まりさの連れてくる赤ゆも増えるだろう。そうだ、冬篭りの間には群れのゆっくりにあまあまを多めに出してあげよう、いや、奴隷ゆっくりにも少しだけ分けてあげようか、そうすればとてもゆっくりした冬篭りになるはずだ。 この群れの奴隷ゆっくり達は知らない、越冬に耐えることの出来るおうちは、ドスの使っている大きな洞窟だけだと言うことを。闘ゆで敗れたゆっくりがどうなっているのか、何故この群れが奴隷同士のすっきりさえ許して奴隷を増やしているのか、そしてドスのおうちに入れるゆっくりの数は群れのゆっくり以外では奴隷達の2割程度だと言うことを…… あまあまが食べたい、そんな奴隷れいむの願いは、細い糸のような可能性としてこの冬に叶うのかもしれない。 後書き Civilization 4プレイ中に、そういばゆっくりってすぐ奴隷奴隷言うよな~と思い、書き始めてしまったネタ。 奴隷を使うゆっくりは何人かの作者さんが既に書いているけど、自分はこんな感じにしてみました。 勢いで書いたものなので、ところどころおかしな点があるかも知れません、誤字脱字は指摘していただけるとありがたいです。 「ゆん口を消費して、あまあまを緊急生産!」
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『ゲスって何?』 2KB 愛で 小ネタ 日常模様 飼いゆ 現代 愛護人間 ゆっくりしていってね! はじめまして。拙文ですが、ゆっくりしていってね! 『ゲスって何?』 ある冬の休日、安アパートの一室で、一人と一匹がコタツで暖をとっていた 「なぁれいむ、ゲスっていったい何なんだ?」 不意に、男はコタツの中で惰眠を貪るれいむに問うた。 誰にでもある、ふと思いつくような疑問。 退屈を紛らわせるにはもってこいだったのだろう。 そんなどうでもいいようなどうでもよくないような質問に、れいむは眉をキリッとさせ、 「れいむのじゃまをするのはだれでもげすだよ!(キリッ れいむかしこくてごめんね!」 「うん、お前に聞いたのが間違いだったわ」 男が呆れた様子で足を器用に使い、れいむをコタツから押し出した。 安アパートでしかも通常種のゆっくりと暮らしているだけあって、裕福な生活を送っているようには見えない。 当然それらしく、部屋にはコタツ以外の暖房器具は一切無い。 「ゆぅぅぅ!?さむくてゆっくりできないよ!おにーさん!れいむをあしでおさないでね!おねがいだよ!」 コタツの中は天国でも、その外は室内であるのにも関わらず室外気温と同じくらい寒い。 窓の外では、排ガスで茶色くなった雪が音も無しに閑静な住宅街へ降り積もっている。 雪を掻き分け真っ白な道路を進む除雪車のエンジン音以外は何も聞こえないこの部屋の静寂を破るかのように、 れいむがいわれの無い――れいむが勝手に思っているだけなのだが――暴力の行使に抗議する。 「おにーさんいじわるしないでね!れいむぷくーするよ!ぷくー!」 目尻に涙を溜め、元からふっくらとしている頬をさらに膨らませる霊夢を見て、男はもう一つ疑問が浮かんだ。 「れいむ、今俺はれいむの邪魔をしているわけだが、これはゲスに当てはまるのか?」 れいむを足で弄くりながら、悪戯じみた笑みを浮かべながら男がれいむに問う。 対するれいむは、 「ゆ?おにーさんはおにーさんだよ!でもいじわるさんはゆっくりできないよ!はやくやめてね!」 意外で、それでいてれいむらしい答えに男は、はははと快活に笑い、れいむをコタツの中へと引き入れた。 れいむも男と同じように、 「ゆ~、おにーさんゆっくりありがとう!こたつさんはゆっくりできるね!」とコタツの中で元の笑顔を取り戻す。 一人と一匹の休日は、こうしてまったりゆっくりと過ぎていくのだった。 えんど 「ヤマもオチも意味もねぇなこのお話」 「ゆ?おにーさんだれにしゃべりかけてるの?」 「なんでもない、気にするな」 「ゆっくりりかいしたよ!」 挿絵:
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『ありすの婚活』 D.O 「おにーさん!ありす、このまりさとけっこんするわ!」 「まりさはありすと、ずっとゆっくりするのぜ!」 今日は日当たりもよく、程よい気温で何とも心地いい。 そんなわけで、庭で縁側に座りボーっとしてたら、 薄汚いありすが、さらに汚らしい野良まりさを連れてやってきた。 何やら結婚報告をしているらしいが、 ありすの頭上の茎には、すでに3匹の赤ゆっくりが実っている。 ・・・できちゃった婚じゃねえか。 「で?」 「だから、まりさもかいゆっくりにしてくれなのぜ!」 「ゆっくりおねがいするわ!」 ・・・・・・。 「なんで?」 「だ、だって、ありすのだーりんなのよ?」 「ま、まりさ、とってもゆっくりしてるのぜ?ありすのだーりんなのぜ?」 「いや、だって・・・ありす。お前、俺ん家の庭に、勝手に住み着いただけだろ。」 ・・・・・・。 「そんなのきいてないのぜぇぇええ!?」 「こ、これは、いなかもののじょうだんよぉ!?おにーさん、へんなこといわないでね!?」 「お前みたいに薄汚くて、おまけにバッジもついてない飼いゆっくりが居てたまるか。」 俺からすれば当たり前の事実に対して、茫然とした表情を2匹は見せていたが、 野良まりさの方が多少早く立ち直り、野良ありすに向かってすごい剣幕で怒鳴りつけ始めた。 「・・・うそついたのぜぇええ!!ありすがかいゆっくりだっていうから、まりさはすっきりーしてやったのぜぇ!? まりさのこの、いたたまれないきもち、いったいどうしてくれるのぜぇえええ!!」 「まりさぁぁあ!これはなにかのまちがいなのぉぉおお!!」 「うるさいのぜっ!!もうありすなんて、はにーでもなんでもないのぜ!! ここでひとりで、ゆっくりしてればいいのぜ!!」 「ま、まって、まりさぁぁああああ!!」 野良まりさは、そのまま踵を返し(?)庭からゆっくりらしからぬスピードで走り去っていった。 なんだかんだ言っても、人間と関わる危険くらいは理解していたのだろう。 「まりさ、まりさぁぁ・・・」 そして、捨てられた方の野良ありすはメソメソ泣いていた。 このままほっといてもウザったいので声をかけてやる。 「お前、これで7度目だろ。いいかげん懲りろ。スルメ食うか?」 「おにーさぁん・・・ばたぴーさんがいいわぁ。」 バタピーを2、3粒食べている内に、ありすも多少は落ち着いてきたようだ。 「むーしゃむーしゃ・・・。ありす、『おとこうん』がないのかしら」 「馬鹿にはクズしか寄ってこねえんだよ。」 「むほぉ・・・」 理解したのかしないのかはわからないが(多分何もわかっていないが)、 食事を終えたありすは、心の隙間を埋めるためなのか、 縁側から投げ出していた俺の脚にすり寄ってくる。 「すーりすーり」 「汚ねぇ、べとべとする!すっきりーしてそのまんまのクセに触りやがって! ・・・洗ってやるからタライに水張っとけ。」 「ゆっくりりかいしたわぁ。」 ありすが足洗い場のタライに水を張ってる間に、 洗面所からゆっくり石鹸を取ってきた。 じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ・・・ 「いつものことだか、そのガキ共どうする気だ。」 「・・・おちびちゃんにつみはないもの。ちゃんとうんで、そだてるわ。」 「馬鹿なクセに?」 「むほぉぉおお!?ありすはばかじゃないわ!とかいはなのよぉぉおお!!」 「・・・・・・(意味変わんねえじゃねえか)」 まあいい。 こいつはゆっくり平均と比べても頭がかわいそうなヤツなので、1と複数の区別しかつかない。 パッと見では子供の種類もわからない今日の夜のうちに、黒帽子の方は間引いておくか。 「ふぅむ。・・・ガキの引き取り先もまた探さんとなぁ。」 せめてもの救いは、ありすのガキ共は揃いもそろって馬鹿な上にレイパー気質も無いくせして、 素直で扱いやすいと、引き取ってもらった同僚達に評判がいいことくらいか。 「ゆぅん・・・ありすは『ふこうなおんな』ね。いつか、『うんめいのであい』がおとづれるのかしら。」 「そんな日は一生来ねえよ。不幸なガキが増えるだけだ。止めとけ。」 「・・・むほぉ。」 ホント、野良にここまでしてやるなんて面倒見のいい人間、珍しいぞ・・・まったく。 餡小話掲載作品 その他(舞台設定のみ共有) ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 854 ごく普通のゆっくりショップ ふたば系ゆっくりいじめ 873 ゆっくり向けの節分 ふたば系ゆっくりいじめ 924 みんな大好きゆレンタイン ふたば系ゆっくりいじめ 934 暇つぶし ふたば系ゆっくりいじめ 943 軽いイタズラ ふたば系ゆっくりいじめ 1016 お誕生日おめでとう! ふたば系ゆっくりいじめ 1028 ゆっくり工作セット ふたば系ゆっくりいじめ 1148 愛でたいお姉さん 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち ふたば系ゆっくりいじめ 628 ゆきのなか ふたば系ゆっくりいじめ 753 原点に戻ってみる ふたば系ゆっくりいじめ 762 秋の実り ふたば系ゆっくりいじめ 1104 森から群れが消えた日(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 1105 森から群れが消えた日(後編) ふたば系ゆっくりいじめ 1134 いつもの風景 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけはそうでもない) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道(おまけ) 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 734 未成ゆん(おまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 678 飼われいむはおちびちゃんが欲しい(おまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけ) 夏-1-6. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけ) 夏-1-7. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 冬-2. ふたば系ゆっくりいじめ 910 寒い日もゆっくりしようね 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(仮) ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 ふたば系ゆっくりいじめ 662 野良ゆっくりがやってきた ふたば系ゆっくりいじめ 807 家出まりさの反省 挿絵:嘆きあき
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ゆっくりと雀蜂 「ゆゆっ! むしさん!ゆっくりたべられてね!」 「むーしゃ♪むーしゃ♪ しあわせー♪」 「おかーしゃんみてみてー! まりさいもむしさんつかまえたよー!」 「みんなとってもゆっくりしてるね! さすがれいむのこどもたちだよ」 ここは人里から離れた森の中。 そこには多くのゆっくりが外敵にも襲われず、平和にゆっくりと暮らしていた。 なぜならこの森にはゆっくりより大きな生物はいない。 強いて外敵を挙げるとすればカマキリや鳥などだが、 たとえ襲われようとも、ゆっくり達が力を合わせれば追い払える程であり、 多くのゆっくりはこの森で、外敵に怯える事無くゆっくりと生活している。 野生のゆっくりは食料として主に虫や花を食す。 特に、栄養溢れる虫はゆっくり達の好物であり、ゆっくり達は狩りと称し虫を捕っては食べている。 この家族も今まさに狩りの真っ最中である。 バスケットボール大の親れいむと親まりさが見守る中、子ゆっくり達が虫を捕っている。 子ゆっくり達はこの後家族でゆっくりと虫を食べるためにも真剣に狩りに勤しみ、 その様子をとても幸せそうに両親が見守っている。 「ゆっくりーのひー♪まったりーのひー♪すっきりーのひー♪」 子ゆっくり中には、狩りよりもお歌のがすきなゆっくりもいる。 みんな、親れいむと親まりさの大切な子供だ。 「ゆー♪ ゆっくりいっぱいむしさんつかまえたよ! きょうはごちそうだね!!」 「そうだね! これだけあればこんやはゆっくりできるね!!」 一匹の子まりさがたっぷりと虫を詰めた帽子を見上げながら幸せそうに親に擦り寄る。 そして親れいむがソフトボール大の子まりさをいとおしく擦り寄り返す。 「ゆ! きょうはこれぐらいにしてみんなゆっくりとおうちにかえるよ!!」 「「「ゆっくりおうちにかえるよ!!!」」」 親まりさが子ゆっくり達に大声で帰宅することを告げ、 子ゆっくりが揃って親まりさに負けないぐらいの大声で返事をする。 この家族はゆっくりの群れで暮らしている。 村長のぱちゅりーはとても賢く、群れのために尽くしている。 ゆっくり達はそんなぱちゅりーの下、みんなでゆっくりとした暮らしを満喫している。 いまこの家族が狩りをしていた狩場から村まではゆっくりの足で10分ほどの所にあり、 そこには50匹ほどのゆっくりが住んでいる。 「わ… わから…」 「ゆゆっ!! ゆっくりだいじょうぶ!?」 ――おうちに帰る道の途中、突然家族の先頭を進んでいた親まりさが驚きの声を上げた。 「ゆ!? このちぇんけがをしてるよ!!」 「ゆっくりどうしたの!?」 親まりさが見つけたのはゆっくりちぇんだった。 そしてまだある程度の距離はあるが、ここからでもわかる程にちぇんは傷つき弱っていた。 見覚えはない、おそらく他の群れのちぇんなのだろう、 いまも傷口から餡子を流しながら、ずりずりと這う様に森を進んでいる。 「ゆ…ゆっー!?」 怪我をしたちぇんが心配になり近づいた途端、家族は凍りついた。 「わ… わがらないよぉ゛…」 もう助からないかも知れない。 片目は潰れ、耳も尻尾も千切れて無くなってしまったちぇんを見て、まりさは悟ってしまった。 「こわいよぉ!! このちぇんゆっくりかわいそうだよぉ!!」 「ゆえーん! ゆえーん!」 「ゆゆっ! みんなだいじょうぶだよ! おかあさんたちがついてるからゆっくりあんしんしてね!!」 子ゆっくり達は今まで見たこともないような大怪我を負ったちぇんを見て怯え、 それを親れいむが必死になだめようとする。 「ゆ?」 その時親まりさは、ちぇんの体中に無数の小さな穴が開いており、その周辺は異常に赤くなっていた事に気が付いた。 しかし、今はそれよりも早くちぇんを助けることが優先だ。 「ちぇん! しゃべっちゃだめだよ! ゆっくりうごかないでまっててね! すぐにそんちょうのぱちゅりーをよんでくるよ!!」 親まりさがちぇんに動かずに安静にするようにちぇんに言い残し、 一人で急いで群れに向かった。 「ゆっくりげんきになってね!! ぺーろぺーろ」 まりさの去った後、れいむと子供達は虫の息のちぇんを懸命に舐めた、 応急処置にでもなれば。 そう思い懸命にちぇんを舐めるれいむ達。 しかし 「わ゛… わ゛がらな゛…」 「ぺーろぺーろ!」 「おかーさん! だめだよちぇんがぜんぜんゆっくりできてないよ!!」 「ゆぅ…」 舐めて治るような傷ではない。 れいむ達はぱちゅりーを呼びに行ったまりさに全てを託し、 自分達には見守るしか術が無いことを悟った。 「ゆっくりだいじょうぶ!?」 「ゆゆっ!こっちだよ! ゆっくりしないではやくきてね! そうしないとちぇんがゆっくりできなくなるよ!!」 涙目になっていたれいむの顔が一瞬で明るくなった。 れいむの視線のその先には、最愛のつれあいと村長のぱちゅりーがいた。 「はあはあ… むきゅ…」 まりさが急かしたのだろう。 体力の少ないぱちゅりーは顔を青ざめぜえぜえと必死で呼吸している。 「ぱちゅりー! ゆっくりしないではやくたすけてあげてね!!」 「むきゅ… わかってるわ!」 ふらふらとしながらもぱちゅりーがちぇんに近づく。 しかし、ぱちゅりーは傷を眺める以外に特に手を打たない。 いや。打てないと言った方が正しいだろう。 「むきゅ…」 「どうしたのぱちゅりー! なんなにもしてくれないの!?」 痺れを切らしたれいむが声を張り上げる。 なぜたすけてくれないのか? れいむは唯一期待していたぱちゅりーがなにも手を打たないことに怒りをあらわにする。 「は…が… にげ…」 「むきゅっ!?」 ――突然。消えてしまいそうなほど弱弱しい声で ちぇんが近くにいるぱちゅりーに何かを伝える。 「むきゅ! なんていったの!? もういっかいいってね!」 聞き取れなかった。 れいむの怒鳴り声に紛れて、ちぇんがなんと言ったのかぱちゅりーには聞き取れなかった。 そして… (らん…しゃま… さむいよ… くるしいよ… たすけて…よ………) 「ちぇん! しっかりしてよ!!」 思わずまりさが声を出す。 今まさに、ちぇんの大切なもの――命が抜け出してしまう。 まりさはそんな気がしたのだ。 そしてそれは正しかった。 「ちぇん…」 ぱちゅりーは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 なぜ、自分はちぇんを助けることはおろか、 ちぇんが最期、自分になんと言ったのか、それすら聞き取れなかったからだ。 そしてぱちゅりーは思案する。 ちぇんはなぜ、他所の群れのちぇんが自分達の群れの近くに来て なぜ、この平和な森の中であのような惨たらしい傷を負い、 そして、最期になんと言ったのか。 しかし、一言だけぱちゅりーには聞き取れた。 それは… 『はち』 ――翌朝 「ゆっくりしていってね!!」 「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」 いつもと変わらない朝。 親まりさは目覚めると同時に声を張り上げる。 その声は洞窟の中で反響し、家族の目を覚ます。 そしてまりさに「ゆっくりしていってね!!」と声を返す親れいむと子供達 いつもと変わらないはずの朝。 しかし、家族はみなどこか暗く元気が無いように見える。 特に一番下の子まりさは明らかに元気が無い。 しかしそれは仕方の無いことだと親まりさは思った。 突然目の前で起きた出来事。 子供達が初めて目にするリアルな死。 例えそれが初対面のゆっくりとは言え、子供達の心に深い衝撃を与えたことには変わりは無い。 昨日、ちぇんが死んだ後、親まりさは涙を潤ませながらちぇんの亡骸を土に埋めた。 そのそばでゆんゆん泣く子供達を親れいむが必死になだている。 ぱちゅりーは涙を浮かばせながら、一匹で先に群れへと向かった。 「…みんな!!」 突然、親まりさが家族に向かって声を張り上げる。 「みんな! …きのうはかなしいことがあったよ」 「ゆう…」 「けど、ずっとかなしんでちゃだめなんだよ!!」 まりさが続ける、その声はかすかに震え、目には涙が浮いている。 そして、家族みなが目に涙を浮かべている。 「どんなにゆっくりできないことがあっても、ずっとかなしんでたままじゃ、なにもいいことはおきないんだよ!! かなしいことはわすれちゃいけないよ、けど、それをずっとひきずってたままじゃだめなんだよ! このさきもつらくてかなしいことがいっぱいあるんだよ! だけど… みんなでちからをあわせて、ゆっくりあかるくげんきにいきていこうよ!!」 「ゆ…」 「そうだよ!」 一番上のれいむが親まりさに同調する。 「ちぇんはかわいそうだけど、いつまでもかなしんでちゃだめなんだよ! そんなこと、きっとちぇんものぞんでいないんだよ!!」 「れいむ…」 親まりさがわが子の言葉に思わず感動した。 いつの間に、れいむの子供はこんなに強くなったのだろう、 親として、あまりのうれしさに涙を流す。 「そうだよ! みんなでゆっくりしようよ!!」 「ゆ! おねーちゃんのいったとおりだよ! かなしいことをずっとひきずってたままじゃだめなんだよ!!」 「ゆ! そうだよ!」 「みんな…」 親まりさは幸せいっぱいの顔で子供達を見つめる。 この子達なら、この先もみんなでゆっくり暮らしていける。 まりさはそう思った。 その時。 ブブブブブ 「ゆ?」 おうちの出入り口の一番近くにいた子まりさが、外からなにか音がしていることに気が付いた。 子まりさ今まで何度も聞いたことのある音だ。 そして、子まりさが大好きな音だ。 「ゆゆ! むしさんがおそとにいるよ!!」 元気を取り戻した子まりさは大好物の虫を食べたい一心で おうちの出入り口にカモフラージュとして敷いている落ち葉を取り払い、ぴょーんと外に飛び出す。 しかし、その時になって子まりさは外の異変に気が付いた。 そして、気づくのがあまりにも遅すぎた。 「ゆ… ゆぎゃあぁあああぁあああああぁあああ!?」 「ゆゆぅ!?」 「ど、どうしたの!?」 外に飛び出した子まりさは突然襲い掛かったあまりの激痛に悶える。 始めは電撃が走ったような衝撃、そしてそれから一拍置き、 右のほっぺたに今まで感じたことのない痛みが走った。 「ゆ゛… ゆ゛…」 呼吸すらままならない。 それはまるで炎の針が直接当てられたような、死んでしまいそうなほどの激痛だ。 「ばりざぁ゛ぁ゛ぁ!! どうじたのぉおお!?」 気が動転した親れいむが、おうちを出た途端凄まじい悲鳴を上げて倒れたわが子を助けようとおうちを飛び出す。 そして子まりさに近づいた時、 れいむは子まりさの右ほっぺたに、見たことのない昆虫が止まっているのに気づいた。 「ひぎぃ! いだいよぉぉおおおおお!!」 子まりさがあまりの激痛に身を悶える、しかしその昆虫は決して子まりさから離れない。 親れいむは気づいた。 このむしさんがまりさを苦しめている。このむしさんはゆっくりできないむしさんだと。 そして 「まりさからはなれろおおお!! ゆっくりできないむしさんはゆっくりしないでしんでね!!」 親れいむの渾身の体当たり。 愛するわが子に当たらないよう、虫のみを正確に狙った一撃だ。 だが 「ゆびぃ!?」 体当たりは空を斬った。 親れいむが当たる直前、ゆっくりには反応できないような速度でその昆虫は子まりさから離れたのだ。 そして親れいむは勢いそのままに、森の中に突っ込み地面に激突してしまった。 「ゆ!」 その時、頭の後ろから聞きなれた高周波の音が親れいむの耳に届いた。 そして親れいむが振り向いたその瞬間… 「ゆぴいぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃぃ゙ぃ゙ぃ!?」 何かが後頭部に止まり、その一瞬後、親れいむのいままでの生涯で感じたことのない、精神を飲み込む激痛が親れいむを襲い掛かった。 「いだいいいいいいいい!! もうやべでえええええええええ!!」 親れいむは後頭部にいる何かに向かって必死に懇願する。しかし、痛みは一切の慈悲も無く親れいむの精神を削る。 「ゆ゙っ…ゆ゙っ…」 後頭部の何かが去った後も痛みは全く引かない、それどころか痛みはさらに全身を駆け巡り、親れいむの意識を刈り取った。 「まりさ! だいじょうぶ!?」 「ゆえーん! おねーちゃんがくるしんでるよぉー!!」 「ゆっくりげんきになってね! ぺーろぺーろ!」 異変に気づいておうちから親まりさと子供達が出てきて苦しんでいる子まりさに声をかける。 しかし子まりさは「ゆ゛っ ゆ゛っ」と呻き苦しむだけで事態は変わらない。 「ゆ!」 親まりさは子まりさの右ほっぺたがおかしい事に気が付いた。 子まりさの右ほっぺたには小さな穴が開いており、その周辺は異常に赤くなっていた。 それはまるで、昨日死んだちぇんと同じ症状だと親まりさは直感した。 「ゆゆ! だれかくるよ!」 「ゆ!?」 突然、親まりさのそばにいた子れいむが遠くを見て叫んだ。 「ゆ… ゆぅ!?」 子れいむの指し示す方向を振り向いた途端親まりさは青くなった。 親まりさの視線の先、 そこには体中の皮膚が破れ、そこから生クリームを流しながらみお必死にこちらに向かって這いずる村長ぱちゅりーがいた。 「ゆっくりだいじょうぶ!? むれのみんなはどうしたの!?」 「む゛… ぎゅう…」 親まりさは傷ついた村長ぱちゅりーを見た瞬間、またしても昨日のデジャブが蘇った。 まるで昨日のちぇんではないか。親まりさは急いでぱちゅりーの元に駆け出した。 「む… ぎゅうぅぅ…」 「…っ!?」 親まりさの目にいやおうなしに飛び込んで来た惨状。 ぱちゅりーは体中に裂かれたような傷と、無残にも突き刺された無数の穴が残されていた。 「どぼぢで… どぼぢでごんなごとに…」 もう嫌だ。今まで起きたことの無い惨劇の連続に思わず逃げ出したくなる。 しかしそれはできない。愛する伴侶と子供達を守ること、それこそが親まりさの使命だと思っているからだ。 「ゆ! そういえば…」 もはや動くことすら出来なくなったぱちゅりーを安全なおうちに匿うために押している時、 親まりさは最愛の伴侶が見当たらないことに気がついた。 「もうやべてええええぇぇぇぇぇえ!!? ゆっぐりできないぃぃぃぃ!!!」 「ゆ!?」 聞き逃すはずもない。今の悲鳴は間違いなく最愛の伴侶のものだ。 親まりさは焦りながらも冷静な対応を取った。 まずぱちゅりーをおうちの中に入れ、次いで子供達を全員おうちの中に入れた。 最初に悲鳴を上げた子まりさは動くことはおろか、いまだに意識すら戻らないため、 親まりさが口を使っておうちまで運んだ。子供達は皆気が動転してるのか、一切声も出さずにおうちの奥で震えている。 そして、子供達に決して外に出ないように忠告し、親まりさは先ほどの悲鳴の聞こえた森の中に駆け出した。 「れいむ! どこにいるの!? ゆっくりへんじしてね!!」 親まりさが必死に親れいむを探しまわる。しかしいくら探しても親れいむは見つからない。 「どぼじでえぇぇ!!? おねがいだがらへんじしてよぉぉおお!!」 どうしても見つからない。おうちに残した子供達が心配になってきた親まりさは、一旦帰ろうと思い始めた。 だが、次の瞬間。ブーンという嫌な羽音が奥の方から聞こえてきた。 「ゆぅ! なんのおと!?」 あまりにも連続して身に降りかかってきた悲劇の連続に、まりさの神経はゆっくりとしては異常なまでに過敏になっていた。 そのため、普段なら聞き逃すような小さな音にまで気が付いたのだ。 「むしさん…? ゆっくりしずかにしてね!! うるさくてれいむがみつからないよ!!」 その羽音は、いまだかつてないほどにまりさの神経を逆撫でた。 そしてまりさは怒りに身を任せ、その音のする方へ怒鳴った。しかし、それでも羽音は収まらない、 それどころか、まるで自分の方へと向かって来ているようである。 「ゆ… やめてね!! こっちにこないでね!! ゆっくりできないむしさんはむこうにいってね!!」 まりさは羽音だけで思わずたじろいてしまった。 まだ姿も見てもいないのに、まりさはまるでれみりゃに襲われているような錯覚すら覚えた。 なんで? いままで食べるために捕っていたむしさんに怖気ているの? 自分よりもはるかに小さくて、自分よりもはるかに弱いはずのむしさんに怯えている。 ――なんで? 自問自答を繰り返す。しかし、結論は出ない。 「ゆっ!!??」 まりさが混乱している間に、『彼ら』はまりさのすぐそばに来ていた。 そして、そのことにまりさが気づくよりも早く、『彼ら』はまりさの体中を食いちぎった。 「ゆぎいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!??」 全身を走る激痛により、まりさの思考は一瞬で止まってしまった。 まりさが理解できるのは一つだけ。それは、彼らは自分に群がり、自分を食べている事だけだ。 まりさの目を、足を、帽子も、髪の毛も、全てを。そして破けた皮膚から流れ出す餡子さえも。 「やめっ! やめでぇ! いだいぃいい!! やべでぇぇぇえええええ!!!」 ――まりさは目を食いちぎられる瞬間。一瞬だけ、『彼ら』の姿を見た。 それは黄色と黒をした、とてつもなくゆっくりできないむしさんだった。 そしてそのむしさんが何十匹もまりさの体に群がり、まりさを食べ始めてのだ。 『彼ら』が去った後。そこにはかすかに餡子が散らばっていた。 あとがきという名の言い訳 わかっているでしょうが『彼ら』の正体はスズメバチです。 もともとは山にいなかったのですが、ゆっくりを餌として生息範囲を拡大しているという設定です。 ちぇんの群れはぱちゅりーの群れよりも先にスズメバチに襲撃されました。 あのちぇんは傷つきながらもぱちゅりーの群れに危険を知らようとしましたが、群れの一歩手前で力尽きてしまいました。 群れの他のゆっくりは全滅しました。群れから少し離れた所をおうちにしていたあの家族は被害に遭うのが遅かったのです ぱちゅりーと子供達がこの後どうなったか、それはご想像にお任せします Q、スズメバチが餡子を食うの? A,その質問は勘弁して下さい。
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注意: 独自設定有り。 自己最長の容量なので、どこか変なところがあるかもしれないです。 それは、月のきれいな夜だった。 月の光は小高い丘にたたずむ二匹のゆっくりを照らしていた。 「とってもゆっくりしたおつきさまだね、まりさ」 「ゆ、ゆん・・・とってもゆっくりしてるんだぜ、れいむ」 二匹はその後しばらくの間、言葉を発することなく、ただ黙って月を見ていた。 だが、まりさが意を決した表情でれいむに話しかけた。 「ゆ、ゆぅ・・・れ、れいむ。・・・じつは、だいじなおはなしがあるんだぜ」 「・・・なぁに?まりさ。あらたまって・・・」 これからまりさが何を言おうとしているのか雰囲気で察したのだろう。 れいむは頬を赤らめていた。 「こ、これを、うけとってほしいんだぜ!」 まりさは帽子の中から一輪の黄色い花を取り出した。 そしてその花を、口を使って器用にれいむのリボンの横につけてあげた。 「ま、まりさ・・・・・・これって、その、つまり・・・・・・?」 意中のゆっくりに花を贈る。それは二匹のゆっくりが棲む群れの中では有名な求婚の儀式だった。 「れ、れいむ!ま、ま、まりさの・・・お、およめっさんに、なってほしいんだぜぇぇ!!」 まりさは目をつぶり顔を真っ赤にして、震えながらも精一杯の大きな声で自分の想いを打ち明けた。 二匹の間に再び沈黙が流れる。 返事が無いことに不安になり、まりさはゆっくりと目を開け、れいむの姿をみた。 そこには大粒の涙を流しているれいむの姿があった。 「ゆゆっ!?ど、どうしたのぜ、れいむ!?ひょっとして、まりさじゃ・・・いや、だった・・・のぜ?」 自分の想いは通じなかったのだろうかというまりさの不安を否定するように、れいむはブンブンと身体を振るった。 「ゆうん!ちがうんだよ!・・・・・・れいむ、とってもうれしいんだよ! ・・・・・・だって、まりさのおよめさんになるのは、ちっちゃなころからのゆめだったから!!」 「れ、れいむ!」 見つめ合う二匹のゆっくり。 その瞳に、もう月は映っていなかった。 なぜなら、二匹の瞳には互いの愛するゆっくりしか映っていなかったのだから。 ―――だから、気が付かなかった。 自分たちを照らす大きな月の真ん中にポツリと浮かんだ黒い影に。 その黒い影が自分たちに近づいていることに。 「れいむぅ・・・・・・」 「まりさぁ・・・・・・」 二匹の距離がゆっくりと近づいていく。 そして、二匹の唇が重なりあうかというその瞬間。 「うー!うー!」 突如、夜空に不気味な声が響き渡る。 「「ゆゆっ!?」」 二匹はその声の主を本能的に悟り、夜空を見上げた。 そこには、 「うー!うー!」 蝙蝠のような翼をもった笑顔のゆっくりが月夜の空に浮かんでいた。 憐れな獲物たちは畏怖の念を込めて、その名を叫ぶのだった。 「「れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」 『プラント』 二匹はれみりゃの姿を確認するや否や脱兎の如く逃げ出した。 流石に命に関わることではゆっくりなどできない。 「ゆひぃ!ゆひぃ!に、にげるんだぜぇぇぇ!!」 「ま、まってよぉぉ!まりさぁぁぁ!!」 まりさ種とれいむ種の性能の違いにより、逃げる二匹の距離は徐々に離れて行った。 だが、まりさはそれに気がつかない。 ちゃんとれいむが自分の後をついてきていると思っているからだ。 「ゆべしっ!」 れいむがつまづき、地面に倒れこんでしまう。 その隙を見逃すれみりゃではなかった。 倒れたれいむに覆い被さり、ガブリと鋭い牙を後頭部に突き立てる。 「ゆんやぁぁぁぁぁ!!ばでぃざぁぁぁ!!だずげでぇぇぇぇぇ!!!」 まりさはれいむの悲鳴に気づき後ろを振り向くと、れみりゃに捕らわれているれいむの姿が目に飛び込んできた。 「れ、れいむぅぅぅ!?」 れみりゃは恐ろしい相手だ。逃げなければ殺される。だがしかし、れいむを見殺しになどできない! なけなしの勇気を振り絞り、まりさは急いでUターンし、捕まったれいむを助けるべくれみりゃへと突進する。 だが一歩遅かった。 れみりゃはれいむを咥えたまま空へ舞い上がったため、まりさの突進は空振りに終わった。 「ゆわぁぁぁぁぁ!?おぞらをどんでるみだいぃぃぃぃぃ!?」 こんな時でもお決まりのセリフを吐いてしまうのはゆっくりの悲しいサガであった。 「れ、れいむをはなすんだぜぇ!」 当然だがそんな要求に従う訳もなく、れみりゃはまりさなど気にも留めず、れいむを連れて飛び去っていく。 「ま、まつんだぜぇぇぇ!」 だが、それで諦めるまりさではなかった。 愛しいれいむが連れ去られたのだ。なんとしでも助けねば! それだけの思いで、まりさはれみりゃの後を追って走り出した。 月明かりのおかげでなんとか見失うこともなく追跡することができたのは不幸中の幸いであった。 そしてまりさは、れみりゃが森の麓にある建物の中に入っていくのを確認した。 「ゆぅ!?あれは、にんげんさんのおうち?」 だとすると、あのれみりゃは人間の飼いゆっくりである可能性が高い。 ただでさえれみりゃは恐ろしい相手だというのに、そこに人間まで加わるとなるとほとんどお手上げ状態である。 まりさは人間がいかに恐ろしい存在であるかを充分理解していたのだ。 だから、どんなにあがいたところで自分ひとりの力だけではたかがしれている。 それでも、群れの仲間たちが力を貸してくれれば、あるいは何とかなるかもしれない。 「・・・れいむ、まっててね。すぐにたすけをよんでくるんだぜ!」 そんな希望を胸に、まりさは群れへと駆けて行った。 群れへと戻ったまりさは眠っていた仲間たちを叩き起こして事情を説明した。 「むきゅ、れいむが・・・」 「わかるよー、いちだいじなんだねー」 「たしかに、とかいはなじたいじゃないわね」 「ちーんぽ!」 群れの仲間たちは始め起こされたばかりの眠気眼であったが事の重大さに気付き始め次第に目が覚めていった。 「そうなんだぜ!だからみんなのちからをかしてほしいんだぜ!」 まりさは頭を下げて、れいむを助けてほしいと群れの仲間たちに訴えた。 だが・・・ 「むきゅ、まりさ・・・ざんねんだけど、れいむのことはあきらめるしかないわ」 「どぼじでそんなごどいうのぉぉぉぉぉぉ!?」 群れの長であるぱちゅりーの下した決断は冷酷なものであった。 「まりさ・・・たしかにとかいはなみんなのちからをあわせれば、れみりゃをたおせるかもしれないわ」 「むきゅ、そうね。・・・でも、そのれみりゃはにんげんさんにかわれているのよね?そうなってくると・・・」 「にんげんさんにはかないっこないんだねー、わかるよー」 「ぺにす!」 群れのゆっくりたちもまた、人間が最大の敵であることを理解していた。 「ゆ、ぐぅ・・・。で、でも・・・うまくれみりゃだけをたおせれば・・・!」 それでも食いさがるまりさに長ぱちゅりーは諭すように語りかける。 「かいゆっくりにてをだせば、かならずにんげんさんのほうっふくがまっているわ。 そうなればこのむれはこんどこそおしまいよ。まりさだっておぼえているでしょう? にんげんさんがどれほどおそろしいか」 「ゆぐ、ぐぐぐぐぐ・・・・・・」 かつてこの群れのゆっくりたちは人間の街に棲む野良ゆっくりだった。 だがある日、たった一人の人間によって街にすむ大量のゆっくりが殺されていった。 ある一匹のゆっくりが人間の飼っているゆっくりに手を出したのが原因だった。 激怒した人間は関係のないゆっくりも同じゆっくりであるというだけで虐殺していった。 そんな中、必死の思いで逃げ出し森へと生き延びた者たちがようやくたどり着いたのが今のゆっくりプレイスなのだ。 「だから、ぱちぇはむれのおさとして、みんなをきけんにさらすことはできないの。むちゅ、ゆっくりりかいしてね」 まりさは・・・・・・涙を流しながら下唇を噛むしかできなかった。 「むきゅ、みんな!れみりゃたいさくはあしたかんがえるとして、 きょうはとじまりをゆっくりしてもうやすみましょう。 ・・・・・・みょん、わるいけどまりさをおうちまでおくっていってあげてね」 「でかまら!」 うなだれたまま動こうとしないまりさを見かねたぱちゅりーは群れで一番腕の立つゆっくり、みょんに後をまかせた。 今のまりさを一人で家まで帰すのは不安だったからだ。 「ちーんこ!」 まりさはみょんにうながされ、ゆっくりと帰路についた。 「・・・・・・れいむ・・・・・・れいむぅぅぅぅ・・・・・・」 まりさは悲しかった。 群れの仲間が冷たかったからじゃない。 むしろ、こうなることはある程度予想できていたことだった。 何も出来ず、無力な自分が情けなくて、今こうしている間にもれいむがどんな目にあっているのかを思うと、 悲しくて涙があふれてきた。 「・・・・・・まーら」 付き添いのみょんはそんなまりさの様子を見かねたのか、まりさの前に立ち、少し強い口調で語り出した。 「やべのどりちんくらぶ!」 「ゆっ!?」 思いがけないみょんの言葉にまりさはハッっとなった。 「どりちん!どりちん!」 「・・・・・・そうだ、そうなんだぜ・・・・・・!」 みょんの熱い叱咤激励がまりさの心を揺さぶりかけた。 まりさの脳裏にれいむの笑顔が浮かぶ。 (れいむ、とってもうれしいんだよ!) 自分の想いに涙を流して喜んでくれたれいむ。 あの笑顔が忘れられない。もう一度、あの笑顔を見たい。 そのためだったら、自分は命を賭けることなど躊躇わない! 「ぎがどりるちんぽぶれいく!」 「ありがとうなんだぜ、みょん!おかげでかくごをきめたのぜ!」 自分の心に勇気が湧いてくるのを感じる。 そうだ、自分はこんなところで涙を流している暇はなかったんだ! 「くにをわかつふといいちもつ!」 「みょん、きもちはうれしいけど・・・・・・まりさはみんなにめいわくをかけるわけにはいかないんだぜ!」 「かりくび?」 「れいむをたすけにいくのは、まりさひとりでいくんだぜ!」 「いんけい・・・・・・ぜんりつせんまっさーじ!」 「ゆん!わかってるんだぜ!それじゃあ、いってくるんだぜ!」 れいむのいる場所へと駆けていくまりさ。その足取りに迷いは無かった。 「がいじんりきしのようなちーーんぽ!」 背後から聞こえたみょんの声援が心強かった。 まりさはれいむが連れていかれた建物にたどり着いた。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・やっとついたんだぜ。・・・・・・れいむ、まっててね。いまたすけにいくんだぜ」 まずは侵入口を探すため、この建物を観察する。 人間の家だとしても大きな部類だ。 だが外装は質素なものであり、馬小屋か何かと思う人もいるだろう。 少し高い場所に大きく開け放たれた窓を見つける。恐らくあそこかられみりゃが出入りしているのだろう。 「ゆぅ、あんなたかいところがあいてたって、おそらでもとべなきゃはいれないのぜ・・・・・・」 だからこそれみりゃには都合がいいのだろうが、こちらとらただの通常種だ。 空など飛べるわけでもなく、他の入り口を探すしかない。 「ゆゆ?なんだかはいれそうなスキマがあるのぜ!」 外壁をぐるりと回りながら入口を探していたまりさはほんの少し隙間のある壁を発見した。 「ゆぅ~!な、なんっとかはいれそうなのっぜ!ずーりずーり、ずーりずーり!・・・ゆはっ!はいれたのぜ!」 まりさはなんとか建物の中に侵入することに成功した。 早速れいむはどこかと辺りを探しはじめる。 「なんだかゆっくりできないかんじなのぜ・・・・・・」 天井には豆電球がいくつか吊るされており、明りがついていたので周りの様子を確認することができた。 そこは倉庫のような場所であり、いくつもの棚が所狭しと並んでいる。 その棚には透明な箱のようなものがズラリと並べられている。 「これはいったいなんなのぜ?」 まりさは身近な棚に置かれていた透明な箱の中を覗きこんだ。 中には黒い土のようなものが敷き詰められ、その周りには何か小さなものが蠢いている。 「・・・むーちゃ・・・むーちゃ・・・うー☆・・・うー☆」 「ゆひぃ!?れ、れみりゃ・・・っ!?」 ズササっと後ずさりながらも危うく叫びそうになる声を抑えた。 この箱の中ではれみりゃの赤ん坊ゆっくりが飼育されていたのだ。 他の箱の中を確認しても同じような中身だった。赤れみりゃが黒い土をむしゃむしゃと食べている。 「こ、このはこさんのなか、ぜんぶれみりゃなのぜ・・・?」 赤ん坊とはいえ、これほどの量のれみりゃが存在するなど、とてもではないがゆっくりなどできない。 こうなってくるとまりさはいてもたってもいられなくなり、人間やれみりゃに見つかることもお構いなしに 大声をあげ辺りを駆けずり回りながられいむを探し始めた。 「れいむー!どこなんだぜー!れいむー!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!・・・ゆばっ!?」 つい勢いあまって転んでしまう。 そのままコロコロと転がってゆき、一つの箱にぶつかることでようやく起き上がることができた。 「ゆたたた・・・い、いたいのぜ。でもまりさはくじけないのぜ!れいむをたすけるまでは・・・ゆあ?」 ふと、目の前の箱の中を見る。 そこには他の箱とは違い、赤れみりゃではなく一匹の成体ゆっくりが入れられていた。 といっても体中は傷だらけ、お飾りのリボンもボロボロの状態であり、とても無事な姿とは思えない。 ぐったりしているが死んではおらず、眠っているだけだと思われる。 「なんだかゆっくりしてないゆっくりなのぜ・・・」 思わずそうつぶやいてしまったが、すぐにその発言を後悔することとなる。 「ゆ?・・・ゆ、ゆっ!?そ、そのおはなさんは・・・!?ま、まさか、このゆっくりが・・・!?」 なぜなら、そのゆっくりのリボンにはまりさがれいむへプレゼントした黄色い花がつけられていたからである。 「れ、れいむぅぅぅぅ!!!」 すぐにでもれいむの傍に駆け寄りたかったが、透明な壁の存在がそれを許さなかった。 それでもまりさは諦められず、ベタっと箱に張り付きながら何度も何度もれいむへ呼びかけた。 「れいむ!れいむぅ!まりさなんだぜ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 まりさの声が届いたのか、れいむはゆっくりと目を覚ました。 「・・・・・・ゆぅ・・・だれ、なの?・・・・・・ひょっとして・・・まりさ?まりさなの!?」 「まりさはまりさだぜ!れいむ!ゆっくりたすけにきたのぜ!いっしょにおうちにかえるのぜ!」 絶望的だと思っていた助けがきた。 れいむの顔は一瞬パァっと明るくなったが、己の置かれた状況を思い出し、直ぐに沈んだ表情へと変化した。 「・・・ごめんね、まりさ。せっかくだけど、れいむは・・・ここからうごけないんだよ。 ・・・れみりゃにやられて・・・あんよさんがうごかないんだよ」 「それならまりさがおぶっていくのぜ!こうみえてもまりさはちからもちなんだぜ!」 「でも、とうめいなはこさんにいれられてるし・・・・・・」 「こんなはこさん、まりさがなんとかしてみせるのぜ! だからしんぱいすることはないんだぜ!ここからにげよう!そしていっしょにゆっくりしようね!」 れいむは自分を心配してここまで助けにきてくれたまりさの気持ちが嬉しかった。 だけど、その気持ちが強ければ強いほど、れいむは悲しくなった。自分はもう、まりさの想いに答えられないのだ。 「・・・やっぱり、だめだよ。れいむは・・・もうまりさとゆっくりできないよ」 「どぼじで!?」 ここまできたのに!今なら逃げられる!なのに、どうしてそんなことをいうの!? まりさには理解できなかった。だから、何度でも「いっしょにかえろう」とれいむに救いの手を差し伸べる。 だけど、れいむはその手を取らなかった。いや、取れなかったのだ。 できればこの真実をまりさには伝えたくない。 だけど、どれだけいってもまりさが引き下がらないのなら、この残酷な事実を伝えるしかなかった。 「・・・れいむのおなかのなかにね、れみりゃの・・・あかちゃんが、いるの・・・」 「・・・ゆぇ?・・・れ、れいむ?・・・それ、どういう・・・こと、なのぜ?」 言われてみれば、れいむのお腹がポッコリと膨らんでいるように見える。 れいむは、ポツリポツリと語り始めた。自分がここに連れてこられて、何をされて、どうなってしまったのかを。 まりさはその衝撃の事実に頭の中が真っ白になり、体中の餡子が凍りつくような感覚に陥った。 「う、うそだ・・・うそなんだぜ!どぼじで、どぼじでぇぇぇ!? ばでぃざは!でいぶをおよめざんにじで!ふぁーすとちゅっちゅさんじで!ずっぎりーいっぱいじで! あがしゃんいっぱいいっばいつぐっで!あがしゃんとまいにち、たのじく、ゆっくりあぞんで! じあわぜぇなゆんせいをおぐるはずだったのにぃぃぃ!それが、そでが、どぼじでぇぇぇぇぇ?!!」 「ごべんでぇぇぇ・・・ばでぃざぁぁぁ・・・ごべんでぇぇぇぇ!」 れいむはただ謝り、涙を流すしかなかった。 「でいぶぅ!れみりゃのあがじゃんなんて、どうでもいいでしょぉぉ!? そんなゆっくりできないあがしゃんなんてポイして、ばでぃざとゆっくりしたあがしゃんつくろぉぉぉ!」 「ゆぐ、ゆぐ、だめだよ、まりさ。 れみりゃのあかちゃんでも・・・・・・あかちゃんを、ポイなんて、れいむにはできない、よ。 「ぞ、ぞんなぁぁぁ!」 れいむ種は他のゆっくりと比べて母性が強いと言われている。 例えれいぽぅされてできた子供であっても愛情を持って育てることが多いという。 だから、れいむは群れに帰れない。れみりゃの子供など群れのゆっくりたちが認めるわけがないからだ。 「まりさ」 「・・・ゆ?れいむ?」 れいむは優しい声で愛しいまりさにゆっくりと語りかける。 「まりさは・・・れいむのことをわすれてね。 そしてほかのゆっくりとけっこんして、しあわせーなかていをきずいてね」 それは悲しい離別の言葉だった。 「どぼじでぞんだごどいうどぉぉぉ!?まりさ、れいむいがいのゆっくりとなんてけっこんしたぐないよぉぉ!」 「れいむね。いまはこのあかちゃんがうまれてくるのがたのしみなの」 「ゆ!?」 「あかちゃんはね、ゆっくりできるんだよ。それがまりさのあかちゃんじゃないのはざんねんだけど・・・ でも、うまれてくるあかちゃんはわるくないんだよ。 だから、あかちゃんにはゆっくりしてほしい。いっぱい、いっぱい、ゆっくりさせてあげたい。 れいむは、そうおもってるの・・・・・・」 その言葉をきいてまりさは思った。 ああ、やっぱりれいむは優しいな。こんな目にあってなお他ゆんを思いやれる気持ちがあるなんて。 これから先のれいむのゆん生は茨の道だ。 誰にも認められない子供を抱えて生きていくことがどれだけ大変なことか。 それほど苦渋に満ちたゆん生にまりさを巻き込みたくない。だから、自分を忘れて欲しいと言ったのだろう。 それに比べて自分はどうだ?自分のことばかり考えて、それでもれいむを愛しているなんていえるのか。 (どりちん!どりちん!) あの時のみょんの言葉を思い出す。そうだ、みょんの言うとおりだよ。 覚悟を決めていたつもりだったが、まだまだ覚悟が足りなかった。 真にれいむの幸せを願うなら何をするべきか。そんなことはわかりきったことじゃないか、まりさ! 「・・・・・・わかったんだぜ、れいむ。まりさもほんとうのかくごをきめたのぜ!」 「まりさ?」 「まりさもいっしょに、れいむのあかちゃんをそだてるんだぜ!」 それは、れいむにとって思ってもいない言葉だった。 「で、でも、れいむのあかちゃんはれみりゃなんだよ?」 「れいむのあかちゃんはまりさのあかちゃんなんだぜ!それいじょうでもそれいかでもないのぜ!」 「れいむは・・・けがされちゃったんだよ。・・・もう、じゅんっけつなゆっくりじゃ、ないんだよ?」 「そんなことないのぜ!れいむはきれいなのぜ!」 れいむの全てを受け入れよう。 世界の全てが敵になろうとも、自分だけはれいむの味方であろう。 それこそがまりさの真なる覚悟。 「れいむ、むれにかえれないならいっしょにあたらしいゆっくりぷれいすをさがすのぜ! そこで、まりさとれいむとあかちゃんでいっしょにゆっくりくらすのぜ!」 「ゆ、ゆぐ、ゆぐ・・・まりさ、まりさぁぁぁ!」 れいむは嬉しくて涙が止まらなかった。 拒絶されることはあっても、まさか受け入れられるなんてことがあるとは思わなかった。 れみりゃに攫われた時、自分はなんて不幸なゆっくりなんだろうと悲嘆した。 でも、今は違う。ああ、自分はなんて幸せなゆっくりなんだろう。まりさを好きになって本当に良かった。 れいむは心の底からそう思ったのだった。 (・・・ドクン) 「ゆゆっ!?いま、おなかのなかであかちゃんがうごいたよ!」 「きっとあかちゃんもよろこんでるのぜ!あかちゃん?ゆっくりしていってね!」 まりさは笑顔でれいむのお腹の中にいる赤ちゃんに話しかけた。 (・・・ドクン、ドクン) 「ゆっ!?」 (・・・・ドクン、ドクン、ドクン) 「ゆ、ゆ、ゆ・・・!」 「?どうしたのぜ?れいむ?・・・れいむ!?」 れいむは腹の中に違和感を感じていた。 お腹の中の赤ちゃんが動いている。だが動きが活発すぎる。 どうしてそんなにゆっくりしていないの?あかちゃん?ゆっくりしていってね? れいむがお腹の赤ちゃんに話しかけようとした瞬間、 「ゆがぁぁぁぁぁぁああああああああああ!?!?」 突如、腹部に激しい痛みを感じて苦しみの声をあげはじめた。 れいむの腹の中で何かが激しく蠢いているのだ。 「れ、れいむ!?しっかりするのぜっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 まりさは赤ちゃんが生まれそうなのかと、最初は思った。 だが、妹が生まれるところを見た事があるまりさにとって母の出産と今のれいむでは、 あまりにも状況が違いすぎることがわかった。 「でいぶぅぅ!どぼじだのぉぉぉ!?ゆっくりじでねぇぇぇ!?」 何が起こっているのか全く分からないまりさはただうろたえるしかなかった。 ガラスの壁に遮られ、ぺーろぺーろもすーりすーりもしてあげられないのだ。 「あ、あ、あが、じゃん!やめ、てね・・・!やめて、ねぇぇぇ!!」 「ど、どおじだのぉぉ!?でいぶぅぅぅ!!」 「ゆ、ゆゆゆあ、ああああ!お、おかあさんの、あんこさん!・・・たべないでねぇぇぇ!!」 れいむの体が後ろに大きく仰け反り、腹が異常なまでに膨らみ始める。 「ゆ、ぎぎ、ぐぐぐうっぐぐうぐうううぁあぁぁあああああ!!!!」 限界を超えた膨張に腹の皮膚が耐えられなくなりミチミチと裂け始めた。 それはまるで腹の中から何かが溢れ出そうとしているようだった。 「でいぶぅぅぅぅ!?」 「ゆ、ぐっっっばあああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 ついにれいむの腹は真っ二つに裂け、周囲のガラス壁に真っ黒な餡子をぶちまけた。 そして、れいむは餡子を撒き散らしながらゆっくりと倒れこんだ。 ビクンビクンと体を震わせている。辛うじてだが生きているのだろう。 だが、もはや死に体だった。 「ゆ、あああああ・・・なんなのぜ!?なんなのぜぇぇ!?」 もはやガラスの壁は餡子まみれとなり、まりさに中の様子を窺い知ることはできなかった。 「・・・うー☆うー☆」 何かの声が聞こえる。 「うー☆うー☆」 これは、さっきも聞いたことがる。赤れみりゃの声だ。 赤ちゃんが生まれたの?でも、れいむは? そんなことをまりさが考えていると、壁に付着していた餡子の一部がドロリと剥がれ落ちた。 まりさは、恐る恐るその隙間から中を覗き込んだ。そこには・・・ 「ゆわあああああああっ!!!?」 生まれたばかりの無数の赤れみりゃが、母であるはずのれいむの餡子をバリバリと貪り喰う姿であった。 「むーちゃ♪むーちゃ♪うー☆うー☆」 それは、先ほど見た他の箱の中と同じ光景。 あの箱に敷き詰められていた黒い土とは、ゆっくりの餡子だったのだ。 「・・・や、めて、ねぇ・・・あがじゃぁぁん・・・」 れいむがどんなに懇願しようとも、我が子の暴食を止めることはできなかった。 そして、次第にれいむの反応はなくなっていった。 れいむは・・・我が子に腹を喰い破られ・・・体を貪り喰われて・・・死んだ。 「・・・ゆ・・・・・・あ・・・・・・ああ・・・・・・!」 まりさは、ただ呆然とその光景を眺めるしかなかった。 「ジョワジョワジョワ~!なかなか面白い茶番劇だったぜぇ~」 突如、背後から聞こえてきた不気味な笑い声に驚き振り向くと、そこには灰色の作業服を着た一人の男が立っていた。 「に、にんげんさん!?どぼじでごごにぃぃ!?」 「そりゃあんだけ騒いでりゃ気付くっての」 男はれいむの餡子を貪る赤れみりゃの一匹を箱から取り出し、まりさの目の前に置いてやった。 「ほ~れ、れいむの赤ちゃんだぞ~。・・・どうした?可愛がってやれよ」 まりさはしばらくボーっとした顔で赤れみりゃを眺めていたが、 その能天気な笑顔と「うーうー」という鳴き声を聞いている内にピキィと顔を歪ませていった。 「ゆがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「うぴっ!?」 まりさは怒号と共に赤れみりゃをグシャリと踏み潰した。 「じねぇぇ!でいぶをごろじだれみりゃは、ゆっぐりじだいでじねぇぇぇ!!」 何度も何度も踏み潰し、赤れみりゃは原型も留めぬほど潰されてしまった。 「ジョワジョワ!『れいむのあかちゃんはまりさのあかちゃん』じゃなかったのかねぇ?」 最愛の存在を殺されたのだ。まりさが激怒するのは無理もないことだろう。 だが、れいむとまりさのやりとりを見ていた男にとって、まりさの激情はとても滑稽なものだった。 「・・・どぼじで」 「ん?」 「どぼじでごんだごどすどぅどぉぁぁ!?ねぇぇぇ!どぼじでぇぇ!?どぼじでなのぉぉぉ!!?」 まりさは涙を流して、男の足にしがみつくように「どぼじで、どぼじで」と泣き叫んだ。 「どおして、ねぇ。・・・いいぜぇ。夜勤は割と暇だし、暇つぶしにゆっくりと説明してやろう」 ゆっくりの「どおして」なんてただの鳴き声だ。 説明してやったところで理解などできないだろうし納得することもないだろう。 だが、男は暇つぶしの一環として、このまりさと会話してみるのも一興だと考えた。 「ここはな、れみりゃやふらんといった捕食種と分類されるゆっくりの生産工場なのさ」 野生の捕食種は通常種ほど数多く存在している訳ではない。 その為、捕食種を求める加工所やペットショップに対して捕食種を生産する業者は重宝されているのだ。 「そして、その捕食種を生産する上で重要なのが餌。つまりお前らだ」 「ゆゆっ!?」 「捕食種の餌は生きのいいゆっくりが最適とされている。まさに野生のゆっくりは最高の生餌という訳だな」 ただ成長させるだけなら生きたゆっくりを与えずとも人工的に作られたゆっくりフードでも問題ない。 だが、それでは捕食能力が備わらず、対野良ゆっくり用の番犬ならぬ番ゆっくりとして機能できない。 また、食材にするにしてもあまり旨味のない食材になってしまう。魚のように天然ものと養殖ものでは味が 違うのと同じようなものだ。 飼うにしろ、食べるにしろ、捕食種の品質に必要なのは活きの良さだ。 その為、養殖といえど自然と同じような環境を用意してやれば高品質の捕食種が生産できるのだ。 「ま、ここで生まれた赤ゆの大半はそのまま加工所やペットショップに送られるんだけどな。 流石にこれだけの数を育ててたらここらの野生ゆっくりなんてあっという間に壊滅だし。 そこらへんの調整はちゃんと考えてるから安心しろ」 「ゆ、ゆぅぅぅ・・・!」 街で野良として生きていた頃に感じていた人間の脅威から逃れ、野生で自由に生きていけることに喜びと誇りを 感じていたまりさにとって、自分たちの生活が人間の手によって調整されていたという事実はショックだった。 「捕食種をどうやって生産しているか。れいむがあんなことになった事にも関係してくることだ。ジョワジョワ!」 「ゆぐぐ、い、いいからはやくおしえるのぜ・・・!」 「まあ、そうあせるなよ。ゆっくりしていってね?ジョワジョワ!」 捕食種の繁殖方法は通常種とは似て非なるものである。 「お前ら通常種は子供を作るにはどうする?」 「そ、それはゆっくりできるゆっくりとすっきりーするんだぜ。そんなのじょうっしきなのぜ・・・」 「そうだな。そこは捕食種も同じさ。他のゆっくりとすっきりーする。 だが、その『他のゆっくり』というのが通常種と意味合いが異なる」 「な、なにがちがうっていうのぜ!?」 「・・・ふむ。それを説明するのは言葉よりも身を持って体験した方が解り易いだろう」 男はまりさを掴みあげ、別の部屋へと移動しはじめた。 「や、やめるんだぜ!まりさになにするんだぜ!?」 「なにするって・・・そりゃあ『ナニ』するに決まってんだろぉ。ジョワジョワ!」 そういって男は連れてきた部屋の真ん中にまりさをポイっと放り投げた。 「ゆべっ!」 顔面を打ち付けながらも起き上がったまりさが目にしたものは、 「うーうー」「うーうー」「もげーもげー」 「ゆわぁぁぁぁぁ!?れ、れみりゃだぁぁぁぁぁ!ふらんだぁぁぁぁぁ!!」 れみりゃやふらんといった捕食種が格納されているケージの数々だった しかも先ほどのような赤ん坊などではなく、成体の捕食種たちである。 男はケージの一つを開け、中にいたふらんを取り出した。 「捕食種がすっきりーの相手として選ぶのは同じ捕食種のゆっくりじゃあない」 そのふらんを手に乗せてゆさゆさと揺さぶり出した。 ゆっくりは振動させることによって発情するのだ。 「捕食種が選ぶすっきりー相手とは・・・お前ら、通常種なのさ!」 「う、うほぉぉぉー!もげ!もげー!」 発情したふらんはその情欲を目の前にいるまりさにぶつけるべく襲いかかる。 「ゆわぁぁぁぁ!?く、くるなぁぁ!!」 ふらんはその鋭い牙で逃げ出そうとしたまりさの背面を切り裂いた。 「ゆがぁぁぁ!いだいぃぃぃ!ま、まりさのもちもちおはなだがぁぁぁ!!」 ふらんの攻撃はまだまだ続く。 「うー!もげー!」 「いだいぃぃぃ!もう、やめでえぇぇぇぇ!!」 肌も髪も帽子も、ふらんの鋭い牙によってズタズタに切り裂かれていく。 存分にまりさを痛めつけたふらんはまりさの体から流れ出ている餡子をぺロリと舐めとった。 一見、ゆっくり同士が行う愛情表現や治療行為のように見えるかもしれないが、 ふらんにとってのそれはただの『味見』でしかなかった。 「うーうー!うまうま!」 ゆっくりは痛めつけることで餡子の旨味が増すという性質がある。 捕食種が獲物をいたぶるのはそれを本能で知っているからだ。 「捕食種にとって通常種なんざただの餌だ。それはすっきりー相手であっても同じこと。 お前らみたいに愛(笑)だの恋(笑)だのなんていう感情は存在しないのさ」 「ゆぎぃ・・・もうやだぁぁぁ、おうちかえるぅぅぅ・・・!」 「おいおい、まりさ。これからが『本番』なんだぜ? おい、ふらん!そろそろ頃合だろ。もうまりさちゃんも辛抱たまらんって顔してるぜぇ」 「もげぇ!」 ふらんは自分のぺにぺにをまりさのまむまむへズブリと突き刺した。 「ゆぎぃぃぃぃ!ま、まりさの・・・ばーじんさん、がぁぁぁ!!」 「・・・雌雄同体の饅頭のくせにバージンとかいうなよ。まじでキモい」 「もげ!もげ!も、もげ!うーーー!」 びゅる!びゅるびゅる! ふらんのぺにぺにから発射された精子餡がまりさのまむまむの中へと放出される。 「ゆ、ゆぐぅ・・・ぎぼじわるいぃ~。ま、まりざ、にんっじん、じじゃうよぉぉぉ・・・」 「・・・うー・・・うー・・・」 「よぉし、ご苦労さん、ふらん。疲れただろうからゆっくり休んでくれ」 すっきりーして満足したふらんを男は元のケージの中に戻してやった。 「ちなみに。ふらん種はまりさ種を、れみりゃ種はれいむ種を好んですっきりーする傾向があるらしい。 なんでなのかはよくわかってはいないがね」 そして、無理矢理すっきりーさせられ、れいぽぅ目状態のまりさを持ち上げる。 にんっしんして、ぽっこり膨れた下腹がびろ~んと伸びている様は茄子かヘチマを連想させた。 「ジョワジョワ、にんっしんしちゃったゆっくりはどんどん閉まっちゃうからねぇ」 男はまりさを透明な箱の中に入れ、先ほどのれいむがいる部屋へと連れて行き、 れいむの箱の前にまりさの箱を置いてやる。 れいむは今もなお体を赤れみりゃに貪り喰われ続けている。 「さて、これが最後の講義だぜぇ、まりさ。最後に捕食種の赤ん坊について説明しよう、ジョワジョワ」 「ゆぅぅ・・・・・・」 もはやまりさは身も心もボロボロで男の話を聞いているのかわからない状態だった。 そんなことはお構いなしに男は話を進める。 「さっきも言ったが捕食種にとって通常種はただの餌だ。これはどんな状況においても絶対だ。 例えそれが親子の関係であってもな。目の前で子供に喰われているれいむがその良い例だろ?」 「・・・どぼじで・・・あかちゃんが、おかあさんを、たべるのぜ。れいむは、おかあさんなんだぜ。 あかちゃんをゆっくりさせてあげたいっていってた、とってもゆっくりしたおかあさんだったんだぜ。 それなのに、それなのに・・・どぼじで、あがじゃんは・・・」 「それりゃお前、生まれた瞬間、大好物の餡子に囲まれてるんだぜ?普通食べるだろ」 「まりさはそんなことしなかったぜ!おかあさんのおなかのなかでとってもゆっくりしてたんだぜ!」 「だからそれはお前ら通常種の話だろ。生まれつきのハンターである捕食種にとって母体の餡子なんて餌 でしかないんだよ。だから捕食種は同じ捕食種じゃなく、捕食対象である通常種に種を植え付けるんだ ろうな。つまり、苗床ってことだ」 すっきりーする前に相手をいたぶるのは相手の動きを封じるだけでなく、生まれてくる子供に上質な餡子 を食べさせてやるためでもあるのだ。 そういう意味で言えば、捕食種にも愛情というものは存在するのだ。ただし、同族に限る! 「そんなわけでまりさ。今お前の腹の中にはふらんの子供がいる。 そいつらが覚醒した時、お前は目の前のれいむと同じく、腹の中から餡子を喰われて死ぬんだよ。 そうだなぁ、あと一、二時間もすれば子供は目覚めるだろう。楽しみだなぁ、まりさよぉ。ジョワジョワ~」 「い、いやだよ!まりさ、まだしにたく、ないんだぜ・・・」 「だったら祈るんだなぁ。腹の中の子供がふらんじゃないことに」 「ゆ?」 「捕食種に種つけされると9割の確率で捕食種を孕む。だが1割の確率で母体と同じ通常種を孕むこともある。 そうなると普通のにんっしんと同じ。つまり子供に腹の中から喰われることはないって訳だ」 1割といっても生まれてくる子供が全て通常種になる確率ではない。 生まれてくる数匹の内の1匹程が通常種になる確率が1割程度なのだ。 「ゆぅぅ!!まりさのあかちゃん、うまれてねぇぇ!ふらんのあかちゃんはうまれないでねぇぇ!」 わずかな希望にすがり、まりさは懸命に祈り始める。 だが、1匹程度が通常種であっても残りが捕食種であれば結果は同じ。 全ての子供が通常種だったなどというケースは確認されたことはない。 それは奇跡でも起きない限り、どんなに祈ったところでまりさの運命はもう決まっているようなものだった。 「さて、そろそろ仕事に戻るとするか。じゃあな、まりさ。せいぜいゆっくりしていってくれや」 「まりさのあかちゃん!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 もはやまりさは男の声など聞こえていなかった。ただひたすら、無駄な祈りを続けているだけだ。 そんな必死のまりさを嘲笑いながら男は部屋から出ていった。 「ゆ、ゆっくり・・・ゆっぐりじでいっでねぇぇ!ばでぃざのあがじゃぁぁん!」 うー・・・うー お腹の中から赤ちゃんの声が聞こえた。 <了> 前作: anko2086_隠し味 挿絵:車田あき
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『だいりしゅっさん 中編』 75KB 制裁 不運 妊娠 同族殺し 群れ ゲス 希少種 自然界 人間なし ナナシ作 前回のあらすじ 長候補であり狩りの名人でもある優秀なゆっくりであるまりさ。 しかしそのまりさの番であるありすは、子供の生むことのできない不能ゆっくりであった。 おちびちゃんができずに悩む日々。 そこでまりさは、れいむに代わりに子供を産んでもらうという代理出産という方法を思いつく。 この提案をもちかけたれいむは、報酬の食料につられ、これをよろこんで承諾。 あとはおちびちゃんがうまれるのを待つのみとなった。 そして出産当日。 生まれてきたたおちびちゃんに心を奪われたれいむは、まりさとの約束を反故。 群れの広場にて、まりさにレイプされ、おちびちゃんを売と迫られたと嘘の主張をする。 タイミングの悪さから、その話を信じた群れのゆっくりによって捕まってしまうまりさ。 さてこの先まりさの運命は? そしてこの事件を機に暗躍する群れのゆっくりたちの運命はいかに。 ここはとあるゆっくりの群れ。 今、この群れのゆっくりたちの間では、ある事件の話題で持ちきりだった。 「ゆゆ!あのはなしきいた?」 「まりさとありすのつがいのことでしょ!きいたきいた!」 「ゆー!あのまりさたちがあんなことするなんて、ちょっとしんじられないよ!」 「そうかしら?ありすは、いつかなにかしでかすんじゃないかとおもってたわ! だいたい、あのありすはむかつくのよ!むれいちばんのびゆっくりとかいって、おたかくとまっちゃってさ!」 「そうなのぜ!まりさにしたって、ちょっとかりがうまいからって、りーだーかぜふかしすぎだったのぜ! あのていどのこと、このまりささまがほんきになれば、かんたんにできることなのぜ! まあ、しょせんは、げすのばけのかわがはがれったってことなのぜ!ゆっへっへっへっへ!」 わいわいと賑わうゆっくりたち。 ゆっくりたちが話題にしている事件とは、もちろんまりさとれいむのおちびちゃん買収問題のことである。 昨日の広場での騒動から一夜明けて今日。 群れ内では、まりさとありすの番がおちびちゃんを奴隷売買しようとしていた! という衝撃的ニュースは、またたくまに群れ中に広まっていたのだ。 そして、その詳しい内容とは以下のようなものである。 昨日の夕方ごろ、群れの広場にて、乱闘騒ぎがあった。 一匹のゲスまりさがれいむに襲い掛かったのである。 幸いそのゲスまりさはその場にて取り押さえられ、被害者のれいむにはけがはなかった。 さて、これだけ聞けばただの暴行事件であるが、実はこの事件の裏には衝撃の事実が隠されていたのだというから驚きだ。 まず犯人であるが、これがなんと群れ一番の狩りの名人として知られ、次期長候補としても有力だったあのまりさなのである。 これだけでも十分驚きに値する内容であるが、まだまだこんなものは序の口にすぎない。 実はこのまりさ容疑者は、ここ最近より不審な行動をが目立ち、群れのみんなを怯えさせていた。 ある日突然まったく狩りをしなくなったと思ったら、これまたある日突然すさまじい勢いで狩りを再開しだすという、まったくゆっくりできない奇行を繰り返していた。 理由を尋ねても、答えは意味不明なものばかり。 異常行動ここに極まりである。 そして、まりさの異常行動はエスカレートしていき、ついには一線を越えてしまうときがきた。 一体何をトチ狂ったのか、この群れに住んでいる何の罪もないれいむ無理やりレイプし、にんっしんさせたのだ。 これだけでも許しがたい行為だというのに、まりさ容疑者のゲス行為はこの程度では終わらない。 まりさ容疑者はなんと、そのにんっしんさせたおちびちゃんを食料により買収し、奴隷にしようと画策していたのだ。 これはこの群れ始まって以来未曾有の大犯罪である。 しかしこの世に悪は栄えないもの、ましてやこの群れは善良なゆっくりたちが住む正義の群れ。 この悪意に満ちたまりさ容疑者の企みは、被害者であるれいむの勇気ある告白により、白日の下にさらされることになる。 れいむはなんと、広場のゆっくりたちの前で今までのまりさの悪行を盛大に暴露したのだ。 これにはまりさ容疑者もまいったのか、実力行使でれいむを止めようと襲い掛かった。 だがここで颯爽と登場したのが群れ一番の勇者幹部みょんだ。 幹部みょんの活躍により、まりさ容疑者はあっさりと撃退される。 しかし往生際が悪いまりさ容疑者は、ここで被害者のれいむが嘘をついている、などとふざけたことを言い出した。 本来ならば被害者であるれいむを加害者に仕立て上げようとするという、とんでもないゲスな行為に出たのだ。 だがこのゲス特有の悪あがきも、群れ一番の知恵者である幹部ちぇんによってあっさりと封じられることとなる。 幹部ちぇんの鋭い指摘により進退窮まった容疑者まりさは、みじめにも逃亡をはかろうとしたが、幹部みょんのダメ押しの体当たりによりあっさり御用となった。 なお、この騒動の後に、二匹の幹部主体によって、容疑者まりさのおうちの家宅捜索が行われた。 それによって、おうちに潜伏していた容疑者まりさの番である容疑者ありすを拘束。 さらに徹底的な捜査により、おうち内に隠された大量の食料を発見、押収した。 越冬次期でもない今現在で、これだけの量が貯蓄されているのは明らかに異常であり、これはおちびちゃんの奴隷売買のための食料であることはほぼ間違いないと思われる。 この動かぬ証拠によりまりさ容疑者の容疑はほぼ確定し、貯蓄されていた食料の量から、今回の件が明らかにならなければ第二第三の犠牲者が出ていたのは間違いないと推測される。 さらに、今までのまりさ容疑者の様子についても、むれの一部のゆっくりたちは、 実は以前自分もレイプされそうになった、自分のおちびちゃんが誘拐されそうになった、野獣の目線で見られていた。 などなど、その犯行を裏付ける有力な証言が続々と上がっており、 こんな危険なゆっくりを今まで放置していたのは、長ぱちゅりーの怠慢ではないか?という意見もあり、早期退陣を求める声も上がっている。 また、この事件を告発した勇気ある被害者のれいむを群れの幹部に、さらには解決へと導いた幹部みょん、幹部ちぇんのどちらかを次期長にという声が群れ内で強まっているようだ。 以上、群れの噂より抜粋。 所変わってここは長ぱちゅりーのおうち。 「……むっきゅー!まいったわねー!」 長ぱちゅりーは、おうちで疲れようなたため息をついていた。 まったくめんどうなことになった、とでも言いたげな様子である。 「だいりしゅっさんだなんて、まさかこんなことになるとは……。 まったくどうしたものかしらねぇ……」 唸る長ぱちゅりー。 長ぱちゅりーが頭を悩ませている原因。 それはもちろん、昨日の事件のことである。 長ぱちゅりーがこの事件のことを初めて知ったのは昨日の夜のことである。 その夜、長ぱちゅりーのところに、例の容疑者まりさが、幹部みょん幹部ちぇんによって連行されてきたのだ。 ただならぬ様子で突然やってきたこの三匹に、長ぱちゅりーは驚きを隠せなかった。 「むっ、むきゅ!いったいどうしたの!これはなんのさわぎなの!」 「おさあああああああああああああああ!ちがうんだよおおおおおおおおおおおおおおお! まりさは!まりさはああああああああああああああああ!ただおちびちゃんがほしくてえええええええええええ!」 「うるさい!だまってるみょん!」 ドン! 「ゆびぃ!」 長ぱちゅりーに向かって、必死に何かを訴えようとするまりさを小突き、幹部みょんは黙らせる。 「なっ、ちょっとやめなさい!いったいこれはどういうことなの!せつめいなさい!」 幹部みょんの有無を言わせぬ暴力行為に、強い口調で言う長ぱちゅりー。 いったいこれはどうしたというのだ。 「わかるよー!こいつらはげすゆっくりで、ざいにんなんだよー!このぐらいとうぜんなんだよー!」 隣にいる幹部ちぇんが面倒くさそうに答えた。 「ざいにん?まりさたちがなにかしたというの!」 「みょん!あきれたもんだみょん! おさのくせに、そんなこともしらないのかみょん! こいつらは、おちびちゃんをどれいにしようとした、ごくあくゆっくりだみょん!」 「わかるよー!でもこのじけんは、おさがのんきに、ゆっくりしているあいだに、ちぇんがかいけつしちゃったんだねー!」 「みょん!なにいってるみょん!このじけんをかいけつしたのは、みょんだみょん!かんちがいしないでほしいみょん!」 「「ゆぐぐぐぐぐぐ!」」 いがみ合う幹部みょんと幹部ちぇん。 まーた始まったな、と長ぱちゅりーは思った。 この二匹はいつもこうなのだ、ことあるごとに争って、どちらが次の長にふさわしいかの口論を始める。 しかし、今はそんなことはどうでもいいのだ。 大事なのは、まりさの件だ。 おちびちゃんを奴隷にしたとかなんとか、一体どういうことだ? 「まりさ、ほんとうなの? おちびちゃんをどれいにしようとしたなんて……」 「ちっ、ちがうんだよおおおおおおおおおおおおおおおお! まりさ、おちびちゃんがほしかっただけだよおおおおおおおおお! それでれいむにおねがいしたんだよおおおおおおおおお! それなのに、れいむが!れいむがあああああああああああああああああああ!」 「???」 まりさの発言はいまいち要領を得なかった。 よって、あたりまえだが広場での事情をしらない長ぱちゅりーには何のことかさっぱりである。 「みょん!まだいうかみょん!」 「わかるよー!いいかげんあきらめるんだねー!」 ビタン! 「ゆべし!」 さっきまでいがみ合っていたはずの幹部みょんと幹部ちぇんが、挟み込むようにしてまりさをおし潰し、黙らさせる。 普段は仲が悪いのに、こういう時だけは妙に息があっている。多分それは彼らの底に潜む本質が同じものだからだろう。 本人たちは決して認めないだろうが。 「ちょっと!だからぼうりょくはやめなさいっていってるでしょ! まだぱちぇがはなしているとちゅうなのよ!」 先ほどからの幹部みょんたちの度重なる横やりに、やや不機嫌な声を上げる長ぱちゅりー。 「みょん!おさにはなすひつようなんてないみょん! このじけんは、みょんがとりしきるみょん!」 「なんですって!」 「わかるよー!おさは、ちぇんのてがらをよこどりしようったってそうはいかないよー! いちおうおさだから、ほうこくはするけど、くちだしはさせないよー! これから、まりさのおうちに、しょうこあつめにいくんだから、じゃましないでねー!」 「ちょっと、あなたたち!まちなさい!」 言いたいことだけ言うと、まりさをつれてさっさとおうちを出ていく幹部みょんと幹部ちぇん。 どうやら、まりさのおうちへと向かうようである。 慌ててその後を追う長ぱちゅりー。 しかしこの群れでは事件がおきればその判断は基本的に長にゆだねられるというのに、この幹部ちぇんと幹部みょんの態度はどうだ。 まるで長などいらない、自分たちがそのかわりであるといわんばかりである。 いや、実際そうなのかもしれない。 今までもこの幹部二匹は、ことあるごとに長の地位を狙って行動を起こしてきた。 今回のこの事件でも、自ら主体になって事件を解決することにより、次期長としての地位を確立させようとしているのかもしれない。 そのためにあえて長ぱちゅりーを積極的に事件に介入させまいとしているのではないか? 移動中長ぱちゅりーはそう邪推せずにはいられないかった。 長ぱちゅりーたちがまりさのおうちへついてからは、事件は予定調和のようにトントン拍子で話が進んだ。 まりさのおうちの周りは、すでに幹部みょんと幹部ちぇんの子飼の部下たちによって包囲されている状態であり、長ぱちゅりーたちの到着と同時に捜査が開始された。 まず、おうち内で一体これは何事かと怯えていたありすが引っ張り出されてきた。 そして次に、おうちの倉庫に入れてあったすべての食料が運び出された。 「わっかるよー!げんじゅうにかくしてあったしょくりょうをみつけたよー! これはうごかぬしょうこなんだねー!」 「みょん!はんにんのいちいんで、おうちにせんぷくしていたありすを、とうとうつかまえたみょん! これでじけんはかいけつだみょん!」 これらを前にして、幹部二匹は鬼の首でもとったように勝ち誇った声を上げていた。 別に食料は隠されておらず、ただ単におうちの奥の食料庫に入っていただけだし、ありすにしても、ただ単におうち内にいたというだけの話なのだが、 幹部二匹にしてみれば、食料は厳重に隠されていたし、ありすは捜査の目を逃れるためにおうち内にひそかに潜伏していたということらしい。 「なっ、なに?これはいったいどういうことなの!おさ!いったいこれはどうなってるの!」 わけがわからないのはありすだ。 いつものように狩りを終え、おうちに帰ってしばらくすると、おうちの周りを数匹のゆっくりたちによって完全に包囲されてしまったのだ。 いつになってもまりさは帰ってこないし、周りを囲んでいるゆっくりのせいで、出るに出られぬ状況の中、 ついには突然やってきた幹部たちにより外に連れ出され、さらにおうちの食料まで持ち出されてしまったのだ。 外に出たら出たで、番のまりさは捕まってるし、なぜか自分は犯罪者扱いだ。 まったく何がなんだかわからない。 まりさのそばにいた長に必死になって説明を求めるありす。 「しらじらしいえんぎはやめるみょん!このげすが!」 「わかるよー!このちぇんのめはごまかせないんだねー!」 「はぁ?いったいあんたたちなにいってるの!わけがわからないわ!」 突然ゲス呼ばわりされて激昂するありす。 彼女ににしてみれば、この事態はまるで身に覚えのないものだからそれも当然だろう。 だがこのありすの態度は、幹部みょんの癇に障ったようだ。 「みょん!したてにでてれば、いいきになって! げすはせいっさいだみょん!」 「やめなさい!みょん!」 幹部みょんがありすにも暴力を振るおうとしたが、それはさすがに長ぱちゅりーがキツく制止させた。 群れの長としても、これ以上のやりたい放題を許すわけにはいかなかった。 「みょんもちぇんもいいかげんにしなさい!さっきからなんなの、このごういんなそうさは!まりさたちのはなしもろくにきかないで! これよりさき、このじけんは、むれのおさのなにおいて、このぱちぇがあずかるわ!いいわね!」 「ちっ、わかったみょん!」 「ふん、しょうちしたよーっだ!」 幹部たちは不満そうだったが、一応長ぱちゅりーの指示にしたがった。 流石に今の段階で、おおっぴらに長に逆らうのはまずいと判断したのかもしれない。 とにかくこれで事件の指揮権は、幹部たちから長ぱちゅりーへと移ったわけである。 長ぱちゅりーはまず、まりさとありすの二匹に、とりあえず今日のところはおとなしく群れの独房へと移動してくれないかと提案した。 なにしろ突然のことで、自分もまだ事件の全容を完全に理解してはいないのだが、どうやらまりさが広場でれいむに襲い掛かったということが事実な以上、 このまま放免というわけにはいかない。 よって暫定的な処置として、一時的な拘束はやむを得ないというわけだ。 この提案には仕方なしということで、まりさとありすの二匹とも頷き、了承した。 また押収した大量の食料についても、このまま主のいないおうちに残しておくのも危険というこてで、一時的に群れの共有倉庫へと移されることになった。 こうして事件はひと段落し、その日は解散ということになったのであった。 ……というのが昨日の夜の出来事。 そして一夜明けて今日。 「……むっきゅー!まいったわねー!」 長ぱちゅりーは事件のことについて、すっかり頭を悩ましていたのだった。 正直これはかなりやっかいかつデリケートな問題であり、複雑な要素が絡み合っているのだ。 とにもかくにも、まずやらなければならないことは、事件の全貌を正確に把握することである。 長ぱちゅりーは昨日あれからまりさとありすから詳しい話を聞いていたので、おおよその事件のあらましは理解できていた。 それと幹部みょんたちの報告や、れいむの主張などを合わせて考えると大体こんな感じになるのではないだろうか。 まず、れいむとありすは、おちびちゃんができない苦しみから代理出産という方法を思いつき、その母体にれいむを選んだ。 そしてまりさはれいむと交渉へと望む。 ここまではいいだろう。だが、ここからは先はまりさとれいむの双方の主張が大きく食い違うことになる。 まりさの主張では、双方の合意があり、食料はれいむに対する報酬であったとしているのに対して、れいむの主張ではれいむは無理やりレイプされ、 さらに食料はおちびちゃんを奴隷として買い取るものであると言っているのだ。 いまのところ群れの動向としては、れいむの主張を真実だという説が有力でり、まりさを犯罪者扱する傾向にあるようだ。 やはり昨日の広場での騒ぎの要因が大きいのだろう。 とくに、幹部みょんと幹部ちぇんは、それが真実であることを前提として行動しており、強引におうちを捜査するなどかなりの無茶をしている。 だが長ぱちゅりーは、恐らくれいむの主張であるレイプされたことや、おちびちゃんを奴隷にするという話はでっち上げではないかと予想している。 というのもいくつか理屈に合わない点があるからだ。 今ここで仮にまりさがれいむをレイプしたと仮定しよう。 と、するとその目的はなんだろうか? れいむに欲情して?いいや違う、れいむは別段美ゆっくりでもなんでもない。 その理由は考えるまでもなく、おちびちゃん欲しさのためだ。 つまりレイプという行為が目的ではなく、その先にあるおちびちゃんが目的だったと推察されるわけだ。 そしてその後、生まれたおちびちゃんを食料で買い取って奴隷に……というのがれいむの主張なのだが、おかしいと思わないだろうか。 ゆっくりを無理やりレイプし、おちびちゃんを奴隷にするようなゲスゆっくりが、わざわざ食料の報酬を支払うだろうか? そんな外道なゆっくりなら、おちびちゃんは無理やり奪っていくのではないだろか? 最悪母体であるれいむは用済みにあったら殺してしまってもいい。 いやむしろ、殺した方が後々騒がれなくて断然楽なはずなのである。 理由はもう一つある。 それは生まれてきたおちびちゃんの大きさだ。 長ぱちゅりーは直接目にしてないが、れいむが広場に連れてきというおちびちゃんは赤ゆっくりサイズではなく子ゆっくりサイズだったという。 さらにはその場にいたのは一匹だけだったそうだ。 生まれた直後で既に子ゆっくりサイズかつ、数も少ないということは、れいむのにんっしん方法は間違いなく胎生にんっしんだったはずだ。 とするとこれもおかしい。 おちびちゃん目当てでレイプしたならば、なぜわざわざ植物にんっしんでなく、胎生にんっしんにしたのか? よく考えるまでもなく、おちびちゃん目当てなら植物にんっしんのほうが効率がいい。 たくさん、しかもすぐに生まれるからだ。 よってまりさがゲスならば、れいむをレイプしたとき間違いなく植物にんっしんさせたはずなのだ。 だが実際にはれいむは胎生にんっしんだった。これは数少ない確定している事実だ。 胎生にんっしんの場合は、生まれるまで時間がかかるし、なによりにんっしん中は母体が全く動くことができない。 つまりレイプされてから出産するまでの間、れいむは一切狩りには出かけられなかったはずなのだ。 その間、れいむの世話はいったい誰がしていたのか? もちろんそれはまりさであろう。 つまりまりさは、ゆっくりを無理やりレイプし、おちびちゃんを奴隷にするようなゲスゆっくりでありながら、胎生にんっしんしたれいむの世話をきっちりし、 さらには大量の食料という報酬もきちんと支払うようなゆっくりだったということになる。 これは一般的なゲスの思考からは、ずいぶんとかけ離れたところにあると言えるだろう。 どうにも行動がちぐはぐなのだ。 一方ではれいむを脅し、しかしもう一方では甲斐甲斐しく世話を焼く姿を想像すると、滑稽ですらある。 以上のことより、長ぱちゅりーはレイプ行為や奴隷の話は実際にはなかったのではないかと予想していた。 つまりこの話はまりさが強引に押し通したのではなく、かなり高い確率でまりさとれいむの間には一定の合意があったはずなのだ。 まりさは、れいむにおちびちゃんを生んでもらうように頼み、そしてその頼みをれいむは承諾した。 そういう話なら報酬の食料も、胎生にんっしん中の世話についても、不思議でもなんでもない。 初めからそういう約束だったのだから、辻褄が合うというものだ。 だが恐らくおちびちゃんが生まれた直後、れいむはまりさを裏切った。 何か心変わりがあったのか、それとも初めからまりさをはめる腹積もりだったのかはわからないが、とにかくれいむは最高のタイミングでの裏切りを決行した、 というのが昨日の事件の真相というわけだ。 無論今までの話はすべて長ぱちゅりーの推察に過ぎず、具体的な証拠はなにもない。 れいむの話の方が真実であり、まりさは通常ではあり得ないタイプのゲスだったという可能性ももちろんある。 が、長ぱちゅりーは九割方これが真実ではないかと睨んでいた。 「むきゅ!とはいったものの……。 こまったわねぇ……」 こうして真相はある程度推測することができたのだが、事態はまるで解決していない。 いやむしろ複雑化してしまったとすら言える。 問題なのはむしろこれからなのだ。 とりあえずの大問題としてまりさたちの処遇をどうするかという問題があるが、これが容易くはない。 そもそも群れの掟ではまりさたちがとった方法、つまり代理出産を禁止する法は存在しないのだ。 というか代理出産という概念が既にゆっくりには存在しない、つまり完全に想定外の事態というわけだ。 基本的に群れのゆっくりは、掟で禁止されていること以外ならば何をしても罪に問われることはない。 無論今回の代理出産もその例にもれることはない(だからこそまりさたちはこの方法を実行したのであろうが)。 つまり代理出産ということに関してなら、まりさたちは無罪放免ということになるのだ。 だが一方で、奴隷の所持、およびその取引を固く禁じるという掟は存在しており、これを破ったゆっくりはせいっさいの対象となる。 つまりれいむが主張しているように、奴隷売買の容疑としてならまりさたちを裁くことが可能なのである。 よってこの問題の最大の争点は、まりさの行為は代理出産なのか奴隷売買なのか、 もっと言うと、まりさの主張が正しいのかれいむの主張が正しいのかという争いになるわけだ。 一見するとこれはそれほど悩むような大した問題ではないように思える。 というのは、長ぱちゅりーはこの事件はれいむが虚偽の主張をしているということをほぼ見抜いており、 まりさたちに奴隷売買の意思がなかったであろうことは、ある程度の推測がついているからだ。 それらの説明を順を追って群れの皆にしたうえで、矛盾点についてれいむに直接問いただせば、れいむがボロを出す可能性は高い。 そしてれいむが嘘をついていることを群れの皆が知れば、状況は一転するだろう。 れいむの評価は事件を告発した勇気あるゆっくりではなく、約束を破りさらには嘘をついて、まりさをハメようとしたゲスゆっくりへと転落する。 まりさたちへの誤解は解け無罪放免、おちびちゃんも戻りめでたしめでたし……。 と、いうふうにはならないのがこの問題の難しいところなのである。 何度も言うが、事はそう単純ではないのだ。 まずまりさの罪についてだが、これは代理出産で無罪か奴隷売買で有罪かの二択ではない。 第三の選択肢である代理出産でも有罪というパターンが存在する。 これはどういうことかというと、代理出産という行為=奴隷売買ではないかという考え方だ。 まりさたちの真意がどであろうと、また事前にれいむとの合意があろうがなかろうが、 まりさたちの行った、れいむに食料を渡し、そのかわりおちびちゃんを得るというのは奴隷売買に他ならないという理屈である。 もしこの解釈が適応されれば、まりさの言い分が正しいか、れいむの言い分が正しいかということはどうでもよくなる。 まりさの行った奴隷売買という大罪に比べれば、れいむがついた嘘などは、ちっぽけなものとして無視されることだろう。 これは多くのことを頭で同時に処理できないという、ゆっくり特有の理屈だ。 もはや真実はどうでもよいものとなってしまうのである。 結果として一応は何も罪を犯していないはずのまりさたちが制裁され、まりさを裏切り、また群れのみんなに嘘をついたれいむがお咎めなしという、 ゲス大勝利展開という悲劇が起こり得るのである。 さらに立ちはだかる障害がもう一つある。 それは、まりさたちが、代理出産を行うにいたった経緯の問題だ。 真相を究明しようとして、長ぱちゅりーが群れの皆に自分の考えを聞かせる場合、 前提として、ありすが不能ゆっくりであり、それゆえおちびちゃんがどうしても欲しかったという背景を説明しなければならない。 それを説明しないことには、まりさの不審な行動を皆に合理的に説明することは不可能だからだ。 しかしそれを説明するということは、当然不能ゆっくりの原因が、人間によって引き起こされたということまで話が及ぶわけである。 これは長ぱちゅりーが最も恐れていた事態に相当する展開であることは言うまでもない。 いやむしろ、初期よりもずっと事態は悪化している。 なぜなら、この事件は今では群れのすべてのゆっくりたちにとっての一大関心ごとに発展しているからだ。 群れの誰もがこの事件の一挙一動に注目している。 そんな今の状況にあって『群れ始まって以来の一大事件、だがその裏には人間の影があった』なんてことになれば、反人間思想はあっという間に群れを覆うだろう。 最悪に程があるというものだ。 おまけに頭が痛い問題として幹部みょん幹部ちぇんの存在もある。 事件が起こってから一日しか経っていないのにもかかわらず、群れのすべてのゆっくりが当然のように事件のことを知っているのはいくらなんでも異常だと思っていたら、 どうやら昨日の夜から今日にかけて、幹部みょんと、幹部ちぇんが、子飼のゆっくりたちを動員し、この事件を自分たちの手柄として宣伝しまくっているらしいのだ。 どうりで、群れを伝わってる噂がやたら幹部みょんや幹部ちぇんを称える内容のはずである。 しかもどさくさに紛れて、さりげなく自分の長退陣の煽りまで入っている。 まったくいちいちやることがせこいというものだ。 だが、これで合点がいったこともある。 いちいち言うまでもなく幹部みょんと幹部ちぇんの目的は長になることであろう。 事件に対する過剰なまでの自己アピール、長である自分をないがしろにするかのうような捜査の数々、 さらには一時期は群れの長候補として名が上がっていたまりさを、証言もろくに聞かず徹底的に犯人扱い。 これらすべての行動が、それを裏付けている。 おそらく昨日の事件の際、偶然その場に居合わせた幹部みょん幹部ちぇんは、これ幸いとこの事件を最大限に利用することにしたのだろう。 まったくよけいなことをしてくれる。 おかげでさらに事件がややこしくなったじゃないか。 長ぱちゅりーとしては、はっきり言って長の地位などにはまったく執着がない。 いやむしろ、誰かほかに適任がいるのなら、さっさと代わって欲しいくらいだ。 だが、あの幹部ちぇんと幹部みょんのどちらかという選択肢は、はっきりいってあり得ない。 二匹ともバカではないが賢くもない(ゆっくりの基準なので人間からみればバカ)ゆっくりであり、とても長の器ではないのだ。 そもそもあの二匹は幹部としての資質ですら問題が多いのだ、幹部みょんはやたら乱暴者だし、幹部ちぇんはズルくてせこいことばかりする。 ではなぜそんなゆっくりが幹部をしているかというと、群れの有力者の子供(ただ古くからいるってだけで偉いって風習はどうにかならんかねこれ。名門とか死ねよ)だからだ。 あぁ、アホらしい。 まあ、長うんぬんの問題はこの際いい、重要なのはこれが事件に与える影響の方だ。 幹部二匹がこの事件の真相に気付いているかはわからない。 だがその目的ははっきりしている。 幹部みょんと幹部ちぇんの目的は、この事件を利用して自身の知名度、影響力を高めつつ、ライバル候補だったまりさを社会的に抹殺することだ。 つまり必然的にれいむ贔屓の立場にあるわけだ。 そしてもしこの状況において、実はれいむは嘘ついてました、なんてことが明らかになったらどうなるか? そんなことになれば、幹部二匹はいい恥さらしである。これはもうイメージダウンどころの話ではない。 最悪ゲスを擁護したといことで、せいっさいはないにしろ幹部の地位を追われるかもしれない。 これはプライドの高い二匹にとっては、絶対に避けたい事態である。 そうはならないためにも、幹部二匹は全力でれいむを援護することだろうことは想像に難くない。 それこそ、真相をねじ曲げるぐらいは簡単にやってのけるだろう。 現に今、まりさが犯罪者であるという雰囲気が群れ内を覆っているのは、幹部二匹が意図的に流した噂の影響も大きいのだ。 「むきゅう!これは……まりさつんでるわね……」 一通りの分析を終え、事態の深刻さに改めて長ぱちゅりーはため息をついた。 長ぱちゅりーとしては、なんとかまりさたちを助けてやりたい気持ちがあった。 それは、群れのためとはいえ、まりさたちに嘘をついたという負い目が多少なりともあるからだ。 しかしまりさを助けるための障害があまりにも多すぎるのである。 自分はおろか、れいむやまりさですら直接与り知らぬところで、さまざまな状況がれいむを有利にし、まりさを不利にしている。 あきらかに天がれいむに味方してるとしか思えない。 まるで三流以下の作家にありがちな、ゲス特有の無双状態のようだと長ぱちゅりーは思った。 「むきゅ!これはもう、まりさとありすのにひきを、このむれからついっほう、ということにするしかないかしら。 せいっさいをのぞむゆっくりもでるだろうけど、それは、だいりしゅっさんはつみではない、ということでなんとかごまかして、 ひがいをさいしょうげんにとどめるしかほうほうはなさそうね……」 この状態からのまりさたちの逆転劇は不可能、と判断した長ぱちゅりーがしばらく考えた末に出した答えは、まりさとありすの番の群れ外追放処分であった。 幹部みょん幹部ちぇんがれいむ味方に付き、自分もうかつに真実を話せない状況の今、このままいけばまりさたちを制裁しろ、という声が群れ内で膨れ上がるのは必至。 となれば、そうなる前にまりさとありすを群れから出してしまうのだ。 こうすることで、一応の体裁は保たれ、かつ、人間がありすを去勢したという件もばれることがない。 実質的に何も罪を犯していないまりさちと追放するのは心が痛むが、制裁されるよりははるかにましだろう。 れいむに対しては、嘘を見抜いていることを伝えた上で、おちびちゃんの親権を正式に与えることで黙らせることにし、 また幹部二匹についても同様に、れいむが嘘をついていたことをほのめかし、ばらされてイメージダウンされたくなかったら、あまり増長しないようにしろと釘をさすことにする。 おそらくこれが一番波風立たないベストな選択のはずだ。 「むきゅ、まるでこれじゃぱちぇがげすみたいね……」 自嘲気味につぶやく長ぱちゅりー。 仕方がないとはいえ、あまり後味がよいとは言えない結論を出さざるを得ないこの状況で、気分がよいはずもない。 何より結果敵にあのれいむの味方をしなければならないというのが気に食わない。 こんなんでいいのか?と思わなくもないが、それしか手がない以上、自分は長としてその責任を全うするまでだ。 「ふぅ、まったくこれだからおさはいやなのよ……。 さて、それじゃこのことをみんなにつたえにいかないと!」 善は急げとばかりに、長ぱちゅりーがおうちから出ようとしたその時、 「おさー!おさはいるのおおおおおおお!」 外からけたたましい声が聞こえてきた。 長ぱちゅりーはなにがとかと眉をひそめながら、おうちから顔を出す。 そこにいた声の主は、誰であろうか、あの問題のれいむだった。 「ゆゆ!おじゃまするよおさ!」 まだ入っていいとも、わるいともいってないのにお構いなしにずんずんとおうちへと入ってくるれいむ。 そんなれいむに顔をしかめる、長ぱちゅりー。 「いったいなんのようなのかしられいむ! というかあなたおちびちゃんは? いっしょじゃないの?」 怪訝に思い、訊ねる。 れいむは一匹であり、そばにはおちびちゃんの姿はなかった。 シングルマザーであるはずのれいむが、おちびちゃんを放って一匹で行動できるはずがないのだが。 「ゆふふふふ!おちびちゃんのしんぱいならむようだよ! むれのみんながひろばで、めんどうをみててくれるからね! れいむはおさと、にひきだけで、じゅうようなはなしがあるっていったら、みんなよろこんでひきうけてくれたよ! おちびちゃんはい、まむれいちばんのだいっにんきだからね! まっ、れいむのおちびちゃんなんだからそれもとうぜんだけど!」 誇らしげな表情で言うれいむ。 なるほどそういくことか、と納得した。 事件の渦中のゆっくりであるおちびちゃんが人気でないはずがない。 いまごろ、さぞ群れのみなからちやほやされていることであろう。 「ふーん!それはわかったわ! で、いったいなんのようなわけれいむ? ぱちぇはいま、とってもいそがしいのだけど!」 トゲトゲしい口調を隠そうともせず言う長ぱちゅりー。 当然だが、長ぱちゅりーはこのれいむに大していい印象を抱いているはずもない。 自然と接する態度も辛辣なものとなる。 「ゆふふふ!はなしというのは、ほかでもないあのげすまりさのことだよ! そのしょぐうについて、ていあんにきたんだよ!」 「はぁ?ていあん?なにいってるの?」 いきなりわけのわからないことを言われて呆れる長ぱちゅりー。 まりさの処遇については長であるぱちゅりーが全権を持っているのだ、 そのことに関しては群れの一ゆっくりにすぎないれいむが口をはさむようなことではない。 「ゆふふふふ!あのげすまりさはこのままだとまちがいなくせいっさいだよね! それだけのことをしたんだから、とうぜんだよね! でもね、れいむはとってもじひぶいかいゆっくりだよ! だからね、あのげすまりさにも、ちゃんすをあげようとおもうんだ! なにより、あんなげすでも、おちびちゃんのかたおやであることはまちがいないからね!」 「ちょっと!ちょっとまちなさい! いったいなんのはなしをしているのれいむ!」 れいむとまったく話がかみ合わず、口調が強くなる。 だがれいむはお構いなしに話を続ける。 「そこでかんがえたんだけど、あのげすまりさには、このれいむとおちびちゃんのしょくりょうを、いっしょうめんどうみさせてあげるぎむをかすことにしようとおもうんだ! こうすれば、つみをつぐないながらも、おちびちゃんとれいむのために、せいっさいされずにいきのこることができるんだよ! ゆふふふふ!いいあんでしょ! さぁ、わかったら、はやくこのけいをむれのみんなにはっぴょうしてね! れいむも、おちびちゃんも、とってもおなかをすかせてるんだよ!まりさには、きょうからでもはたらいてもらわないとね! ああ、それとありすのことな……」 「いいかげんにしなさい!」 れいむの言葉を遮るように、長ぱちゅりーの声が響く。 「ゆっ、ゆゆゆゆ?」 「ふん、いったいなにをいいだすかとおもえば、あきれたげすゆっくりね、れいむは!」 「ゆなっ、なんてこというのおおおおおおおおおおおお! いくらおさでもいっていいことと、わるいことがあるよ!あやまってね!れいむにあやまれええええ!」 「はっ!」 突然ゲス呼ばわりされ、顔を真っ赤にするれいむを見下した目で見る長ぱちゅりー。 「げすにたいして、げすといってなにがわるいのかしら! それと、おあいにくさま!まりさたちのしょぶんついては、もうきめてあるわ!せいっさいはなしよ!あのにひきにはむれをでていってもらうわ! そもそも、これはあなたがくちだしするようなもんだじゃないのよ!ひっこんでなさい! だいたい、なに?『れいむとおちびちゃんのしょくりょうを、いっしょうめんどうみさせてあげるぎむをかすことにした』って! それって、つまりまりさをどれいか、するってことじゃない! あれだけ、おちびちゃんをどれいにされそうになった、ってさわいでたちょうほんにんが、ほかのゆっくりをどれいにしたいなんて、おわらいね! しってのとおり、むれでのゆっくりのどれいかは、じゅうざいよ! あなた、そんなにせいっさいされたいのかしら?」 「ちっ、ちがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!これは、れいっがいだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! これはせいっとうなけんりだよ!とうっぜんのことなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお! まりさは、げすゆっくりなんだよおおおおおおお!これくらいのつみは、あたりまえのことでしょうがあああああああ!」 「なにが、せいっとうなけんりよ、あんたみたいなげすのかんがえは、おみとおしよ! いま、かんぜんにりかいしたわ!あんたがまりさをうらぎったしんのもくてきは、これだったわけね!」 長ぱちゅりーは確信した。 さっきまでは九割方の推測だったのが、このれいむを見て十割の事実に確定した。 このれいむは間違いなくゲスだ。 それもかなり悪質なでいぶタイプのゲスに違いない。 長ぱちゅりーの推測では恐らく、このゲスれいむの真の目的は事件の後、まりさを奴隷化し、自分とおちびちゃんに対する安定した食料の供給源とすることにあったのだ。 事件の罪とおちびちゃんを盾に取り、延々とまりさに食料を貢がせ続けるのが本当の狙いだったのである。 そのためにまりさを裏切り、さらには虚偽の罪まで押しつけて、ゲスゆっくりに仕立て上げた。 まったく吐き気がする悪党ぶりだ。 「ゆぐうっ!ゆっ、ゆへへへへへへ! うらぎったとか、なっ、なんのことかなー! れ、れいむはひがいしゃなんだよ!かわいそうなんだよ!あんまりふざけたこといってるとおこるよー!」 長ぱちゅりーの言葉に明らかに動揺しているものの、なんとか平然と振る舞おうとするれいむ。 しかしその目は不自然に宙を泳ぎ、また体中から脂汗が噴き出している。 誰がどう見ても不審な態度だった。 そんなれいむに長ぱちゅりーはとどめをの言葉を突き刺す。 「どうやらりかいできていないようね! あんたがむれのみんなにはなした、れいぷだの、おちびちゃんをうれとかのはなしは、ぜんぶうそっぱちよ! そうやって、まりさをはめて、あまいしるをすおうとしてることはおみとおしだって、いってんのよ!」 「ゆぐっ!」 長ぱちゅりーの言葉に、ビクッと身を震わせるれいむ。 そして次の瞬間、 「ゆぐあああああああああああああああああああ!ふざけるなあああああああああああああああああああああああ! したてにでてれば、ちょうしにのってえええええええええええ!なんなんだよおおおおおおおおおおおおおお! だいたい、しょうこはあるの!しょうこはあああああああああああああああああああああ! れいむがまりさをだましたってしょうこはさああああああああああああああああああ! おら、だせよおおおおおおお!だしてみろよおおおおおおおおおおお! ないでしょうがああああああああああ!へんないいがかりはよしてねええええええええええええええ! れいむはひがいしゃなんだよおおおおおおおおおおおおお!やさしくしなくちゃいけないんだよおおおおおおおおおお! さっさと、れいむのいうことをきけばいいんだよおおおおおおおおおおお! このくそげろぱちゅりーがあああああああああああああああああああ!」 れいむは爆発した。 ついにそのゲスな本性をさらけだしたのだ。 その突然の豹変に、一瞬たじろぐ長ぱちゅりー。 「くっ、たしかにしょうこはないわ、でも……」 「でもってなんだ!でもってえええええええええええええ! しょうこもないのに、でいぶをはんにんあつかいかああああああああああああ! げすはどっちだあああああああああああああああ! そっちがそのきなら、こっちにもかんがえがあるぞおおおおおおおおおおおお! おぼえてろおおおおおおおおおおお!」 それだけ言い終えると、バッとれいむは身をひるがえし、長ぱちゅりーのおうちを凄い勢いで出て行った。 後にはあっけに取られた長ぱちゅりーがポカンとした表情で残されるのみである。 「にっ、にげたの?なっ、なんのかしらあれは!いったいどうするつもり?」 突然やってきて、そして突然帰って行ったれいむに戸惑いを隠せない長ぱちゅりー。 一体れいむは何をする気なのか? 単純に考えれば、自分のたくらみが暴かれ、逆上したものの、打つ手がないために捨て台詞をはいて逃げたようにも見えるが、 しかしれいむの「こっちにも考えがある」という捨て台詞には、単なる負け惜しみとは思えないなにか不気味なものを長ぱちゅりーは感じた。 いや、しかし慌てることはないはずだ。 ただの群れの一ゆっくりにすぎないれいむに、何かができるというのだ。 自分はさっき決めたまりさたちの刑を、ただ群れの皆に伝えればいいだけのことだ。 それで今回の件は決着がつくはずなのだ。 そうだ、それですべてが終わるはずなのだ。 そう思いなおすと、長ぱちゅりーは、群れの皆に自身の判断を発表しに行ったのであった。 、 そして次の日。 「ゆゆ!きいたきいた?あのじけんのこと!」 「ゆー!きいたよ!なんだかへんなことになってきたね!」 「おさのはんだんはおかしいよね!まりさたちをかばってるとしかおもえないよ!」 「まったくそのとおりね!れいむがかわいそうだわ!」 「そのてん、かんぶみょん、かんぶちぇんのはんだんはしっかりしてるわよね!」 「ゆふふふ!これはがぜんおもしろくなってきたのぜ!」 今日も今日とて、群れ内は例の事件の話題でもちきりだった。 事件について、様々な憶測や噂を口にするゆっくりたち。 その内容は以下のようなものであった。 事件の続報である。 かねてから話題になっているまりさ容疑者による奴隷売買事件にその後大きな進展があったようだ。 さて、この事件はすでに幹部みょん、幹部ちぇん、被害者れいむらの活躍によって一応の解決を見せており、 容疑者まりさの有罪についてはもはや議論の余地はないのだが、肝心の刑罰の行方について、物議を醸しだしている。 昨日の夕方ごろ、長ぱちゅりーにより正式にまりさ容疑者およびありす容疑者の刑についての発表がなされた。 群れのゆっくりたちの間では、まりさ容疑者たちの刑はその罪の重さから考えて、当然極刑であるせいっさいが予想されており、 なかでも群れの皆の前でじわじわなぶり殺しにされる、公開せいっさいを求める声が多かった。 しかしである。 長ぱちゅりーによる刑の発表はなんと、まりさ容疑者たちの群れ追放のみという意味不明のものであった。 この発表の直後、広場は大いにどよめいたという。 中には、こんな刑では軽すぎる!せいっさいしろ!とか、いったいどういうわけでこんな結論になったのか説明しろ!などの声も上がったが、 長ぱちゅりーはそれらの声を完全に無視。 とにかく刑は決まった、これ以上事件について蒸し返すような話はするなの一点張りである。 これには群れの善良なゆっくりたちといえど納得がいくはずもなく、不満の声が出るのも無理はない。 しかし、長ぱちゅりーは発表を終えると、もう話すことは何もないといった様子で、逃げるようにそそくさと広場を後にしてしまったのだ。 困惑の形で広場に取り残される群れのゆっくりたち。 いったいなぜ、善良な群れのゆっくりたちが、こんなにもゆっくりできない思いをしなければならないのか。 そんな状況の中、長ぱちゅりーと入れ違える形で颯爽と現れたのが、我らがヒーロー幹部みょん幹部ちぇん、そして被害者れいむだった。 被害者れいむはまず群れの皆にこう言った。 自分は長ぱちゅいーの判決に納得していないと。 その言葉にうなずく群れの面々。 部外者である自分たちですら、あの判決には不信をつのらせているのだ。 当事者であるれいむが納得するはずもあるまい、というわけである。 その上で、被害者れいむは自身が望むまりさ容疑者たちの刑について語ったのだ。 当然、観衆のゆっくりたちは、被害者れいむはまりさたちのせいっさいを望むだろう期待していた。 だが、意外や意外。 れいむが口にしたのは、まりさ容疑者たちのせいっさいではなかった。 れいむが語った内容は、まりさを生かし、おちびちゃんのために働かせるというものだったのである。 これには群れのゆっくりたちは仰天し、長ぱちゅりーの発表の時と同じように広場はざわめいた。 なんでせいっさいじゃないんだ!あれだけのことをまりさにされて、くやしくないのか! 被害者れいむに向かって納得できない、といった言葉が飛ぶ。 だが被害者れいむは、刑の理由についてこう語った。 あんなゲスゆっくりであっても、おちびちゃんの親であることは変わりない。 それを殺してしまうのは、いかがなものか?ということである。 大切なのは、自身の恨みを晴らすことではない。 生まれてきたおちびちゃんのことを第一に考えるべきなのだ、と。 この被害者れいむの言葉によって、広場は感動の渦に包まれた。 れいむの慈悲深さに、憎しみにとらわれない崇高な精神に、そしてそのあふれ出る母性に。 さらにたたみかけるように幹部みょん幹部ちぇんの二匹は、全面的にこのれいむの主張を支持することをその場で発表し、長ぱちゅりーとの対決姿勢を明らかにしたのである。 この発表に広場のゆっくりたちは大いに沸いた。 なぜなら今発表された被害者れいむの刑が、現実のものとなる可能性が出てきたからだ。 通常、一ゆっくりに過ぎない被害者れいむが、どれだけ叫んだところで、長の決定は覆らない。 だが、被害者れいむの意見に、幹部が二匹も賛同しているとなれば話は別である。 いかに長といえど、これは無視できない。 ましてや、その意見が、群れの皆の支持を得ている正論となればなおさらなのである。 また、れいむの意見が通るということは、長の判断が間違っていたということを意味する。 これは必然的に長ぱちゅりーの退陣が求められ、被害者れいむを支持した幹部みょん幹部ちぇんのどちらかが長になるということを意味しているのである。 こうして、まりさ容疑者のゲス行為から始まった一連の事件は、群れの長の座をかけた権力闘争へと発展の様相を見せており、 ますます目が離せない状況となっている。 以上、群れの噂から抜粋。 所変わって長ぱちゅりーのおうち。 「むっきゅー!あのくそげすれいむ!なんてことを!」 群れのゆっくりたちが、昨日の出来事の噂で盛り上がっている頃、長ぱちゅりーおうちで頭を悩ませていた。 もちろん、その原因はあのゲスれいむのことである。 正直あのゲスれいむにしてやられた感は否めなかった。 まりさの刑さえ、正式に決定してしまえばこれ以上荒れたり、ややこしいことにはならないと思っていたが、 まさかこんなことになってしまうとは。 読み誤っていた。 あのれいむのゲスさ加減を。 あいつは、ことゲス行為にかけては自分以上にキレるかもしれない。 単なる怠け者と、甘くみていた結果がこれだ。 そして、幹部みょん、幹部ちぇんのことにしてもそうだ。 まさかここまであからさまに自分に対して全面戦争を仕掛けてくるとは完全に予想外だ。 もはや、幹部ちぇん、幹部みょん、そしてゲスれいむの三匹は、完全に共闘状態にあると見ていいだろう。 長の地位欲しさに、ゲスに手を貸すとは、あの二匹がここまで愚かだったとは。 それにしても、いったいいつの間に手を組んだのか? 普段の仕事はさぼってばかりでまったくやらないくせに、こういうことのかけては異様に行動が素早い。 まったく救いがたいったらありゃしない。 自分たちがやっている行動がどういう結果をもたらすのか全くわかっていないのだ。 とはいえ、あの三匹が行っている戦法は、癪だが実にいい案だ。 まず意図的な噂の流布。 どうやら相変わらず子飼いのゆっくりを動員し、偏った内容の噂を群れ中にまき散らしているようである。 この噂によれば、もはやまりさが有罪かどうかは確定したものとして隅におかれ、刑の行方についてのみ重点的に語られている。 つまり事件の論点を刑の行方のみに絞っているのだ。 これは上手い手だった。 このことによってゲスれいむ最大の弱みである、嘘をついたという事実を完全に過去の物にしてしまっているのだ。 とりあえずまりさが有罪ということを確定させておけば、自身の弱みに対して突っ込まれることはなく、 安全な立場から、好き放題事件に大して言及できるというわけだ。 そして、自分の主張を群れのゆっくりたちに演説するタイミングも絶妙。 ちょうど自分が群れのみんなにまりさたちの刑を発表後、皆の不満が高まっているところを見計らっての登場。 悲劇の被害者という自らの立場を最大限に利用した演説内容。 さらには、幹部の賛同という権力の後押し。 全てが完璧であった。 おかげで今や群れは完全にれいむムードだ。 このままでは、自分が下したまりさたちの追放刑を撤回し、れいむの主張しているまりさをおちびちゃんのために働かせるという刑(その本質は奴隷刑だがそのことに気付いているゆっくりはいない) を執行しろという気運が群れの内で高まるのは目に見えている。 最悪、現長であるぱちゅりーを無理やり退陣させて……という展開すらあり得る状況だ。 前にも考えたことだが、長ぱちゅりーとしては、長の地位などちっとも惜しくはない。 だがこの状況はだめだ。 今自分が、れいむたちの思惑通りに退陣するわけにはいかない。 それはすなわち、群れの崩壊に繋がりかねないのだ。 となれば、やることは決まっている。 「むきゅ!あのばかなみょんと、ちぇんにきっちりとはなしをつけにいかないとね!」 今長ぱちゅりーができる最善手は、れいむと幹部二匹の繋がりを断つことだった。 こうすれば、れいむは後ろ盾を失いれいむが主要している馬鹿げた提案は絵空事ととなる。 「むきゅ!そうときまればこうしちゃいられないわ!さっさとあのにひきにあわないと!」 今度ばかりは後手に回るわけにはいかないと、長ぱちゅりーは急いで二匹の幹部を探しにおうちを飛び出したのであった。 その頃、群れ内の某所。 「わかるよー!むれのれんちゅうのはんのうはじょうじょうなんだねー!」 「みょん!けいかくどうりだみょん!」 群れのはずれにある小さな洞窟で、二匹のゆっくりがコソコソと何事かを話し合っている。 幹部みょんと幹部ちぇんであった。 二匹は今、とある計画についての最終確認を行っていた。 その計画とは、もちろん例のまりさの事件のことである。 「わかるよー!このままいけば、むれのれんちゅうが、ぱちゅりーにおさをやめろといいだすのは、じかんのもんだいなんだねー!」 「みょん!」 幹部ちぇんが上機嫌に言い放つ。 たしかにその言葉の通り、計画は怖いくらいに順調だった。 このままいけば、遠からずその目的は達成されるであろうことは間違いない。 だが……。 「みょん、これでほんとうによかったのかみょん……」 ぼそりと幹部みょんは呟いた。 「ゆゆ!わっからないよー!いまさらびびってるのー!」 弱気なセリフを吐いた幹部みょんをバカにするように幹部ちぇんが言う。 「ゆがぁ!ふざけるんじゃないみょん!べつにびびってるわけじゃないみょん!」 揶揄するちぇんに、ぶっきらぼうに応える幹部みょん! だが言葉とは裏腹に、その態度にはどうにも落ち着きがない。 あるいはわざと大声を出して、虚勢をはっているようにも見えた。 そう、実は幹部みょんの内心では、不安な気持ちがヘドロのように堆積していた。 なんというか、どうにも事件が大きくなりすぎている気がするのだ。 そもそも自分はここまで大事は望んでいなかった。 あの時はこんなことになるとは思ってなかったのだ。 そう、あの時は。 それは数日前の話である。 幹部みょんは、いつものように狩りを終えると、群れの広場でだらだらとゆっくりしていた。 だが正直言ってその日の気分はあまりいいものではなかった。 幹部みょんには悩みがあったのだ。それは言うまでもなく次期長のことだ。 一体いつになったら、自分は長になれるのか?何度長ぱちゅりーにそのことを進言しても、まだ早いといった返事ばかり。 しかもそれだけならまだしも、一時期は幹部でもなんでもないただのまりさが、その候補にあげられるといった始末。 親族の連中もさっさと長になれと皮肉を言ってくるし、ここのところゆっくりできないことばかりだ。 その上もしライバルの幹部ちぇんに出し抜かれ、自分を差し置いて長になんかなられた日には……。 考えただけでもゆっくりできない。憂鬱な気分にもなろうというものだ。 「まったくいいかげんにしてほしいみょん!」 誰にともなく愚痴をいう幹部みょん。 その時である。 なにやら広場の中央から、やかましい声が聞こえてきた。 「ん?」 目線を向けると、どうやら一匹のれいむが群れのゆっくりたちに何やら訴えているらしい。 助けてだの、レイプだのといった声が聞こえてくる。 しかしそれらの言葉が特段幹部みょんの関心を引くことはなかった。 勝手にやってくれ、そのうち誰かが何とかするだろう。 面倒はごめんだ、こういうことは適当に見て見ぬふりをするにかぎる。 そう思っていた。 ところがである。 思いもよらないことが起こり、状況が一変した。 そこに一匹のまりさが現れたからだ。 なんとその場に現れて、れいむに犯人扱いされているのは、あの長候補でもあったまりさだったのだ。 その現場を見た瞬間、幹部みょんはひらめいた。 ひょっとしてこれはチャンスなのではないか? 今の時点では、れいむとまりさのどちらかが悪者かは定かではない。 だが両者の間に不穏な空気が漂っているのは事実だ。 ここで颯爽と自分が登場し、この喧嘩を仲裁すれば群れからの評価が上がり、さらにどんな事情であれもめ事を起こしたまりさは失点となる。 これで長の座に一歩近づけるかもしれない。 そう思ったみょんは、既に行動を開始していた。 「ちょっとまったみょん!」 間一髪のところで、まりさとれいむの間に割り込むことに成功した幹部みょん。 決まった!完璧だ!やったぁ!かっこいい! これで、群れのゆっくりたちの評価はうなぎのぼりに違いない。 だが、そう思っていると予想外の事が起こった。 ある意味ではこの場で一番聞きたくない声が聞こえてきたのだ。 「わかるよー! じゃあこのたいりょうのしょくりょうはどうせつめいするのー!」 幹部ちぇんだった。 なんとライバルである幹部ちぇんが、この場に割り込んできたのだ。 しかも自分が仲裁したこの争いに、追い打ちをかける方向で。 瞬間、カッと頭に血が上った。 ふざけやがって!これは自分の手柄だぞ!それなのに後からのこのこやってきて、なにドヤ顔してやがんだ! 「ほら!こっちへくるみょん!」 「ゆぎぃ!」 これ以上幹部ちぇんを目立たせるわけにはいかない。 そう思った幹部みょんは、強引にまりさの髪をつかみ引っ張っていく。 容疑者を連行するという目立つ役目は絶対に自分がしなければならない。 今の時点では100%まりさが犯人と決まったわけではないが、なに構うものか。 周囲の様子は完全にまりさが犯人の扱いなのだ、そんな中弱気な態度を見せるわけにはいかない。 これは自分の手柄なのだから。 「わかるよー!このしょくりょうは、ぼっしゅうだよー!」 しかしその矢先、今度は幹部ちぇんがまりさの持っていた食料を証拠だといって没収する。 またも自分の存在をアピールする売名行為に、幹部みょんの怒りのゲーシはどんどん溜まっていく。 それならば自分は……。 こうして幹部みょんと幹部ちぇんによる、まりさの粗捜しが始まった。 幹部みょんとしては、始めはここまで徹底的にやるつもりはなく、ちょっとしたポイント稼ぎのつもりだったのだが、 幹部ちぇんがやってきた以上後には絶対に引けなくなってしまったのだ。 そして多分幹部ちぇんも同じように考えていたのだろう。 二匹は競うように、まりさが犯人である証拠(そのほとんどは言いがかりだったり、捏造だったりしたものだった)を提示し合あった。 そしてその過程で、初めは半信半疑であったまりさの犯人説をいつのまにか盲目的に自分でも信じるようになっていた。 幹部みょんにとっては、もはやまりさが犯人だということは疑う余地のない決定事項だったのだ。 しかしそんな状況が一変する出来事が起こった。 あれは昨日の夕方頃のことである。 事件も一段落し、いつものように、幹部ちぇんと口喧嘩(そのときの内容は、どちらがこの事件でより多くの手柄を立てたかというものだった)で争っているところに、あの被害者れいむがやってきたのだ。 「ゆがあああああああああ!にひきとも、なにくだらないことやってるのおおおおおおお! たいへんなんだよおおおおおお!いちだいじなんだよおおおおおお!」 「は?」 「みょん?」 突然やってきたと思ったら、いきなり大声でわけのわからないことをのたまうれいむに、 さっきまでケンカしてたことも忘れ、思わず顔を見合わせる幹部みょんと幹部ちぇん。 「あのげろぱちゅりーは、まりさたちを、むれからついほうしようとしてるんだよおおおおおおお! そんなことゆるされないよおおおおおお!あのまりさは、れい……じゃなくて、おちびちゃんのためにはたらかせるんだああああああ! さぁにひきとも!れいむについてくるんだよ!そしてむれのみんなのまえで、このことをうったえるんだあああああ! そしてあのげろぱちゅりーに、おもいしらせてやるんだよおおおおおおおお!」 「「…………」」 やたら興奮しまくっている(なんか嫌なことでもあったのか?)れいむを尻目に、何ともいえない表情で黙りこむ幹部みょんと幹部ちぇん。 なんというか、どうコメントしていいか、悩む内容だった。 どうやら長ぱちゅりーはまりさたちの刑を、群れからの追放としたらしく(せいっさいじゃないのは意外だった)それを不満に思ったれいむが自分たちに、 力をかせと訴えているらしいが、それはお門違いだと幹部みょんは思った。 確かに自分らは、事件中一貫してれいむを擁護する立場をとっていた。 だがそれは決してれいむのためでなく、自分自身の利益のためなのだ。 決してれいむの味方というわけではない。 「わっからないよー!どうしてちぇんたちが、れいむのいうこときかなきゃいけないわけー! かんちがいしちゃこまるよー! ちぇんとれいむは、なんのかんけいもないんだよー! なにかやりたいことがあるんあら、ひとりでかってにやってねー!ちぇんはかんけいないよー!」 幹部ちぇんも同じ考えだったようで、きっぱりとれいむに協力できないと言い放つ。 そりゃそうだ、もはや事件は一応の落ち着きを見せいている。 これ以上引っ掻き回すのは得策とは言えない。 そもそも自分は、長候補でもあったまりさの社会的抹殺という目的は十分に果たしている。 それなのに、れいむの味方をして長ぱちゅりーと対立するなど、リスク以外なにものでもないし、そんな義理もない。 「みょん!どうやられいむは、みょんたちがれいむのみかただとおもっているようだけど、それはちがうみょん! ただ、むれのかんぶとして、じけんのはんにんをつかまえた!それだけのことだみょん! さあ、わかったらさっさとかえるみょん!みょんたちはいそがしいみょん!」 幹部みょんは、これいじょうここでれいむに騒がれても面倒なので、さっさと帰るように促した。 「そうだよー!」 これに便乗するちぇん。 忌々しいが、珍しく意見が一致したようである。 だがれいむはプルプルと小刻みに体を震わせると、突然クワッと目を見開き、すさまじい大声で叫びだした 「ゆがああああああああああああああああああ!どいつもこいつもおおおおおおおおおおおおおおお!」 「みょ、みょん!」 「なんなんだみょん!」 あまりのことに驚く二匹。 このれいむ、事件の時からあんまり上等なゆっくりじゃないと薄々思っていたが、やっぱりちょっとおかしいんじゃないか? そんなことを幹部みょんが考えていると、れいむは何を思ったが今度は一転してニヤニヤと不気味に笑い出す。 「はぁはぁ!ゆふふふふ!いいのかなー!いいのかなー!このれいむに、かえれなんていっちゃっていいのかなー! そーんなことして、こまるのは、おまえらのほうなんじゃないかなー!ゆふふふ!」 突然叫びだしたと思ったら今度は笑い出す。 いくらなんでも情緒不安定すぎである。 「わっ、わからないよー!くだらないことごちゃごちゃいってないで、さっさとかえってねー! べつにちぇんは、れいむがいなくなったところでぜんぜんこまらないんだよー!」 「そうだみょん!そうだみょん!さっさときえるみょん!」 あまりの不気味さに帰れ帰れと促す二匹だが、れいむは余裕顔である。 そしてれいむは、二匹にとって、あまりに不都合な真実を語りだしたのだ。 「じつはさぁ!ここだけのはなしぃ!れいむがれいぷされたりぃ!まりさにおちびちゃんをうれっていわれたのはぁ!ぜんぶうそなんだよおおおおお! ゆっふっふっふっふっ!ごべんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!」 「「…………は?」」 突然のカミングアウトに目が点になる幹部みょんと幹部ちぇん。 何だ!なんだって!うそ?じゃあまりさは?いままでのことは?というかなんなんだこれは! うそって、意味が分からないぞ! れいむの言ったことを即座に理解できず、混乱状態に陥る。 だがそんな幹部みょんを尻目に、なおもれいむの話は続く。 「ゆふふふふ!そうなんだよー!ぜぇーんぶれいむのうそでしたぁぁぁぁぁぁ!ざぁんねぇええええええん! ゆっふー!びっくりしたぁー! それでねぇー!もしー!こーんなことが、むれのみんなにばれちゃったらどーなるかなー! むれのかんぶともあろうものが、うそつきのみかたをして、まりさをおとしめたということがばれたらどうなるかなー! みんなおこるんじゃないかなー! これは、せいっさいもありえるかもねええええええええええ!」 「みょ、みょん!」 思わずビクリと体を震わせてしまう。 なんて、なんてことだ! もし今れいむがいったことが本当で、それが群れのみんなに知られることになんてなったら、一大事だ。 事件を解決したヒーローが、一転して冤罪を生み出した無能幹部ということになってしまう。 そうなれば一気に針のむしろだ!やばい! 「わっ、わがらないよおおおおおおおおおおおおおおお! うそだ!そんなはなしうそにきまってるんだよおおおおおおおおおお! いや、かりに、ほんとだったとしても、いまさらそんなはなしだれもしんじないんだよおおおおおお! はんにんは、あのまりさなんだよー!これはもうけっていじこうなんだよおおおおおおおお!」 れいむの言葉を受けて、吐き出すように幹部ちぇんが言い、そこでふと気づく。 そうだ!その通りじゃないか! 仮に今れいむが言ったように、れいむの主張が嘘まみれだったとしても、もはや事件の大勢はまりさが犯人ということで確定している。 いまさらどんなことがあったとしても、この状況は覆らない。 大丈夫だ!大丈夫なはずだ! 「そのとおりだみょん!いまさらおまえがなにをいってもむだだみょん!」 そうであると確信しているというよりは、そうであって欲しいと願うように様に言う。 だがそんな淡い希望はれいむの次の言葉であっさりと打ち砕かれる。 「だっから!そうもいかないからこまってるんだろうがああああああああ! あのくそげろぱちゅりーは!なぜか、れいむがうそをついてることを、みぬいてるんよおおおおおおおお! れいむがやったことが、ぜんぶばれてるんだよおおおおおおおおおおおおお!」 「「…………」」 沈黙。 何も言えなかった。 言えるはずもない。 終わった。 すべてが終わった。 長への夢も。 いや、それどころか、自分のゆん生も。 あの賢い長ぱちゅりーが、すべての真実を知っているというのなら、このままで済むはずもない。 「ゆっふっふー!ようやくじぶんのおかれてるたちばが分かったようだね!」 落ち込む幹部二匹を見て、してやったりという表情のれいむ。 だがそんなれいむに幹部ちぇんがかみつく。 「なによゆうぶってるんだよー! おまえだって、うそがみんなにばれたらただじゃすまないんだよー! そもそもおまえが、こんなうそつかなきゃこんなことにはならなかったんだよー! どうしてくれるんだ!せきにんとってよー!」 「ゆっふっふー!もちろんだよぉ! だからいったでしょ! れいむにきょうりょくしろってさぁ!」 「わっ、わからないよー!」 困惑する幹部ちぇん。 そしてそれは幹部みょんにしても同じだった。 一体この絶望的な状況からどうするというのだ。 「ゆふん!それじゃあはなすよ!このれいむの、かんっぺきなけいかくをさぁぁぁぁ!」 ………………。 …………。 ……。 こうして三匹は運命共同体となった。 その目的は、長ぱちゅりーの長の地位失墜にある。 三匹が連携して立ち回ることにより、この問題をまりさの件から、長の権力争いへとすり替えるのだ。 議論がまりさ事件のみの場合、長ぱちゅりーが真実を知っているというのは、致命的なアキレス腱となるが、 事が、群れの長の問題となれば、長ぱちゅりーは中立な判断を下す立場から、事件の当事者と立ち位置が変わってくる。 その状況では、仮に長ぱちゅりーがれいむたちに対して嘘だと言い放ったところで、 それは自分が長の地位を脅かされているから、嘘を言っているのだと言うことで、苦しいが言い逃れることが一応可能なのだ。 そして目論見通り、長ぱちゅりーが引退に追い込まれ、幹部ちぇんか幹部みょんが長の地位に納まれば、 後のことはどうとでもなるというわけだ。 そして今現在、作戦は極めて順調だった。 れいむの演説は、大成功に終わり、群れのゆっくりたちの反応は上々。 意図的に流した噂の効果も相まって、群れではすっかりれいむムード一色である。 もし仮に今の状況で長ぱちゅりーが、れいむことを嘘つき呼ばわり(実際に嘘つきなのだが)したとしても、 証拠がない以上、それは、長の地位を追い詰められた長ぱちゅりーが、苦し紛れにれいむ陣営をネガキャンしているようにしか映らないだろう。 群れのゆっくりたちからは、冷ややかな目線で見られるのがおちだ。 真実は真実としての力を発揮できないのだ。 つまり長ぱちゅりーに打つ手はない。 全てこちらの思惑通り。 なのになぜだろう。 幹部みょんは漠然とした不安を感じずにはいられなかった。 このままでは取り返しのつかないような……。 いや、今の時点でもう十分取り返しのつかない事態になっているのだ。 これ以上最悪なんてことはもうあるまい。 だとすれば突き進むしかない。 自分の道はもはやこれしかないのだから。 そう、幹部みょんが決意を新たにしていた時、 「むきゅ!みつけたわよ!にひきとも!」 長ぱちゅりーがやってきたのであった。 「みょん!?」 「ゆっ、ゆわわわ!」 驚愕の声を上げる二匹。 それも当然だ。 二匹でコソコソと秘密の洞窟でこれからのことを相談してたら、その相談内容の張本人である 長ぱちゅりーが洞窟の入り口に現れたのだ。 幹部みょんは、一瞬これは何の冗談だと思った。 「わからないよー!なんでおさがここに!」 驚きがそのまま口に出る幹部ちぇん。 それに対してバカにしたように長ぱちゅりーは言う。 「ふん!あんたらにひきは、こゆっくりのときから、なにかわるだくみをするときは、いつもこのばしょでこそこそとそうだんしてたでしょ! だからもしやとおもってきてみれば、あんのじょうというわけ! まったくこゆっくりのときから、まるでせいちょうしてないわね!」 「ぐぬぬぬぬ!」 「わっ、わからないよー!」 思わずうめいてしまう。 言われてみればそうだった、自分たちは何か困ったことがあると大抵この洞窟でひそかに相談をする。 子ゆっくりのときからの習慣みたいなものだった。 長ぱちゅりーからしてみれば、そんなことはお見通しだったというわけだ。 「れいむは……いないようね! こうつごうだわ!」 きょろきょろと周りを確認しながら、長ぱちゅりーが言う。 「じゃあ、さっそくようけんにはいるけど、 あなたち、れいむのいけんをしじするなんて、ばかなまねはやめなさい いまならまだ、ぎりぎりとりかえしがつくわよ! むれのみんなのまえで、れいむへのさんどうを、てっかいするのよ!わかったわね!」 強い口調で命令するように長ぱちゅりーは言う。 いや、実際にこれは命令のようなものなのだろう。 幹部に対しての長の命令。 本来の立場なら、逆らうことなどあり得ない。 だが、今は平時ではない。 「わっ、わからないよー!そんなことできるわけないよー! おさは、じぶんのちいがあぶなくなったからって、そんなめちゃくちゃいうなんて、ずるいよー!」 幹部ちぇんが、ややたじろぎながらも言い返す。 あくまで、自分らは正当な理由に則っての行為だという立場を崩さない。 だがそんな幹部ちぇんを、長ぱちゅりーはジロリと睨みつける。 「ひっ!」 「あんたねぇ!ぱちぇがきづいてないとでもおもってるの? れいむとくんでるんでしょ! おさのちいほしさに、げすとくむなんて!このはじしらずが!」 完全に軽蔑しきった態度で長ぱちゅりーが言う。 「それは……その……」 「もっというとねぇ!このままいくとむしろやばいのは、あんたらのほうなのよ? それがりかいできてるの?」 「ど、どういことだみょん!」 思わず訊ねてしまう。 「わっ、わかるよー!はったりだよー! じぶんがまけそうだからって、つよがりいってるんだよー! みみをかすんじゃないよー!」 慌てて幹部ちぇんが会話に割り込む。 何も聞きたくないといった風にぶんぶんと首を振っている。 やはり、幹部ちぇんも自分と同じように、何か漠然とした不安を感じているのだろう。 だから、それを増長させるような、長ぱちゅりーの話は聞きたくないのだ。 それに対して長ぱちゅりーは、はぁと呆れたよういに息を吐き、 「あんたたち、ほんとなんにもわかってないのねぇ!」 と言った。 「いいわ!おしえてあげる!このじょうたいのままですすんだばあいの、あんたらのみじめなみらいをね!」 「なっ、なんだっていいうんだよー!」 長ぱちゅりーの断言口調に、もはや幹部ちぇんは半泣き状態だった。 「まずあんたらのたくらみどおり、むれないで、れいむをしじし、ぱちぇのいんたいをのぞむこえがつよくなったとしましょうか。 そうなると、とうぜんぱちぇはおさをやめざるをえないわね。 いくらおさとはいえ、むれぜんたいのいこうにはさからえないわ!」 「そのとおりだみょん!」 幹部みょんは肯定の相槌を打った。 「するとどうなるかしら? あなたたちのどちらかが、おさに、ということになるのかしらね。 まあ、こんかいは、かりに、みょんがおさになったとしましょうか!」 「わがらないよー!なんでちぇんじゃなくて、みょんなんか……」 「だまってききなさい!かりにって、いったでしょう! じゃあ、いいわ! ちぇんがおさになったとするわ!そうするとどうなる?」 「みょ、みょん!どうなるって……」 言われてみて、幹部みょんは、幹部ちぇんが長になった未来を想像してみた。 幼馴染でもあり、同時に長候補でもあり、今ともに死線を潜っている幹部ちぇん。 その幹部ちぇんが自分を差し置いて、長になる。 そんなことは……。 「みょん!ゆるせないみょん!せったいにごめんだみょん!」 幹部みょんは素直な気持ちを口にした。 そう、絶対に認められない。同じように危ない橋を渡ったというのに、何で幹部みょんだけが長で、 自分は幹部のままなのか! こんな不公平認められるはずもない。 「そうね!そうなるでしょうね! これは、みょんがおさになったばあいもいっしょ! あなたたちは、どちかかいっぽうのみがおさとなることを、けっしてみとめられない! さあ、そうなるとどうでしょうね! みょん、あなたは、なんとかしてちぇんをおさのざからひきずりおろそうとするんじゃないのかしら?」 「みょ、みょん!」 そう言われて幹部みょんは、ふと気付く。 その通りだ。 もし幹部ちぇんが長になんかなれば、自分はなんとしてでもそれを妨害する行為に出るはず。 そして、自分にはそのための手段がある。 だがその手段は……。 「どうやらきづいたようね! あなたは、ちぇんのすきゃんだるをにぎっている! でもどうじにそれはじぶんのすきゃんだるでもある! しかし、あなたはそれをつかうことを、おそらくためらわない! なぜなら、ちぇんだけが、ひのめをみるのは、ひどくふこうへいだとかんじるから! そんなことになるぐらいなら、ともだおれをのぞむはず!」 「くっ!」 長ぱちゅりーに指摘され、まったくその通りだと痛感する幹部みょん。 もしいま長ぱちゅりーの言ったような状況になれば、自分は自滅覚悟で今までのことを群れのゆっくりたちに暴露するだろう。 それもきちんとした証拠と共にだ。 たとえそれが最悪の結果を招くとしてもである。 「つまりね!あんたたちどちらかのうちいっぴきがせいこうし、りえきをどくせんするためには、 おたがいによわみをしりすぎているのよ! じゃあどうするか? おたがいにころしあう? でもそれはあんまりかしこいほうほうじゃないわね! つねにいのちをねらわれるのは、あまりにもゆっくりできないし、 だいいち、さつがいにせいこうしたとしても、おさこうほのうちいっぴきがあんさつされたとなれば、 とうぜんうたがいのめは、もういっぽうのこうほにむくことになるからね! はんにんは、じぶんだといっているようなものだわ!」 ここまで言うと、長ぱちゅりーは一息入れる。 「まっ、おそらくは、にひきでおさをやる、きょうどうとうちというかたちでおちつくでしょうね! それがおもてむき、いちばんかどがたたない。 でもそれでめでたしめでたしというわけにはいかない。 むしろ、このむれにとっても、あなたたちにとっても、これがもっともさいあくのてんかい! なぜだかわかる?」 「なっ、だんでだみょん?」 「わからないよー!」 どいういうことだ? 幹部ちぇんと一緒に長をやるのは、こういう状況では最善かつ最も問題のない方法に思える。 「それはね! れいむよ!れいむのそんざいよ!」 あっ、と幹部二匹は同時に声を上げた。 「あなたたちについては、にひきでおさをやりましょう!ってかたちでけりがつくかもしれない。 でもれいむは?おさのすきゃんだるをにぎっているれいむが、このままおとなしくしているかしら? だんげんするわ! こたえはのーよ! あのれいむは、あなたたちにひきのよわみをにぎっているのをりようして、 さまざまな、むちゃをようきゅうしてくるはずよ!」 「そっ、そんなことないみょん!れいむのもくてきは、あのまりさをどれいにすることだみょん! もくてきがはたされたいじょう、そんなことするはずが……」 「あまい!」 「ゆぐぅ!」 「それはあますぎるかんがえよみょん! じっさいにあって、はなしてみて、きずかなかったの? あのれいむは、むれをおさめるうえで、もっともきをつけなかればならない、でいぶたいぷのげすよ! いっぴきのげすが、けっかとして、むれをほろぼすことになるというはなしを、むかしなんどもおしえたでしょう! でいぶたいぷのげすには、よくぼうのさいげんがないわ! そもそも、あのれいむは、はじめはまりさとのとりひきにまんぞくしていたはずなのよ! でも、それよりも、うまいはなしがあることにきづいて、あっさりまりさをうらぎった! あなたたちにしてもおなじことよ! むれをおさめているおさにたいして、きょうはくできるざいりょうがある! こんなおいしいたちばを、あのれいむがみのがすはずがないわ! いまや、れいむのもくてきは、このむれを、かげからぎゅうじることにかわっているのよ!」 「なっ、そんなことが……」 口からうめき声がにじみ出る。 そんなバカな!いくらなんでもそんなこと……。 「まったくたいしたやつよ!あのれいむは! まりさのけいを、そうきゅうにかくていさせて、ぱちぇがしんじつをみぬいていることをほのめかせば、 おとなしくなるとおもっていたら、あんたたち、ばかにひきをまきこんで、こんなさくせんにでてくるとはね! ころんでも、ただじゃおきない!まんまとぴんちをちゃんすにかえてきたわ! そしていまごろは、ぱちぇをいんたいにおいこんだあとのこともかんがえているのかもしれない! ひょっとしたら、もうすでに、じぶんをかんぶにしろ!なんてはなしも、もうでてるんじゃないの?」 「ゆぐ!」 「それは!」 思わず体がビクリと反応してしまう。 確かにその通りだった。 あのれいむとは、この作戦がうまくいった暁には、自分を幹部として取り立てるようにという約束を交わしている。 その話が出た時には、将来自分が長になるのだから、幹部の地位くらいくれてやると軽く考えていたが、 しかしそれは、れいむが群れを牛耳るという野望のための第一歩なのかもしれない。 群れの幹部となれば、専属の部下が持てる。 それを使ってガードをか固められてしまえば、れいむを暗殺するのも難しくなるだろう。 幹部みょんの体中を冷たい汗が流れる。 そうか、そういうことだったのか。 自分が感じていた不安の正体はこれだったのだ。 自分はあのれいむからドス黒い何かを無意識のうちに感じ、それに恐怖していたのだ。 「ふん!どうやら、ようやくじぶんたちのおかれたじょうきょうがりかいできたようね! あなたたち、このままいけば、いっしょう、あのれいむにこきつかわれる、ゆっくりできないまいにちよ! それでいいのかしら!」 「ち、ちぇんたちはいったいどうすればいいのー!」 弱々しい声で幹部ちぇんが長ぱちゅりーに訊ねる。 もはや幹部ちぇんには反抗する気力はない様だった。 「そうね!まずやることは、はじめにいったとおり、あのれいむへのしじひょうめいをてっかいしないさい! そうすれば、あのれいむはうしろだてをなくすことになるわ!」 「わからないよー!でもそんなことしたら、ひみつがばれて……。 それに、いったんれいむをしじすると、むれのみんなにだいだいてきにひょうめいしたいじょう、 すぐにそれをてっかいしたら、みんなからのしじが……」 幹部ちぇんがおどおどしながら、長ぱちゅりーに意見する。 「ひみつのことなら、しんぱいするひつようはないわ! れいむにしたって、ばれたらやばいのはおなじなんだから!じぶんからばらしはしないわよ! ぱちぇにしても、こんかいのけんについては、あまりおおきなさわぎにするつもりはないの! だからこそ、まりさたちは、ついほうというかたちにして、おんびんにかたづけようとしたわけ! まあ、どこかのだれかさんたちが、はでにうわさをばらまいてくれたおかげで、そうもいかなくなっちゃたけどね! それと、むれのみんなからの、しじりつていかは、もうあきらめなさい! これからあなたたちは、かんたんにいけんをひるがえす、せっそうのないゆっくりとして、みんなからけいべつされることになるとおもうけど、 それはじごうじとくというものよ!れいむにいいようにつかわえるよりは、ずっとましでしょ!」 「そっ、そんなー!わからないよー!」 泣きそうな声を上げる幹部ちぇん。 「ふん!なさけないこえあげるんじゃないわよ!みっともない! それじゃ、そういことで、みょんもいいわよね!」 「よくないみょん!」 「……あんですって!どっ、どういうことよ!」 「よくないって、いったんだみょん!」 「なっ、ちょっと!あなたいまのじょうきょうがわかっているわけ!」 長ぱちゅりーが信じられないといった面持で見つめてくる。 わかってる。 いわなくても今の状態が絶望だというのは重々承知だ。 れいむの側につけば、将来的にあのゲスれいむに弱みを握られ、ゆっくりできない毎日。 かといって、長ぱちゅりーの側につけば、群れ中のゆっくりたちから侮蔑され、長どころか幹部の座すら危ぶまれることになる。 どちらにしても最高にゆっくりできないことは確実だ。 クソッ! どうしてこうなったんだ! 始めは軽い気持ちだったんだ。 ちょっとした点数稼ぎのつもりだったんだ。 それがこんな事態になるなんて誰が予想できる! そもそも!そもそもだ! 元はといえば、長ぱちゅりーがいけないんじゃないか。 さっさと自分を長に指名しないから!そればかりか、あのまりさなんかを長候補として持ち上げるから! だからこんなことになったんだ。 だというに、まるで自分たちが悪いみたいなこの扱い! ふざけやがって! そもそも長ぱちゅりーの策を行った場合、ダメージを受けるのは結局自分たちだけじゃないか。 自分が元凶のくせに、被害を全く受けないなんて、そんなバカげた話があるか! だいたい、長ぱちゅりーは本当に群れのことを思って行動しているのだろうか? 結局のところ単に長の地位を奪われたくないだけではないのか? そのために自分らを群れから抹殺しようとしているのでは? そうだ!そうに違いない! 長ぱちゅりーは始めからそいういう腹積もりだったのだ。 だってそうでも考えなければおかしいのだ! なぜ長ぱちゅりーはれいむの嘘を看破していたのにもかかわらず、そのことを早急に群れのみんなに発表しなかったのだ? 自分と幹部みょんが、あのクソれいむと組まざるを得なかったのは、れいむの嘘が長ぱちゅりーにばれているということを知ったからだ。 だから問題を群れの長の問題にすり替えようという策をとるため、早急に同盟を組む必要があった。 だが、いつまでたっても、長ぱちゅりーは真実を発表しようとしなかった。 なぜだろうか? その理由は一つしかない。 長ぱちゅりーはきっと待っていたのだ。 自分たちがれいむと組むのを。 そして三匹が組んだところで、例の提案を持ちかけ自分たちを社会的に抹消するつもりなのだ! そして最後に残ったまりさは、群れ外へ追放してしまえばいい。 これで、長候補と目されていたすべてのゆっくりは綺麗にいなくなる。 よって自分が死ぬまで長の地位は安泰というわけだ。 なんてことだ。 こいつが!こいつこそがゲスじゃないか! みずからの地位を守るため、何の罪もない自分や幹部みょん、さらにまりささえも抹殺しようとする。 こんなやつを長にしておくわけにはいかない! 「みょん!ちょっと!きいてるの! このままじゃ、あのげすれいむが、むれのはけんをにぎるかもしれないのよ! そんなことになれば、このむれぜんたいが、きけんにさらされるのよ! それがわかってるの!」 「だまるみょん!このげすが!」 ギリッと長ぱちゅりーを睨みつけて言う。 「なっ、ちょっと!なにいうの! げすはそっちじゃないの!げすれいむとてをくんで! あなたしょうきなの?あたまは?」 「ふん!かくしてもむだだみょん!みょんは、ぱちゅりーのかんがえをみやぶったみょん! はじめから、みょんやちぇん、まりさをしまつするつもりだったみょんね!」 「なにわけのわからないこといってるの!そんなわけないじゃない! いいかげんになさいよ!」 「だったらどうして、むれのみんなにしんじつをじぶんのくちでつたえないみょん!」 「えっ……」 その瞬間、いままで詰め寄ってきていた長ぱちゅりーの表情が固まった。 それを見て幹部みょんは確信する。 やはり長ぱちゅりーは、意図的に真実を隠ぺいしていたのだ。 「おもったとおりだみょん! やはりおさはわざと、しんじつをむれのみんなにはつたえないようにしていたんだみょん! そして、みょんとちぇんがれいむとくんで、あともどりできなくなるたいみんぐをみはからっていたんだみょん!」 「わっ、わからないよー!どういうことなのー!」 幹部ちぇんが混乱し、助けを求めるような口調で聞いてくる。 ふん、普段から頭脳派だと威張ってるくせに、肝心なときにこれか。 「かんたんなことだみょん! おさは、はじめからみょんたちをはめるつもりだったんだみょん! じぶんがおさでありつづけるために!」 「まって!まちなさい! それはごかいよ! たしかにぱちぇは、いとてきにしんじつを、むれにみんなにつたえなかったことはみとめるわ! そして、そうきゅうにこのことを、むれのみんなにせつめいしていれば、こんなふくざつなことには、ならなかったかもしれないこともみとめる! でもそれにはふかいわけがあるの! けっしてあなたたちをおとしめようとか、そういういとは、まったくないわ!いませつめいする!」 慌てふためくように長ぱちゅりーが言う。 まったくしらじらしいことこの上ない。 「いいわけなんてききたくないみょん! いや、もうこうなってしまったいじょう、もはやりゆうなど、どうでもいいことだみょん! みょんはこのむれのおさになるみょん!」 「しょうきなの!れいむのことはどうするき!」 「みょん!あんなげす、あとからどうとでもなるみょん! いざとなれば、どんなてをつかってでも、しまつすればいいだけのはなしだみょん!」 「そんな! いくらげすとはいえ、ただしいてじゅんをふまないでのせいっさいは、ゆるされないわ! そんなことをすればむれのちつじょがみだれる! あなた、ぼうくんになるつもりなの! はじをしりなさい!」 「だまれみょん! みらいのおさにむかって、そのくちのききかたはなんだみょん! だいたい、ほんらいなら、たいしたつみじゃないまりさを、むれからついほうしようとしたやつのいうことかみょん!」 「ぐっ……」 幹部みょんのセリフにたじろいだ様子の長ぱちゅりー。 しかしすぐに気持ちを立て直すと、こんどは幹部ちぇんに向き直った。 「ちぇん!あなたはどうなの? みょんといっしょにおさになってむれをきけんにさらすの?それとも、ぱちぇのいうことをきいて、 むれのために、れいむとえんをきるの?どっち?」 「ちぇんは……ちぇんは……」 おろおろと戸惑う幹部ちぇん。 幹部みょんを説得するのは難しいと踏んだ長ぱちゅりーは、まず崩しやすそうな幹部ちぇんを説得することにしたのだ。 確かにれいむの側について長になる場合は二匹がそろってないとだめだが、長ぱちゅりーの側について、れいむの指示を崩す場合は、 二匹のうち一匹だけでも効果はある。 最悪幹部ちぇんだけでも引き込めれば、幹部みょんとれいむの企みは阻止できるのだ。 「ちぇん!おもいだすみょん!いままでのひびを! みょんたちがいくらおさになりたいといっても、おさは、ぜんぜんおさにさせるけはいがなかったみょん! それは、はじめからじぶんがずっとおさをやるつもりで、みょんたちのおさをやらせるきなんてなかったからだみょん! あまつさえ、こんかいのけんをりようして、みょんたちをまっさつしようとした! こんなことされてくやしくないのかみょん! くやしかったら、みょんといっしょにおさになるみょん!」 「みょん!よくききなさい! ちいさいころからいいつづけてきたように、むれにげすがはびこるのはとってもきけんなのよ! れいむはいうまでもなくげす!そしてみょんもげすへとおちたわ! もうあなたしかいない! ぱちぇといっしょにこのむれをただしいほうこうへとみちびくのよ! そうだ!このけんがおわったら、あなたをせいしきにおさへとすいせんしてあげる!」 お互いに自分の側へと引き込むように説得の言葉を投げかける幹部ちぇんと長ぱちゅりー。 幹部ちぇんはしばらく黙っていたが、やがて顔を上げてハッキリとした口調で言った。 「ちぇんは!ちぇんは、みょんといっしょにおさおやるよー! おさもれいむもしんようできないけど、みょんならしんようできるよー! なんだかんだいって、ちっちゃいころからのくされえんなんだねー!」 「そっ、そんな!」 「みょん!さすがちぇんだみょん!」 そうだよ!そうだった。 自分たちはもともと仲だって悪くなかったのだ。 だが、どちらかが長に、という話になってから急激に仲が悪くなっていったのだ。 互いにライバル同士となり、しなくてもよい争いをし続けてきた。 だがそれも終わりだ。 よく考えてみれば、二匹が長になれるのなら嫌う理由は何もないのだ。 そして二匹一緒なら老害ぱちゅりーにも、ゲスれいむにも負けやしない! そうさ!新しい群れは、自分たちが切り開く。 「なんて……おろかなことを……」 放心したように長ぱちゅりーが呟く。 「これでわかったみょん! おさのまけだみょん! おとなしくおさのざをあけわたすみょん! いまじたいすれば、むれのみんなからのいんしょうもわるくないみょん!」 「……そうね」 長ぱちゅりーがポツリと言った。 「みょん?」 その瞬間幹部みょんはおやっと思った。 あの長ぱちゅりーにしてはいやにあっさりすぎる。 いや、それもしかたのないことなのか? なぜなら打つ手などなにもないのだから。 「もうぱちぇにはあなたたちをとめれれないようね。 ……はぁ。 このてだけは。 このてだけはつかいたくなかったけど、しかたがないわ! むれをげすのてにわたすわけにはいかない!」 「なっ、なんなんだみょん!」 長ぱちゅりーは、どこかあきらめたような、達観したような表情だった。 それは何か壮絶に不吉な予感を幹部みょんに感じさせた。 その恐怖は長ぱちゅりー自身からではない、 長ぱちゅりーの背後に漠然と存在している、絶対的な何かから漂っているものだった。 「えいきを!ゆっくりえいきをこのむれのよぶわ!これでぱちぇもあなたたちもおしまいね!」 長ぱちゅりーは静かにそう言ったのであった。 続く ナナシ作
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『くそにんげんに挑んだ結果 前編』 31KB いじめ 自業自得 差別・格差 嫉妬 妬み 追放 番い 群れ 子ゆ 自然界 現代 人間なし うんしー ゆっくりよんでいってね! 放置されて錆び付いた自転車や建物の壁を沿って備え付けられた室外機が路地裏の狭苦しさを印象付ける。 何度も塗り直されゴツゴツと荒い表面を見せるその街路を4匹のゆっくりが後ろを振り向かずただひたすらと駆け抜けていく。 親をれいむ、まりさにして子がそれぞれ同種で1匹づつ、一見すると普通のゆっくりの一家であるが、 その姿は本来ゆっくりが持つべき丸みを帯びたボディーラインとは懸け離れた、酷く歪で痛々しい痕があちこちに刻み付けられていた。 親れいむは全身をまるでクレーターの様に抉った深い窪みを作り不自然に頬から割り箸が突き出ている、 れいむが涎塗れの口を絞って咥えているのは我が子である子れいむの揉み上げ、 その先にぶら下がる咥えられた子れいむは何がおかしいのか嬉しそうにゆぴゃゆぴゃと笑い声を上げて排泄物を緩んだ蛇口みたくボトボトと垂れ流している。 後ろに続く親まりさは全身に酷い火傷を負い体中のあちこちに真っ黒くこびり付いた網目状の焦げを垣間見せ、 上半分を破られ情けなく拉げた帽子を深々と被っている。 窪んだ瞳から止め処なく涙を溢れさせ砂糖水の跡が表情を崩した為に大きな皺を作った頬を浅黒く変色させる。 尖らせた口元にはれいむ同様に娘の子まりさを咥え、焼き付かれた小麦粉の下腹部から昇る香ばしい匂いを感じながら 鈍重な足取りで懸命に前を行くれいむを追っている。 咥えられた子まりさは両目があるべき部分にぽっかりと黒い空洞を作り、 身体が揺れるたびに激痛に苦しみ唇を大きく歪める程に苦痛な表情を浮かべ震えていた。 (どおじで……どおじでれいむだちがごんなめにあわなぎゃいげないの!?……) ふいに脳裏に過ぎった思いがれいむの瞳を濡らす、その思考は完全な悲劇の中にあったがこれらの結果は全て自業自得と言わざるを得ない。 一家は森のゆっくりプレイスから遠路遥々人間を奴隷にするべくこの街にやってきた野生のゆっくりだった。 しかし結果は彼らの身が現す通り散々で、圧倒的な人間の力の前に最愛の娘達を3匹も潰され自身も酷い怪我を負いどうにか逃げ延びてきた有様だ。 敗走兵の如く薄暗い脇道を人間の影に怯えながら逃げるゆっくりの一家は一刻も早くゆっくりプレイスに戻るために走り続けた――。 『くそにんげんに挑んだ結果』 稲作を主産業とし片田舎だったこの街が近代化の歩みを進めたのは、数年前に大手自動車メーカーが大規模な工場を建設した事がきっかけだった。 過疎化の一途を辿っていた街には多くの労働者が集まり、道路は色を塗り替えるが如く整備され、関連企業の施設が次々と建造され、かつての賑わいを取り戻しつつあった。 街の北東部に位置する巨大な樹海も徐々にではあるがその影響を受け始め、 森に住まう野生のゆっくりたちは人の姿を度々目撃するようになり、人間がどういう存在なのか少しづつであるが理解を深めていった。 だが自己解釈と根も葉もない噂話を耳にし、人間は自分たちゆっくりに劣る下等な生物であると間違った知識を得てしまった一部のゆっくりたちが 人間を奴隷にし服従させゆっくりできるご飯と住まいを求め意気揚々と群れを離れていった。 そんな多くの離反者が出て行くことに心を悩ませていた群れの指導者である長ぱちゅりーは 狩りに出掛けていた群れのゆっくりたちが、樹海の入り口で見慣れないゆっくりが休んでいると聞いて重い腰を上げた。 「むきゅー、わかったわ。まずはぱちゅりーがようすをみてくるからみんなはここでまっているのよ」 「ありすもいっしょにいくわ、おさだけじゃなにかあったときにたいへんだわ!」 「だいじょうぶよ、ありすたちもかりからかえってきたばかりでつかれているでしょう?こういうしょりはぱちゅりーにまかせておきなさい」 ありすは心配そうに「でも」と言葉を投げたが、対するぱちゅりーは背を向けた態度で一蹴すると樹海の入り口に向け進む、 西の空を見上げると僅かに赤みを帯び始めている、毎日の日課である集会まで時間も押していたためぱちゅりーは急いで報告を受けた場所へ移動する。 目的の場所に近付くとぱちゅりーはサッと身を木々の陰に隠しながら、報告を受けた場所を凝視した。 どうやら傷だらけの成体2匹と子2匹のゆっくりが荒い呼吸を整えている様だった、ジッと眼を凝らしたぱちゅりーはそのゆっくりたちが つい数日前に人間を奴隷にすると豪語して出て行ったれいむ一家だと気付き、思わず唇を噛んだ。 「むきゅー……あれはれいむとまりさね……やっかいなのがかえってきてしまったわ……」 明らかに怪訝そうな顔をして眉を顰めたぱちゅりーは段差を滑り、れいむ一家の前に姿を現す。 突然目の前に現われたゆっくりに親れいむは一瞬だけびくっと身体を震わせたが、それが群れの長であるぱちゅりーだと気付き安堵して割り箸の刺さった頬を緩ませた。 「お、おさっ!れいむたちかえってきたよ!」 「そのようね」 「ゆ……ゆゆっ?どうしたの?おさのおかおさんがゆっくりしてないよ!」 冷笑を浮かべたぱちゅりーの顔を見てれいむがおずおずと尋ねた、ぱちゅりーはそれを無視して一家を見るとわざとらしく大きく溜め息をついた。 「にんげんさんのまちはどうだった?ゆっくりできた?」 「みればわかるでしょぉおお!?れいむたちはくそじじいにひどいめにあわされたんだよ!!ゆっくりできるわけないよ!!」 その言葉を聞いてぱちゅりーはカッと眼を見開き、ぐいぐいとれいむに近付き不快感を剥き出しにした表情を見せ付ける。 眉間に皺を寄せ唇をくの字に折り曲げたぱちゅりーの顔を間近で見せ付けられたれいむは思わず身体を逸らしてしまう。 「だからぱちゅりーはけいこくしたのよ!にんげんさんのまちにいってもゆっくりできないって!! それなのにれいむたちはにんげんさんをどれいにするのはかんたんだなんていってゆっくりぷれいすをでていったわね そのけっかがこんなみじめなすがただなんて、ばかばかしいにもほどがあるわ!!」 「ばかっ!?おさっ!!ひどいよッ!!れいむたちはけがをしてるんだよ!!やさしくしなくちゃいけないんだよ!!」 「つけあがらないでね!なんでぱちゅりーがれいむたちのおしりをぬぐわないといけないの!?むっきゅんっ!! ばかなれいむはしらないだろうけれど、れいむたちみたいなおろかなおこないをにんげんさんのことばでじごうじとくっていうのよ!」 何故か冷たくあしらい自分たちを罵るぱちゅりーにれいむはその心中が理解できないでいた。 馬鹿だ馬鹿だと何度も言われ顔を赤くするも磨り減ったあんよではぱちゅりーに攻め寄る事も出来ない。 カリカリと青筋を立てたぱちゅりーはその辺に転がっていた枝を乱暴に咥えると突然と両目を失った子まりさの底部を引っ掛け転ばせた。 なされるがままにその球体状の小麦粉の塊はころんと地面にめり込み突っ伏した。 「ゆぎゅっ!!なにずるのぉおお!?まりしゃおこるよっ!!!」 立ち上がった子まりさは2つの空洞に入り込んだ土を落としながら双眸を細めぷくーっと膨れ勢いに任せて体当たりをしてみせる。 しかし視力を失った子まりさはぱちゅりーとは正反対の方向に突っ走り木の側面に顔面から見事に激突した。 「ゆべっぇ!!ゆ”、ゆ”ぅううっ!!ゆびぇええええぇえんっ!!!いじゃぃいいいっ!!!!」 「れいむのおちびちゃんになにするのっ!?れいむおこるよ!!!」 顔を腫れさせて泣き出す子まりさ、反射的にれいむが怒りを露にするがぱちゅりーは構わず叱責と罵倒を続ける。 「おめめをつぶされてしまったんじゃまともにかりもできないわ、どうしようもないやくたたずね」 「どおじでぞんなごどいうのぉおおお!?ふざけないでねっ!!おちびちゃんにゆっくりしないであやまってね!!!」 枝を咥えたままぱちゅりーはもう1匹の子れいむの元へ寄る、 子れいむは重傷を負っているにも関わらず薄気味悪く何が可笑しいのか愉快に笑い声を上げ続けている。 どうやら中枢餡を甚振られた様で思考回路に重大な欠陥が残ってしまい会話すらままならないらしい、 ぱちゅりーは枝の先で何度か突つくと、子れいむはヘラヘラと笑ったままプルッと軽い痙攣を起こしてうんうんとしーしーを盛大に放出した。 その生物の成れの果てとも言うべき無様な姿を見てぱちゅりーは、汚物でも見る様な眼差しを向け子れいむの額に唾を飛ばして嘲笑った。 「なんてけがらわしいのかしら……はきけがするわ……」 「ゆぴょ、ゆぺぇー、ゆぴゃー、ゆぴゃっぴゃっぴゃぁ~」 陰湿と言ってしまえる程のぱちゅりーの無慈悲な言葉がれいむの堪忍袋を破裂させる。 ぷるぷると小刻みに震えながら顔面を大きく膨らませて叫ぼうとした時、ずっと押し黙っていたまりさが声を荒げて遮った。 「おさっ!まりさたちがちゅうこくをきかなかったのはたしかにわるかったのぜ……まりさはおこられてもしかたないのぜ…… でもおちびちゃんたちはまりさについてきただけでつみはないのぜ!だからあやまってほしいのぜ!!」 「…………」 「あやまるのぜ!!おちびちゃんにあやまるのぜ!!」 キリッと吊り上がったまりさの眼がぱちゅりーを見据える。 まりさは険しい剣幕で捻じ伏せようと必死に眉を折るが相対するぱちゅりーも群れを任された長というだけあって微動だにしない。 僅かに走った緊張を打ち砕いたのは全く感情が読み取れない冷淡な口調で呟いたぱちゅりーの言葉だった。 「もうすぐしゅうかいがはじまるわ、まりさたちもきなさい」 まりさの要求を無視してぱちゅりーは振り向き様にそう言い残すと元来た道を引き返して行った。 子ゆっくりたちへの侮蔑が撤回させる事がなく、背を向けたぱちゅりーにまりさは必死に名を呼んで振り向かせようとするも効果はなく、 どんどんと遠ざかってぱちゅりーの姿はあっと言う間に見えなくなってしまった。 「ゆうぅっ……ひどいのぜ……おちびちゃんはわるくないのぜ……おちびちゃんをぶじょくするなんてゆるせないのぜっ!!」 「ゆーっ!!ぱちゅりーがあんなことをいうなんてれいむはしんじられないよ!まりさ、ゆっくりしないでぱちゅりーをおいかけるよ!」 「ゆぅ……そうするしかないのぜ……!!ばあいによってはせいっさいっもじさないのぜ!!!」 蹲っていた親れいむと親まりさははそれぞれ子供達を咥えて再び歩き出そうとするが、 そこで猛烈な激痛が下部から電流を走らせるが如く伝わってきて思わずまりさが叫び声をあげた。 「ゆぎぃいいいっ!!まりざのあ、あんよざんがぁっいじゃいぃいいっ!!」 「ま、まりさどうしたの!?いたいいたいしてるの!?れいむがぺーろぺーろしてあげるよ!!」 パートナーの悲鳴に咥えていた我が子を落としてれいむが近寄り、痛みを感じると訴えるまりさのあんよをそのピコピコで僅かに持ち上げて覗き込んだ。 そこには焦げて黒ずんだ小麦粉の肌に所々線が走り罅割れているのがはっきりと分かった。 傷の具合を見てれいむは絶句した、医療の知識がないれいむから見てもまりさのあんよは致命的な損傷を受けているのが一目で判断できたからで、 中途半端に焼かれたあんよでコンクリートの路面を必死に走って逃げてきた事がこの結果を生み出し、 単に舌を舐め合わせるだけでは修復するのは不可能だと知ってしまった事がれいむから言葉を失わせる。 困惑したまま動かないれいむに言い知れぬ不安を察知したのか、激しい痛みから涙腺が刺激されゆんゆんと涙を流しながらもまりさがれいむに問い掛ける。 「れ、れいぶっ……ま、まりざの、まりざのあんよざん、どうなっでるのぜっ!?ね、ねぇ、れいぶっ!?」 「ゆ……ゆぅ……」 「いだいのにがんがくがないのぜっ!?ま、まりざもううごけないのぜっ!?れ、れいぶぅううっ?いやなのぜっ!!ぞんなのいやなのぜっ!! まりざのしゅんっそくっなあんよざんっ、おでがいだよぉおおっ!!うごぐのぜっ!!ゆっぐりじないでねっ!! ゆぅうううっ!!!ゆぅうううううっう!!!どおじでぇえっ……どおじでぇえええっ……!?」 「だ、だいじょうぶだよ!!おちついてね!!あとでれいむがたくっさんっぺーろぺーろすればきっとなおるよ! いまはまりさをうしろからおしていくから、ゆっくりがまんしてね!」 とにかくここに居てもどうにもならないと、れいむは転がった子供達を回収し泣き喚くまりさの口に押し当て咥えさせると、まりさの背中に回って慎重に押し始めた。 強く押し過ぎると転がってしまう為、湿地を利用して滑らす様に押していくが、 スライドさせる事でまりさのあんよに再び痛みが走り子供達を咥えたまま、まりさは表情を歪ませ続けた。 そしてどうにかして樹海のゆっくりプレイスに到着する頃には、広場に群れのゆっくりたちが集まって長であるぱちゅりーの話に耳を傾けている最中だった。 「むきゅー、やっときたわね」 相談会も終盤に差し当った辺りでようやく姿を見せたれいむ一家にぱちゅりーが気付くと、話の腰を折って集った群れのゆっくりたちに一家を注目させた。 「みんな、あっちのほうをみてね。さっきにんげんさんのまちからかえってきたれいむたちよ」 一部の者は既に気付いて視線をれいむ一家に向けていたが、ぱちゅりーが大々的に視線を移すように促すと群れの一同は一斉にれいむたちに向きを直した。 その痛々しい姿に眉を顰める者や、みすぼらしい貧相な姿を嘲笑する者や、同情の眼差しを向ける者など様々だ。 そんな中、注目を浴びた当事者であるれいむの餡子脳が突然と強かな発想を閃かせた。 それはこの場が『自分達がいかに可哀想で周りが協力して助けてあげないといけない存在なのか』群れのゆっくりたちに訴えるチャンスである事に気付いたのだ。 大きく息を吸って声を張り上げ目尻に涙を浮かばせ有りっ丈の悲劇を演じて同情を買おうとした時、それよりも早くぱちゅりーの声が辺りを一喝する。 「このばかどもをわらってやりなさい、ぱちゅりーのちゅうこくをむししたあげく、にんげんさんにぼっこぼこにされてかえってきたのよ!」 「ゆっ!?」 れいむはある筈のない耳を疑った、ぱちゅりーはあろう事か群れの全員が集まったこの場でれいむたちを咎め始めたのだ。 あまりにも理不尽なこの対応に、れいむはわなわなと震えて歯茎を晒し怒りを露にするも、 切り株の上に陣取って高みからほくそ笑んだぱちゅりーはそれを無視して尚も罵倒を続けた。 「あのまりさはまるであかんぼうのようになきわめいてにんげんさんにあたまをさげたなさけないゆっくりよ そのよこのおちびちゃんはきょうふのあまりうんうんやしーしーをもらしすぎてあたまがくるってしまったわ!」 それが事実だったとは言え誇張され笑い話の種にされた事に、 居ても立っても居られなくなったれいむは吸い込んだ空気を頬に溜め全開に膨らませてぷくーっをしてみせたが、 周りのゆっくりがヒソヒソと含みのある笑みを浮かべ自分達に厭らしい視線を向けている事に気付いて直ぐに萎縮してしまう。 よく見れば、痛みに眼を逸らしていたゆっくりや、同情の眼差しを送っていたゆっくりが一変して態度を変え、 馬鹿にした様にニタニタと微笑んでれいむ一家の奇怪な姿を喜々として見つめている。 「ゆぷぷっ、にんげんなんかにあたまをさげるなんてひんっじゃくっなゆっくりなのぜ!」 「おさのはなしをきいていればこんなことにはならなかったのに、れいむはいなかものねぇ」 「あのおちびちゃんはあたまがゆっくりできなくなっちゃったんだね、わかるよー」 先導したぱちゅりーが自ら率先してれいむ一家を無能と毒づいた事で、 見劣った他者を蔑視しいじめの対象とするゆっくりたちにはれいむ一家が恰好の的に成り得てしまった。 周囲から注がれる冷ややかな視線の中、れいむは歯軋りを立てながら険しい表情を浮かべてぱちゅりーを睨み付ける。 群れの長であり、他ゆんとの均等を図りバランスを調整する役割があるぱちゅりーがこの様な暴挙に出たのにはある訳があった。 ここ数年で人間との接点を持つようになったゆっくりたちは人間を服従させるという無謀な野心を抱き群れを離れる事が多くなった。 そうしたゆっくりの数をこの群れに残っているゆっくりよりもぱちゅりーは多く見てきたが、その彼らの大半は帰ってこなかった。 だが稀にこのれいむ一家の様に生きているのが不思議なくらいの重傷を負って辛うじて帰ってくる者がいた。 ぱちゅりーがこのゆっくりプレイスの長に就任してから間もなくの時、どうにか戻ってきた痛々しい姿の彼らを手厚く保護し、 手の空いた者で彼らを看病し食と住の保証をしたが、その結果周りのゆっくりたちの負担が増し群れ全体に多大な影響を及ぼす破目になった。 それが冬が間近に迫った秋の出来事だったため、群れで管理している保存用食料の貯蔵量が減少してしまい、 越冬前に分配するはずの物が行き渡らず、春を迎えられたゆっくりが例年の6割近くに落ち込んでしまったのだ。 皮肉にも保証を約束されたゆっくりたちは無事に春を向かえ、自分たちが特別な存在であると勘違いしゲス化してしまった。 過去2度もそのような経緯があり、今回の一件も丁度秋に差し掛かった越冬の準備期間に入り始めた時期という事もあり 一部の愚か者の所為で群れが崩壊する可能性がある事を知っているぱちゅりーは、 教訓を生かし心を鬼にし、他のゆっくりが彼らを見て学習してくれることを信じれいむ一家を突き放したのだ。 「きょうのしゅうかいはいじょうよ!かいっさんっしてね!」 群れのゆっくりたちの様子を見て思惑通りに事が進んだのを確認したぱちゅりーは、 切り株から降り帰路に就こうとした所をれいむが立ち塞がりそれを阻まれた。 「どおじであんなこというの!?れいむたちはかわいそうなんだよ!!みんなでまもらなくちゃいけないんだよ!!」 既に保護を受ける立場だと主張するその甘ったれた思考に、やはりれいむたちは頭が足りていないゆっくりだと認識を改め、 ぱちゅりーはくぐもった笑いを漏らしながられいむの頬に突き刺さった割り箸を咥えて掴んだ。 「むっきゅん、いやならゆっくりぷれいすからでていくことね」 「ゆびぃぃいっ!!!いじゃぁぃいいっ!!!や、やべでよぉおおおっ!!!れいぶにざざっだわりばしさんをざわらないでよぉおおお!!」 ぐいぐいと上下に振り、僅かにれいむの餡子が漏れそうになったところでぱちゅりーは割り箸を離してやると、激痛から涙をポロポロと流してれいむが震えた。 ふんっと息巻いてれいむを一蹴すると、ぱちゅりーはそそくさと自分の巣に戻っていった。 この場に残されたのは晒し者にされ蔑まれた傷だらけのれいむ一家だけだった。 ――――――――――――――――― 翌日かられいむ一家の負け犬としての新しい生活が始まった。 これまで食料の確保を担当していたまりさはあんよの機能を失ってしまった為に外に出る事が叶わず、 結果として移動に難がないという理由だけでれいむが狩りを担当する事になった。 しかしれいむ種と言えば他のゆっくりと比べ劣った体躯と知慮の浅はかさから育児など比較的安易な家庭内の役割を担う場合が大半であり、 このれいむも同様にそれらの事柄を得意とし、今までの営みを過ごして来た言わば専業主婦であったため、 培われた知識と技術が産み出す経験の一切を持たない彼女が狩りを本職とし転向するのは容易な事ではなかった。 そんなれいむに更なる試練を伸しかけたのは、自身の頬から忌々しくも突き出た割り箸だった。 草木の生い茂った所へ赴けば無造作に伸びた茎が執拗に頬の割り箸の側面を突き、 れいむは餡子、神経とも言える部分を無作為に引っ掻けてしまい、思うように進行出来ず、 それ故に活動範囲は狭まり、れいむは比較的開けた場所を選択して狩りを行わなければならなかった。 「ゆふーっ、これだけあればおちびちゃんはおおよろこびなのぜ!」 木の実や虫の死骸を探して視線を落としていたれいむはどこからか聞こえてきたゆっくりの声に反応してそちらを見ると、 裏返した黒いお帽子に野花や茸を大量に抱き込んだまりさがそこに見えた。 パンパンに膨らんだお帽子の鍔を咥え引き摺ったまりさは子供の顔を想像しているらしく、綻んだ笑顔を作ってゆっくりプレイスに戻っていく。 れいむは自分の、まりさから貸してもらったお帽子に視線をずらした。 上半分を服従させようと挑んだ人間に破られてしまったため、植物の蔓を駆使して穴を塞いだ急造品のそれは随分と貧相な佇まいをしている。 無論中身は僅かに拾えた小さな木の実が数粒入っているだけで、これでは今日の夕食どころかおちびちゃん一ゆん分の食事にも満たない有様だ。 ゆぅ、と溜め息をついて不景気な面をしたままれいむは狩りを続けていると唐突に不愉快なせせら笑いが響いてきた。 「ゆぷぷっ、みるのぜ、わりばしれいむなのぜ!」 「ほんとうだわ、いなかもののれいむよ。だれのきょかをとってここでかりをしているのかしらね?」 見れば2匹のゆっくりがれいむの前に立っていた。 にんまりと厭らしく肉を歪めて嘲笑った姿はあからさまにれいむを見下している。 このゆっくりたちとれいむは面識があった、おうちが近所だった為かつては一緒に座談会を開き他愛もない会話で笑いあった仲なのだが、 今ではその視線に込められたものがかつてのものと異なり、侮蔑や睥睨の一色を残すのみでれいむはただ辟易とするしかなかった。 ゆっくりとは認識が山の天候の様にコロコロと移り変わるもので、昨日まで友人だったものにある種の弱みを見つけ侮辱の対象へとすり替えるのは日常茶飯事である。 性質が悪い事は、それらに面白みや優越と言った自身の感情を満たす要素が加わればそれを覆すのが酷く難しくなる点だ。 「れいむぅ~、ここはまりささまのかりばなのぜぇ!」 「し、しらないよ!もりさんはみんなのものなんだよ!まりさだけのものじゃないよ!!」 「まぁ、なんてずうずうしいのかしら!まりさ、このせけんしらずのれいむにるーるをおしえてあげるといいわ!」 「いいかんがえなのぜぇ、まりささまがじきじきにおしえてやるのぜ!」 言い掛かりで因縁を付けていたまりさは頷くと、素早く跳ねて転がるようにれいむの顔面に頭をぶつけた。 成されるがままに大きく横転したれいむは顔面から地面に突っ伏して土煙を巻き上げた。 「ゆびぃいいっ!!!な、なにずるのっ!?たいあだりざんはゆっぐりできないよ!!!」 「みるのぜ、すこししかとれてないのぜ!」 「ほんとうね!れいむはのろまなぐずねぇ!」 起き上がったれいむが見たものは、れいむが狩りに使っていたまりさのお帽子の底に舌を伸ばして木の実を口に移そうとしているありすの姿だった。 「やめでよぉおお!!ぞれはれいむのたいっせつっなごはんざんなんだよぉおおお!!」 「これはばっきんっなのぜ!!まりささまにきょかをとらなかったばつなのぜ!!」 「むーしゃむーしゃ、それなりー!まったく、こんなひんそうなきのみなんておやつさんにもならないわ!」 にやりと微笑んだありすが、空になった菓子の袋を乱暴に捨てるようにお帽子を放り投げた。 れいむは泣きながらそれを回収し、まりさたちを睨み付けようと振り返るが興味を失くした2匹は既にゆっくりプレイスへの帰路を目指して背を向けていた。 「ゆぅうううっ……!ごはんざんがっ……!おちびじゃんのっ、まりざのっ……れいぶのごはんざんっ……!!」 結局仕返しや復讐をしようにも力の差からそれは叶わず、泣き寝入りするしかないと分かってしまったれいむは 仕方なく空のお帽子を被って収穫も無しにおうちに引き返した。 おちびちゃんやまりさが悲しい顔をするだろうと、憂鬱な気持ちを内に秘めながら帰宅すると そこでれいむはとんでもないものを目の当たりにしてしまった。 「ゆっひぇんっ!!きょうからこのまりさはまりちゃさまのどりぇいなのじぇ!!どりぇいはまりちゃさまのいうことをきくのじぇ!!」 「おめめがないまりしゃはれいみゅのさんどばっくしゃんになっちぇね!ゆっきゅりたいあたりしゅるよ!!」 「こいつうんうんしゃんたべちぇるぅううっ!ゆぷぷーっ!きっちゃないよー!!」 れいむのおうちがある木の根の前に広がった光景、それは――。 あんよが焼け焦げ身動きが取れないまりさのお下げを大勢の子ゆっくりたちが咥えて引き摺り、 転ばせたまりさの背中に子まりさが乗り上げボスンボスンと音を立てて憎たらしく跳ね上がっている様と、 その横では視力を失った子まりさを数匹の子ゆっくりが囲み、順番に体当たりをして遊んでおり、 更には中枢餡を傷付けられ足りないゆっくりになってしまった子れいむにうんうんを食べさせ笑っている者までいた。 愛する家族が酷い目に合わされていると知って、れいむは意識するよりも早く声を張り上げた。 「こらぁあ”あ”あ”あ”ああっ!!!!れいぶのまりざをっ!!おちびぢゃんをいじめるなぁあ”あ”あ”あ”あ!!!!!」 「「「「ゆっ!!」」」」 れいむの存在に気付いた子ゆっくりたちは顔を上げると一目散に逃げ出した。 「わりばしれいむがかえっちぇきたのじぇ!みんな、ゆっきゅりしないじぇにげるのじぇ!!」 「「「ゆっきゅりりかいしちゃよ!!」」」 ケラケラと笑い声を上げて三方に別れ逃げ出す子ゆっくりたち、れいむが1匹でも捕まえてやろうと躍起になるが、 始めての狩りと先ほど受けた身体の傷が思った以上に疲労を蓄積させていたようで、上手く動けず結局全員取り逃がしてしまった。 地団駄を踏んで悔しさを噛み締めていると、れいむはすすり泣くまりさの声を耳にして慌てて家族の元に近寄った。 「ま、まりさっ?だいじょうぶ!?なにかやられたの!?もうくそがきどもはいないよ!あんっしんっしてね!!」 「ゆ”ぅう”う”う”うっ!!!ゆ”ぅう”う”う”う”ううっ!!!!ぐやじいっ……!!ぐ、ぐやじいのぜっ……!!!」 一切の抵抗が出来ず子供達の玩具にされた事実はまりさの自尊心はずたずたに引き裂く結果になった。 ぽろぽろと涙を流しては、あまりの悔しさに嗚咽を漏らし、失った自身の存在価値にぶつけようのない怒りを乗せて唇を尖らせる。 れいむには掛けるべき言葉が見つからなかった、業腹な仕打ちを受けて夫や男役としての価値に傷がついたのをどう慰めればいいのか分からなかったからだ。 俯いていたれいむは隣で横たわった子まりさの呻き声を聞いてハッとなった、 急いで振り向くとそこには全身を赤く腫らせた子まりさが荒い息をして蹲っていた。 「ゆぅ……っ!い、いだいのじぇ……ま、まりしゃがどおぢで、ご、ごんなめに、あわなぐちゃいげないのじぇ……ゆぅっ……ううっ……」 「おちびちゃんっ、おかーさんがぺーろぺーろしてあげるからね!おちびちゃんのいたいいたいさんはゆっくりしないでとんでいってね!!」 大勢で囲んで痛めつける、俗に言う『袋』にされた子まりさの痣は思わず眼を逸らしたくなるほど壮絶だった。 視力が無く防衛の手段も逃げの一手にも出られず翻弄され玩ばれた事実に、 れいむは悲嘆に暮れながらも涙を落とさないように堪えながら懸命に舌をなぞらせた。 一通り応急処置を終えたところで、れいむはくちゃくちゃと妙な音が聴こえてくるのに気付いてそちらに視線を送った。 そこには、自身で捻り出したうんうんを実に満足そうに平らげている子れいむの姿があった。 近くに転がっている枝から察するに先ほどの子供達が子れいむに刺激を与えて、排出したうんうんを強引に食べさせた様で、 正常な思考が出来ない子れいむは、ゆぴゃぁと嬉しそうに頬を動かしてニッコリと微笑んでいる。 あまりにも哀れな愛娘の姿を見てれいむは溢れんばかりの涙が頬を濡らし、呟く。 「おちびじゃんっ……!やべでねっ……ぞんなっ、ぞんな、なざげないごどじないでねっ!おかーざんっ、か、かなじくなるよ……!」 「むーぴゃむーぴゃ、ひゃひゃゆぴゃ~!ゆっぺぇ~!!」 れいむの静止の声に反応することなく、子れいむは排泄物をただひたすらと腹に収めるのみ、 どうしてれいむたちがこんな仕打ちを受けないといけないのかと、世間の風当たりの強さに家族ともども涙する他なかった。 ――――――――――――――――― 秋も半ばの冬の気配が徐々に垣間見え始めた頃、樹海のゆっくりプレイスに1匹のゆっくりまりさが流れ着いた。 まりさは住んでいたゆっくりプレイスが一斉駆除によって滅ぼされ命からがら逃げてきたゆっくりで、 身辺の整理がつくまで暫く群れの一員として仲間に加えて欲しいと願い出た。 群れの長であるぱちゅりーはれいむ一家への厳格な対応という前例がある様に、 比較的古い体質の思考に囚われている堅物のゆっくりである為、突然の新参者に厳しく当たっていたのだが、 まりさは狩りが上手く、群れの誰よりも働き、子供たちに慕われる、心優しくたくましいゆっくりで、ぱちゅりーは直ぐに彼を信頼に足るゆっくりだと認識を改めた。 そんな輪の中心に居る流れ者まりさに嫉妬心を剥き出しにして見ていたのはあんよを焼かれたまりさだった、 番であるれいむの懸命なぺーろぺーろのお陰で、子ゆっくりがそろーりそろーりをする程度の速度で 歩く様になれるまで傷を癒したまりさは、狩りが下手なれいむの負担を軽減できればいいとおうちの近くでご飯になりそうな物を探していたその時、 群れの皆に慕われるあのまりさを遠巻きに目撃してしまった。 狩り上手だと称えられた、かつての自分がそこに居た場所だけあって余計に心苦しい思いを隠し切れなかった。 そんなまりさの心情など露知らず、想像以上にリーダーシップを発揮する流れ者まりさの資質に気付いたぱちゅりーは、 次期長候補として流れ者まりさに群れを引っ張ってもらおうと画策していた。 ぱちゅりーは老齢で今回の越冬が長いゆん生の最後になると自覚していたため、一刻も早く長を決めなければならなかった。 ようやくその器を持つゆっくりと出会えた事はぱちゅりーを慌てさせた、とにかくこの土地に居座って貰う為に おうちを用意してこの群れ一番の美ゆっくりであるありすを流れ者まりさの嫁にさせようと考えていた。 しかし越冬の時期が刻一刻と迫っている今そのおうちを作っている余裕はない、そこでぱちゅりーはある妙案を思い浮かべた。 「れいむーっ!!でてらっしゃい!!おはなしがあるわ!!」 明け方のまだ日が昇る前の暗がりの中、突然と響いたぱちゅりーの声に重い目蓋をピコピコで擦りながられいむはおうちから顔を覗かせた。 見れば長であるぱちゅりーとその側近のみょん、更には最近群れに加わったばかりの流れ者まりさが顔を揃えて立っていた。 「ゆぅ……こんなゆっくりできないじかんになんのようなの?……」 「むっきゅん、おはなしがあるわ!まりさもよんできてちょうだい」 「ゆー?……」 あの一件以来れいむはぱちゅりーを憎らしくも思うものの高圧的な態度には逆らえず、関わり合いにならないよう微妙な距離を保っていた、 無論そんなぱちゅりーに反抗すればもっと五月蝿くなるのが分かっていたため、 仕方なく言われるがままにおうちの中に引き返し、寝息を立てているまりさをそっと起こし2匹で外に出た。 眠そうにしていたまりさは流れ者まりさが居る事に気付いて表情を曇らせる。 「きたわねっ、むっほんっ!けつろんからいうわ、れいむたちはむれのぎむであるきょうどうしょくりょうこにごはんさんをのうひんしていないわね? だからおうちをとりあげるわ!ゆっくりしないででていってちょうだい」 実に端的に、そっけなくぱちゅりーはそう言い放った。 れいむとまりさがその言葉の意味を理解するのに3分もの時間を有した、硬直していた2匹がお互いに顔を合わせて小首を傾げた後、 ようやく事の重大さに勘付いて大きく顔を歪めてぱちゅりーに食って掛かった。 「どおじでぞんなごどいうのぉおおおっ!!??おうぢをどりあげるなんでゆっぐりでぎないごどいわないでねっ!!!」 「そうなのぜっ!!いくらなんでもひどすぎるのぜ!!おさっ!!どういうことなのぜ!!」 「むっきゅん、りゆうはいったわ!むれでおこなうべきぎむをはたせないゆっくりはでていってもらうことになったのよ!!」 この横暴が過ぎるぱちゅりーの態度に、はいそうですかと納得する訳にはいかないまりさは詰め寄って事情を問い質そうとするが、 側近のみょんに取り押さえられてぱちゅりーには近付く事はおろか、反論するための発言さえ封じ込められてしまった。 随分と独裁的なやり口であるのだが、ぱちゅりーが言う通りれいむ一家は群れで管理運営している共同食料庫に一切の保存食を提供していないのは事実だった。 狩りの担い手がれいむに変わったことがその一因で、今日一日を凌ぐのがやっとの 余剰分を納める余裕などない現状を事情としてもぱちゅりーの前では言い訳にすらならない。 しかし負い目がある点を踏まえたとしておうちの取り上げに繋がるのは聊か極論が過ぎるのだが、厄介払いを含めて、 あわよくば流れ者まりさのおうちにしようという算段のぱちゅりーには是が非でもれいむたちを追い出してしまいたかった。 僅かな抵抗を見せる2匹を無視してぱちゅりーは早速おうちを接収しようと入り口に向かうが、 突然と張り上がった声に背中を叩かれぱちゅりーは思わず歩みを止めた。 振り向いたぱちゅりーが視線を送れば、やや困惑した表情を浮かべて流れ者まりさが直立していた。 「ぱちゅりー……いくらなんでもかわいそうなんだぜ……みたところひどいけがをしたゆっくりだよ、 みんなでちからをあわせなくちゃよわいゆっくりもいきのびられないんだぜ!」 あまりに乱暴なやり口に対する反骨心とれいむ一家に対する同情を織り交ぜた当惑の顔をしてみせた流れ者まりさは、そう言ってぱちゅりーを窘めた。 水を挿したその発言にぱちゅりーは自分でも流石に度が過ぎたのではないかと、冷えつつある感情に押されバツが悪そうに眉間に皺を寄せる。 流れ者まりさからしてみれば本心の善意に間違いはないのだが、その善意を屈折した形で受け取ってしまったのは他ならぬまりさだった。 「いいのぜ……でていくのぜ!!」 「「「「ゆっ!?」」」」 その場に居合わせた、れいむを含む全員のゆっくりが思わず驚いて眼を見開く。 視線の先には酷く鋭い目付きをしたまりさが険しい剣幕で周囲を、流れ者まりさを睨み付けていた。 「れいむ、おちびちゃんをおこすのぜ……にもつをまとめてこんなにゆっくりできないぷれいすとはえいっえんっにおわかれするのぜ!」 「な、なにいってるのぉおお!?もうすぐえっとうがはじまるんだよぉおお!!おうぢさんがないとゆっくりできないよぉおお!!」 「うるさいのぜっ!!いいからまりさのいうとおりにするのぜっ!!」 れいむの静止を振り払ってまりさは重い足取りで一旦おうちに戻ると、寝ぼけ眼の子ゆっくりを起こして再び皆の前に姿を現した。 番の行動に理解を示せないれいむはわんわんと泣きながらまりさを止めようとするが、まりさの決意は岩よりも固くそれは叶わない。 「せわになったのぜ……!」 それだけ言い残して出立しようと子ゆっくりを咥え掛けたまりさに流れ者まりさが慌てて割り込んだ。 「ま、まつんだぜ!おちつくんだぜ!そんなきずだらけのからだじゃむりなんだぜ!!」 「これいじょうまりさにかかわるんじゃないのぜ!!れいむっ!!いくのぜ!!」 聞く耳を持たないまりさは、サッと子供達を咥えるとそそくさと樹海のゆっくりプレイスを出るべく歩き始めた。 おろおろと泣き続けてまりさの遠ざかる背中を見ていたれいむも一度だけぱちゅりーたちを一瞥し後ろ髪を引かれる思いのまま、まりさの後を追った。 「まっでよぉおお!!れいむをおいでかないでねっ!!!」 残されたぱちゅりーたちは唖然としたまま一家を見送るしかなかった。 まりさは押し黙ったまま前だけを見つめて進んでいた。 だがまりさのあんよは子ゆっくりが這いずる程度の速度でしか移動できない為、 直ぐにれいむが前に立ち塞がっては戻るように説得するが、それされも押し退けてまりさは歩みを進めた。 暫くしてゆっくりプレイスが見えなくなる程の距離を歩いて突然とまりさが立ち止り咥えた子供達をそっと降ろした。 無言で追従していたれいむが恐る恐るまりさの顔を覗くと、砂糖水の涙が頬を伝っているのが分かった。 「ま、まりさ……ないてるの?」 「まりざはっ……!まりざは……むれでいちばんのかりめいじんだっだのぜ……!だれからもそんけいざれでだのぜっ……! それがっ……それが、あんなしんざんもののまりざにどうじょうざれるなんで……!ぜったいにいやなのぜっ!!!」 まりさの中で僅かに残ったプライドが流れ者まりさの憐れみの元で生きる事を許し得なかった。 その心情を表した言葉を聞いて、れいむはようやく納得した。 自尊心を犠牲にしてでも後ろ指を指されても芋虫の様に這い蹲ってでも、 生きる為には群れに頼るしかない事実を狩りを行うようになってからしみじみと感じ取っていたれいむではあったが、 一方でまりさが日を追うごとに自信をなくし活力を失ってい姿にも気付いていた。 こうしてまりさが行動を起こしたのはある意味で切っ掛けになったのかもしれないと、 先々の不安は拭いきれないものの、れいむは心を決め大きく頷いた。 「ゆぅ、そうだね。まりさがそこまでいうなられいむはもうなにもいわないよ!あたらしいゆっくりぷれいすをいっしょにさがそうね!」 「ゆぅううっ……!れいむぅううっ……あ、ありがとうなのぜ……!まりざはれいむをおよめざんにできでじあわぜなのぜっ……!」 泣いていたまりさの目尻をれいむはぺろりと舌でなぞって掬うと、2匹は顔を合わせて笑い合った。 近くで様子を伺っていた両目の無い子まりさも、両親たちが放っていた緊張が解れたのを知って同じ様にニッコリと微笑んで頬を緩ませた。 「ゆーん、おちょーしゃんたちなかなおりしちゃのじぇ?ずっとぴーりぴーりしちぇちぇまりしゃゆっきゅりできなかったのじぇ!!」 「ゆふふっ、おちびちゃんごめんね!これからいっしょにいっぱいゆっくりできるゆっくりぷれいすをめざしてたびだつよ!」 「そうなのぜっ!まりさたちにはきぼうのみらいさんがまってるのぜ!!」 そうしてまだ見ぬ桃源郷を目指しれいむたちが向かおうとする道の先から、 僅かに昇り始めた太陽の光が、まるで一家を祝福するかのように射し込んでいた――。 ※後編に続きます